マツダR360に日産ブルーバード、セドリック……ルパン三世の少年時代を描いたシリーズ最新作『LUPIN ZERO』はクルマ好きなら要チェック!

12月1日にローンチした定額制動画配信サービス「DMM TV」のオープニングを飾る独占コンテンツとして、16日から公開を開始した『LUPIN ZERO』。本シリーズは高度経済成長期の昭和30年代を舞台に、これまで描かれることがなかった少年時代のルパン三世にスポットを当てた作品となる。すでにご覧になった方も多いとは思うが、ルパン三世の魅力であるカーアクションは本作でも健在だ。今回はそんな話題作の『LUPIN ZERO』を紹介しつつ、登場するクルマにも注目していこう。

少年は如何にしてルパン三世になったのか?

12月16日からDMM TVで独占配信を開始したアニメ『LUPIN ZERO』をみなさんはご覧になっただろうか?
今作はモンキー・パンチ先生原作の少年期(ジャリルパン)を描いた少しのエピソードと、これまでのシリーズで大人になったルパン三世が語っていた思い出を手がかりに、これまで描かれることのなかったルパンの少年時代にスポットを当てた意欲作だ。
監督を務めるのは『ルパン三世Part5』で副監督・脚本・総作画監督などを手掛けた酒向大輔さんである。

のちに神出鬼没の大泥棒として名を馳せるルパン三世も、昭和30年代中頃には13歳の中学生。まだ、甘さの残るお坊ちゃんだが、大人顔負けの明晰な頭脳と物怖じしない豪胆さは大器を予感させる。父親のルパン二世からはカタギの人生を歩むように諭されているようだが……。

ご存知の通りルパン三世は年齢不明・国籍不詳というキャラクターだが、アニメで初めて姿を現した昭和46(1971)年10月24日(Part1第1話『ルパンは燃えているか・・・?!』の放送日)から逆算して昭和30年代半ばにルパン三世は少年期を過ごしていたものと酒向監督は想像。
初々しくも天才的な頭脳を持つが、体力だけは大人に及ばない13歳の何者でもない彼が、知恵と工夫で障害を乗り越え、神出鬼没の大泥棒へと成長して行く姿を描いている。

『ルパン三世』の相棒となる次元大介もこの頃はまだ中学生。傭兵の父親とともに各地の戦場を渡り歩き、すでに銃の名手として裏社会の仕事をしている。モンキー・パンチ先生の原作にある「ルパンと次元は幼馴染」との設定を膨らませたことから生まれたキャラクターだ。トレードマークの帽子とタバコはこの頃から。この場面で次元がしがみついているのは国鉄のDD13型ディーゼル機関車で、1958年から1967年まで製造され、主に操車場での入れ換え用に用いられた。

「Part1」のスピリッツを引き継いだ「ZERO」

もちろん、『ルパン三世』と言えばクルマやオートバイ、銃器などのリアルなメカニズム、アニメならではの誇張とディフォルメを生かしたアクション、そしてハードボイルドタッチな世界観にスラップスティックギャグを加えた独特な作風なども今作に引き継がれている。

本作ではオリンピックを目前とした高度成長期の日本が舞台となっている。
⽩⼟晴⼀さんの設定考証により、当時の街並みや空気感をリアリティをもって再現している。

このルパン三世の基礎を作ったのは、徹底的な「実証主義」(登場するメカやアイテムは実在するものの中からセレクトすることで作品にリアリティを与える演出手法)で『ルパン三世 Part1』制作に臨んだ演出家の大隈正秋(現・おおすみ正秋)さんと、キャラクターデザイン&作画監督の故・大塚康生さんの功績によるものだ。

キャラクターデザインやレイアウト、作画などは『Part1』を意識したものとなっており、『ルパン三世』の基礎を作った大隈正秋さん、大塚康生さん、宮崎 駿さん、高畑 勲さんといった往時のスタッフをリスペクトしていることが作品からも窺い知れる。

今回のシリーズは『Part1』に繋がるエピソードということもあるのだろうが、「ルパン三世がやりたくてアニメ業界に入った」という酒向さんが監督を務めた作品だけあって、単なる原点回帰に留まるだけでなく、先駆者であるクリエイターへのリスペクトを強く感じさせる。
そのことはセル画で描いたかのような絵作りや、主題歌やBGMに定番の大野雄二作曲のものではなく『Part1』由来(山下毅雄作曲)の音楽をアレンジして使用していることからも窺い知ることができる。

演じる声優は実力派が結集!

