トヨタ・アクアに「GR SPORT」?見た目だけの「なんちゃって」ではなく本格派だ!

トヨタ・アクア GR SPORT 車両本体価格:259万5000円
TOYOTA GAZOO Racingは11月29日、2代目アクアをベースにしたアクア GR SPORTを発売した。GR SPORTは、モータースポーツを起点とした「もっといいクルマづくり」を通じて鍛え上げたスポーツカーシリーズ「GR」の世界観を、より多くのユーザーに提供することを目指したモデルだ。果たして、アクアのGR SPORTってどうなのか?
TEXT & PHOTO:世良耕太(SERA Kota)

そのカタチには意味がある!

トレッド:F1470mm/R1465mm 最小回転半径:5.3m
全長×全幅×全高:4095mm×1695mm×1485mm ホイールベース:2600mm 車重:1150kg

今回のアクア GR SPORTは、アクアの乗り心地の良さと、GRならではの走り味やスポーティなデザインの両立を目指したという。開発を担当した山口宰史のコメントを参照しながら、アクア GR SPORTの特徴を紹介していこう。

まずはエクステリアから。アクア GR SPORTの全長は4095mmで、ベース車より45mm長い。この45mmのうち、20mmは専用フロントバンパーの採用によるもの。GRヤリスやGRカローラとの結びつきを感じさせる迫力あるデザインが特徴だ。

フロントバンパーのコーナー部には傾斜がついている。

フロントバンパーのコーナー部には傾斜がついている。この部分、自動車レースのSUPER GT(GT500クラス)に参戦しているGRスープラの処理に似ている。GRスープラのフロントバンパーコーナー部はフリックボックスと呼ばれ、ダウンフォースを発生する重要な部位だ。ここにはカナードと呼ぶ翼状の空力デバイスが装着されているが、24度の傾斜を持つアクアGR SPORTのフロントバンパーコーナー部はこのカナードをイメージしている。ただイメージしただけではなく、140km/h走行時に8.5kgのダウンフォースを発生する(見方を変えればフロントの揚力=車体を浮き上がらせる力を減らす)、れっきとした空力デバイスである。

「ベース車はきれいに後ろに流れるような形状にしていますが、アクア GR SPORTはここで空気を溜め、揚力を減らします。(カナードの)出っ張りをどこに持ってくるかで見え方が全然違う。変に飛び出しているように見えるとカッコ悪いので、どの角度から見てもカッコ良く見えるように吟味しました」(山口氏)

GRの「G」をモチーフにした新デザインのメッシュ

フロントバンパーの六角形メッシュは、GRの「G」をモチーフにした新デザインを採用した。Gモチーフの三角部分が反射することにより、立体感を演出する仕掛けだ。このGモチーフは、リヤのバンパーガーニッシュも施されている。リヤの25mm延長分は、このガーニッシュを含むリヤバンパー・ロワーカバーの形状による。

5ナンバー枠に収まる1695mmの全幅に変わりはない。踏ん張り感が増したように感じられるのは、専用フロントバンパーや専用ロッカーモールディングに加え、ワイドタイヤの装着による。ベース車の一部グレードには195/55R16サイズ(標準は185/65R15)のタイヤ&アルミホイールが設定されているが、アクアGR SPORTは205/45R17サイズのタイヤ(ブリヂストン・ポテンザRE050A)と専用アルミホイールを装着する。

205/45R17サイズのタイヤ(ブリヂストン・ポテンザRE050A)と専用アルミホイールを装着。赤いキャリパーもGR SPORTらしい。
ホイールが外に張り出しているのがわかる。

「インセットは同じでリム幅が(16インチの)6Jから7Jになっているので、0.5J(約12mm)外側に出ている形になります。とくにフロントは結構攻めています」

見た目にも、外に張り出しているのがよくわかる。専用ホイールから覗くブレーキキャリパーをレッドにペイントしただけでなく、フロントのキャリパーに「GR」のロゴを入れた。ひと手間加えただけの効果はり、目を惹くポイントだ。

インテリアは天井をブラックで仕上げ、加飾部品はガンメタとした。GRのロゴを配したスポーティシートには、エアヌバックと合成皮革を組み合わせている。アルミペダルはMT車のGRヤリスを開発する際、ヒール&トゥがしやすいようアクセルペダルの幅を5mm広くした。アクア GR SPORTも同じ幅広のアルミペダルを採用している。

室内長×幅×高:1830mm×1425mm×1190mm

見えないところもしっかり強化

ボディ剛性アップのために、フロア下にブレーズを2本追加している。

ボディ剛性を高めるため、フロア下にブレースを2本追加した。リヤにはバンパーリインフォースを追加しているが、これにより「コーナリングスピードを上げる効果がある」と山口氏は説明する。

「ものすごくリヤがしっかりしました。初代のアクア GR SPORTはスポット打点の増し打ちをしたのですが、2代目アクアはすでに目一杯詰めて打っているので、スポット打点は増やしていないし、構造用接着材も追加していません。ばね(コイルスプリング)、アブ(ショックアブソーバー=ダンパー)は締め上げましたが、GRの裾野を拡げるため、あまり尖らせてはいません。そのため、タイヤのゴツゴツ感は若干感じられますが、すっきりしたところが出ていると社内では評価しています」

リヤサスペンションはトーションビームアクスル方式。

応答性向上のため、フロントのロワーアームブッシュはGRヤリスで使っているものをそのまま使用。「17インチタイヤを付けるとブッシュが負けてしまうため」でもある。また、フロントはたわんだ際の特性と長さを再チューニングしたバウンドストッパー(ウレタン製)を採用している。

電動パワーステアリング(EPS)の制御はアクア GR SPORT専用にチューニングした。ドライブモードでノーマルとエコを選択した際は、ノーマルの制御マップを使用。パワー+を選択した際は手応えが増す専用のマップに切り替わる。

「(ドライブモードで)パワー+を選択すると、加速の感度が良くなり、減速時は回生ブレーキが強くなります。加えて、EPSのマップが切り替わる。高速道路やワインディングロードを走るときにおすすめです」

アクアGR SPORTは見た目だけの「なんちゃって」ではなく、走行性能の向上に真摯に向き合った本格派であることがわかる。2代目アクアの大きな特徴のひとつである乗り心地の良さを残しているところがポイントだ。

トヨタ・アクア GR SPORT
全長×全幅×全高:4095mm×1695mm×1485mm
ホイールベース:2600mm
車重:1150kg
サスペンション:Fマクファーソンストラット式/Rトーションビーム式 
駆動方式:FF
エンジン
形式:直列3気筒DOHC+THSⅡ
型式:M15A-FXE
排気量:1490cc
ボア×ストローク:80.5mm×97.6mm
圧縮比:ー
最高出力:91ps(67kW)/5500pm
最大トルク:120Nm/3800-4800rpm
燃料供給:PFI
燃料:レギュラー
燃料タンク:36ℓ
フロントモーター:1NM型交流同期モーター
最高出力:80ps(59kW)
最大トルク:141Nm
燃費:WLTCモード 29.3km/ℓ
 市街地モード31.0km/ℓ
 郊外モード:30.9km/ℓ
 高速道路:27.7km/ℓ
車両本体価格:259万5000円

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著者プロフィール

世良耕太 近影

世良耕太

1967年東京生まれ。早稲田大学卒業後、出版社に勤務。編集者・ライターとして自動車、技術、F1をはじめと…