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何があってもスタックせずに帰って来れそうだ
新型ジムニー「XC」 5MTで、元マツダでRX−7(FD3S、FC3S、FD3C)の開発主査を担当した後、モータージャーナリストとしてご活躍されている小早川隆治さんとドライブしながら霧ヶ峰へと到着した筆者は、ジムニーで入っていけそうな林道を地元の方に案内してもらい、初めて林道へと入った。
パートタイム4WDのジムニーは通常はFRで、オンロードでは基本的に4WDへと切り替えない。今回は路面が滑りやすい砂利や土があるオフロードに入るため、センターレバーを手前に動かし、4Hへ入れて初めて4WD状態での走行を体感した。
通常の乗用車タイプでは入ることができないばかりか普通のSUVタイプの4WDでも大丈夫だろうかと思うような凸凹とした岩だらけの道を走ってもリサーキュレーティングボール&ナット式のステアリングは適度にダルで、路面からの衝撃を和らげてくれるのがありがたい。
車体が上下左右に大きく揺さぶられるような路面を走行しても骨太感のあるボディ剛性と丈夫でストロークがたっぷりあるリジットサスペンンションによって抜群のトラクション性能を発揮する。何があってもスタックせずに帰ってこれそうだと感じさせてくれる。この「プロの道具」感こそ、ジムニーの本質なのだとオフロードに入ってみて、はっきり理解できた。
超高性能スポーツカーがサーキットでの運動性能で真価を発揮するように、ジムニーはオフロードでその真価を見せつけた。純正タイヤはそれほどオフロード走行に適したトレッドパターンではないがグイグイ走っていく。「もしここで2WDにしたらどうなるのだろうか」と試してみると、あっという間に後輪が空転して前に進まなくなってしまった。
また4Hに入れて4WDにすればしっかりとした接地感を伴って前に進む。なんだかとても楽しく、ワクワクする感じは遊園地の乗り物に初めて乗った時のような感覚でとても新鮮だ。
バンパーコーナーをカットしたデザインで急斜面の展開もラク
急斜面を登ったり、降りたりする場所があり、ここではさらに走破性能の高い4Lに入れてゆっくり、しっかりと路面を踏みしめながら走行した。ローギヤードな4Lでは「ウーウー」とエンジンが唸る割りには前へ進まない感覚もまた大きなトラックを運転しているかのようで新鮮だった。
狭い道でのUターンでは軽自動車で小さい車体であること、アプローチアングル、デパーチャーアングル共に大きいだけでなく、バンパーの左右を斜めに切り上げたデザインによって、バンパーの角を擦る心配をせず、急斜面での展開も行えるのがありがたかった。
普段はあまりクルマが入ってこないであろう小川の辺にジムニーを停めて、降りてみるとそこには美しい草木や花に無数の蝶々や昆虫小動物が群がり、飛び回り、美しい蝶たちのシャワーのようだった。リスなど小動物は野原を駆け回り、楽しそうに過ごしていた。人間が奪った自然の大切さを改めて思い知ったと同時にこういったクロスカントリーカーで林道に入る際のマナーとモラルを守り、自然を見せていただく気持ちを忘れてはならないと感じた。
それにしてもジムニーの走行性能の高さ、余裕は相当なものだ。何よりジムニーでないと入れない道があるという言葉通り、軽自動車サイズの特性を活かしたパッケージングで本格オフロード4WDの中でもジムニーほどオフロードにおいて、タフで頼もしい相棒はいないのではないか。素晴らしい性能に素直に感動し、自然の中で楽しいひと時を過ごせた。