少年ルパンを主人公としたことで、ルパン役はいつもの栗田貫一さんに代わって『甲鉄城のカバネリ』や『バジリスク ~桜花忍法帖~』で主人公を務めた畠中祐さん、次元役は『アイドルマスター シンデレラガールズ』や『先輩がうざい後輩の話』に出演した武内駿輔さんだ。
ふたりは役作りのために『Part1~3』までをすべて見直したという並々ならぬ情熱で臨んだこともあって、ルパンや次元の役を完全に自分のものにしている。

主人公のルパン三世を畠中祐さん、次元役を武内駿輔さん、ヒロインの陽子役を早⾒沙織さんがが好演。主役の脇を固めるのは、ルパン一世役を安原義⼈さん、ルパン⼆世役には古川登志夫さんとレジェンド声優を起用している。しのぶ役の行成とあさんは女優エリザベス・オルセンの吹き替えを担当することで洋画ファンにお馴染みの実力派声優だ。

昭和を代表する魅力的なクルマとバイクが登場!

さて、Moter-Fanでの記事ということで、本作に登場するクルマやバイクについても触れておくことにしよう!
『LUPIN ZERO』は中学時代のルパン三世を描いた物語であるが、少年ルパンは3代続く泥棒家系のお坊ちゃんということもあり、運転免許など意にも介さず第1話から敵対組織から奪ったマツダR360クーペのステアリングを握っている。

しのぶをつけ狙う暴力団・藤岡組から奪ったマツダR360クーペを運転する少年ルパン。CG全盛のアニメ界にあって、手描きのクルマやバイクを登場させるのは『ルパン』シリーズの伝統となっている。

宮崎 駿さんや高畑 勲さんが演出を担当した『Part1』中盤以降、ルパン三世の愛車としてすっかり有名になったフィアット500が今作に登場するかはわからないが、R360クーペ以外にも第1~第2話、OP、EDだけでも、日産ブルーバード(310型)や日産セドリック・カスタム(30型前期)、ダイハツ・コンパーノ、マツダT1500、スーパーカブC100、ホンダ・ドリームCB72、丸正ライラックLS38、ラビットスクーターなど昭和30年代に活躍していたマシンが登場していた。

ルパン三世の愛車としてすっかりお馴染みのフィアット500F(2代目・NUOVA500)。もともとは大塚康生さんの愛車だったが、『Part1』に演出として途中参加した宮崎 駿さんの発案からメルセデス・ベンツSSKに代わって登場することになった。2代目フィアット500が誕生したのは1957年のことで、日本にも日本自動車や西欧自動車が代理店となって輸入されていた(大塚さんは西欧自動車で購入)。時代背景を考えると登場してもおかしくはないので、ファンとしては第3話以降の展開が気になるところ。

もちろん、見せ場となるカー&アクションシーンも用意されている。すなわち、今回もクルマ好きや、バイク好きも楽しめる『ルパン三世』となっているということだ。

クルマだけでなくバイクも本作では活躍する。
第2話にはホンダ・スーパーカブC100が登場するが、リアキャリアに載せられている出前機(おそらくマルシン製)に注目して欲しい。
少年ルパンの背後には出前機のオプションであるフレームに被せる背面シートを装着している。現在では購入できない幻のオプションで、制作スタッフのこだわりが感じられるポイント。

DMM TVで絶賛配信中

『LUPIN ZERO』は全6話構成で、DMM TVにて1~2話までが現在配信中(1話のみ無料で視聴可能)。第3話以降は毎週金曜日に順次配信予定となる。
年末・年始は少年ルパンがジャックする。チャンネルはDMM TVで決まったぜ!

■スタッフ&キャスト
原作:モンキー・パンチ
監督:酒向⼤輔
シリーズ構成:⼤河内⼀楼
設定考証:⽩⼟晴⼀
キャラクターデザイン:⽥⼝⿇美
アニメーション制作:テレコム・アニメーションフィルム
製作:トムス・エンタテインメント
キャスト:畠中祐(ルパン役)/武内駿輔(次元役)
原作:モンキー・パンチ
©TMS

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著者プロフィール

山崎 龍 近影

山崎 龍

フリーライター。1973年東京生まれ。自動車雑誌編集者を経てフリーに。クルマやバイクが一応の専門だが、…