目次
乗ってすぐに体感できる第二世代e-POWER
日産キックスのデビューは2020年6月。Vプラットフォームを使って開発されたBセグSUVで、パワートレーンはe-POWER(第一世代、つまり前型ノートと同じ)を使っていた。スタイリッシュなデザインとコンパクトなサイズが魅力である。
そのキックスが2022年7月に商品改良を受けて、パワートレーンがe-POWER(第二世代)に進化した。それにくわえて、デビュー時には設定がなかった4WD(リヤにモーターを搭載する電動4WD)がラインアップされた。第二世代e-POWERは、ノート/ノートオーラと同じパワートレーンだ。4WDのパワートレーンは
HR12DE(発電用エンジン)-EM47(フロント駆動モーター)-MM48(リヤ駆動モーター)
という組み合わせだ。
その第二世代e-POWERを搭載したキックス4WDに試乗した。
キックスに乗るのは久しぶり。日産グローバル本社の地下駐車場で対面したキックスは、プレミアムホライズンオレンジ/ピュアブラック2トーン(8万2500円の特別塗装色)のボディ色。相変わらず鮮やかだ(自分で買うなら選ばないと思うが)。
キックスの最大の魅力は、デザインとサイズ。
全長×全幅×全高:4290mm×1760mm×1605mm
最小回転半径:5.1mの取り回しの良さは、健在だ。
乗り込んでシステムを起動。1.2ℓ直3エンジンが始動する。ご存知の通り、e-POWERはエンジンで発電してモーターが駆動する電動車だ。e-POWER(だけではないけれど)の問題点は、エンジンがかかったときの「がっかり感」だ。商品改良を受けて、そのがっかり感は、かなり改善されている。
フロントの駆動用のモーターはEM57型からEF47型へ進化。パワー&トルクも95kW(129ps)/270Nmから100kW(136ps)/280Nmへ増強された。
キックスのデビューに、開発陣から「80km/h以下ならキックスが最強」という言葉を聞いて、80km/h以下だけの試乗をした。
それは、e-POWERの得意分野は市街地と郊外路(言い換えれば、高速道路を巡航するような場面は苦手)。
第二世代になったe-POWER搭載している新型キックスの場合は、きっと少し速度域が上がって「90km/h最強」なのではないか、と勝手に想像して、今回の試乗は極力90km/h以下で行なった。高速道路上でも100km/hを超えないようにした。
エンジンがかかった時のがっかり感が改善されている、と書いたが、エンジンがかかる頻度も下がっている(エンジンがかかった時に「気づかない」ということはないが)。
エンジンからの振動、フロアの剛性感は、やはり最新のプラットフォーム(CMF-B)を使うノート/ノートオーラよりも少し大きめだ。大きいというより少し雑味がある感じと言えばいいのだろうか。
620km走って燃費は? ノートと比べたら?
今回の商品改良のハイライトのもうひとつは、従来なかった4WDモデルが追加されたことだ。リヤモーターは50kW(68ps)/100Nmと強力だ。4WDであることが必須の地域でもキックスが選べるようになるのは朗報。ドライ路面でもたとえば、高速道路の本線へ回り込んで登っていくようなシチュエーションなどで、グッと後輪がクルマを押してくれる感覚は、気持ちがいい。
ちなみに、FWDと4WDの価格差は約26万円だ。
キックスに試乗してちょっと気になったのは、室内の横方向の余裕と着座位置の高さだ。
横方向でいえば、室内幅は1420mm、ノートオーラのそれは1445mm。カタログ上ではわずか25mmなのだが、やや狭く感じた。着座位置は、ボディサイズから想像するより少し高めで、シートリフターで一番低くしても、ちょっと高く感じた。とはいえ、これはドライバーの体格やドラポジの問題。乗り込み性の高さは、キックスを選ぶひとつのポイントになるだろう。
さて、今回のキックス第二世代e-POWER 4WDは
623.2km走って燃費は19.1km/ℓ(平均速度34km/h)だった。
前回キックス(第一世代e-POWER FWD)を試乗した際は
230km走ってトータルの燃費は19.0km/ℓ(平均時速33km/h)だった。
ノートの場合は4WDモデルで
314.6km走って燃費は22.2km/ℓ(平均速度38km/h)だった。
FFモデルは
347.3km走って燃費は22.3km/ℓ(平均速度36km/h)だった。
ノートオーラ(4WD)は
850.2km走って燃費は19.5km/ℓ(平均時速47km/h)だった。
キックスは、第二世代e-POWERを得て、燃費性能が大きく向上したのは確認できた。第一世代のFWDモデルよりも今回の4WDの方が燃費がよかった。とはいえ、ノートと比べるとやはり燃費も少し劣る。ここはVプラットフォームとCMF-Bの違い……と言っていいのだろう。
モード燃費で比較すると、
キックス4WD
WLTCモード 19.2km/ℓ
市街地モード 18.7km/ℓ
郊外モード 20.7km/ℓ
高速道路モード 18.5km/ℓ
ノートオーラ4WD
WLTCモード 22.7km/ℓ
市街地モード 21.8km/ℓ
郊外モード 24.9km/ℓ
高速道路モード 21.8km/ℓ
となっている。
価格は
キックス X-FOUR 306万1300円
ノートオーラ G-FOUR 291万2800円
キックスは第二世代e-POWERを得て商品力をキープしていることを確認した。コンパクトなSUV/クロスオーバーならキックス、マツダCX-3、ヤリスクロスがある。が、ヤリスクロスはキックスよりやや小さい。CX-3はデビューが2015年2月でほぼ8年が経っていて、モデル末期を迎えている(次期型の噂はないけれど)。
ノートオーラは、SUVというには、そのテイストが薄い。となると、キックスの価値は俄然出てくる。東京に住む筆者がキックスを選ぶなら約26万円安いFWDモデルを選ぶ。東京の街を肩の力を抜いて走り抜ける……そんな場面に新しくなったキックスは似合っている。
日産キックス X FOUR ツートーンインテリアエディション(ベージュ) 全長×全幅×全高:4290mm×1760mm×1605mm ホイールベース:2620mm 車両重量 1480kg Fサスペンション:独立懸架ストラット式 Rサスペンション:トーションビーム式 駆動方式:4WD 発電用エンジン 形式:DOHC水冷直列3気筒 型式:HR12DE 排気量:1198cc ボア×ストローク:78.0mm×83.6mm 圧縮比:12.0 最高出力:82ps(60kW)/6000pm 最大トルク:103Nm/4800rpm 燃料供給:PFI 燃料:無鉛レギュラー 燃料タンク:35ℓ Fモーター 型式:EM47 種類:交流同期電動機 最高出力:136ps(100kW)/3410-9697rpm 最大トルク:280Nm/0-3410rpm Rモーター 型式:MM48 種類:交流同期電動機 最高出力 68ps(50kW)/4775-10259rpm 最大トルク:100Nm/0-4775rpm 動力用主電池 リチウムイオン電池 燃費 WLTCモード 19.2km/ℓ 市街地モード 18.7km/ℓ 郊外モード 20.7km/ℓ 高速道路モード 18.5km/ℓ 最終減速比 フロント 7.388 リヤ 7.282 車両価格:317万1300円 メーカーオプション15万1800円(プレミアムホライズンオレンジ/ピュアブラック2トーン 8万2500円、インテリジェントアラウンドビューモニター+インテリジェントルームミラー6万9300円)