新型エクストレイルに27インチ級ロードバイクを積んでみた!【スポーツ自転車積載チャレンジ:第8回 日産エクストレイル編】

自転車好きジャーナリストの安藤眞が、さまざまなクルマにあの手この手で「愛車」を載せて積載性をチェックする「スポーツ自転車積載チャレンジ!」 第8回目は、e-POWERで人気のミドルサイズSUV「エクストレイル」を取り上げる。全国の自転車愛好家の皆さん、ぜひ参考にしてください。
REPORT:安藤 眞(ANDO Makoto) PHOTO:中野幸次(Nakano Koji)

日産エクストレイル G e-4ORCE

全長4660mm 全幅1840mm 全高1720mm 車両価格4,499,000円

新型エクストレイルは技術的なトピックスが多い。e-POWERにはVCターボエンジンを初搭載し、四駆機構e-4ORCE採用。ボディサイズは旧型並みをキープしながら、内外装の質感も大きくアップ、所有満足度を満たす要素満載のミドルサイズSUVだ。

初代エクストレイルの積載性は優秀だった!

あちこちで書いているとおり、僕はかつてT30型(初代)エクストレイルに乗っていた。そのときもロードバイクを積んであちこち出かけていたが、車輪をつけたままだとサドルが収まらず、サドルを外して車輪付きのまま積載していた。

T30型には14年間、乗ったので、乗り換える頃にエクストレイルはひと世代飛ばしてT32型になっていたが、サードシート付きがメインになってラゲッジの天地高が低くなったので、自転車は載せにくくなり、乗り換えることはしなかった。

今度のT33型は多少良くなったと聞いていたし、何しろe-POWER の出来が良かったので、次期マイカーとして期待していたのだが、実際にロードバイクを積んでみたら、なかなか微妙な結果となった。前後輪を外してサドルも下げないと、積載できないのだ。

車輪は前後とも外し、サドルも目一杯下げて、天地方向はギリギリ。サドル高(クランクセンターからサドル上面まで)が660mm以下なら、サドルは下げずに入ると思う。身長でいうと167cmぐらい?

といっても、それはCX-5も同様なのだが、CX-5は狭さが逆に、バイクの固定に貢献しており、収まったときのバランスが良い。フォレスターは前後を逆にすれば後輪をつけたまま載せられたし、後席背もたれのストライカーがタイダウンフックに使えたりもする。

後席の折りたたみは、背もたれが前に倒れるだけ。そこと段差が付かないようにラゲッジフロアを合わせているので床が高く、ラゲッジルームの天地高は間口中央で795mmと、あまり大きくない。

要するに各社とも一長一短あり、甲乙を付けるのは難しい、ということ。あえていうなら、固定のしやすさでエクストレイルはライバル2車に少し劣るかな、という印象だ。

チャイルドシートのトップテザーアンカーを利用してタイダウンしてみるが、左右均等にはならないので、安定感はイマイチ。センターアームレストをうまく利用することを考えたほうが良さそうだ。

さて、もっと手数が少なくて済む方法はないかと考えてみた。フォレスターはサドルを元の位置に戻して倒立できたが、エクストレイルは無理っぽい。そこで後席を人が乗れる状態にし、ラゲッジに横向き&倒立搭載を試してみた。

前後輪を外してサドルも下げなければならないのなら、こういう積みかたもある。間口を通すのがけっこうギリギリだけど、奥まったところで作業する必要がないだけ、腕や腰は楽だ。ハンドルとサドルの3点支持で安定するので、後席ヘッドレストからバンジーコードで引けば固定もOK。

間口を通すのがギリギリなので、デリケートなリヤディレイラー(変速機)をぶつけないよう注意する必要はあるが、載せてしまえば安定感は高いし、ヘッドレストのステーを使えば固定も簡単だ。立てたまま前向きに積み込むときに較べ、奥まったところの作業にならないから、腕や腰にかかる負担も小さい。

問題は後方視界。特にルームミラー越しだと、真ん中が盛大に遮られてしまい、ほとんど見えない。

どのみち前後輪を外してサドルも下げるなら、この方法が良さそうだ。ルームミラー越しの後方視界が遮られてしまうが、Gグレードならデジタル式ルームミラーが標準装備(Xはオプション、Sは無し)されているから、そこは問題なくクリアできる。

そこはデジタル式のルームミラーが威力を発揮。バックドアに取り付けたカメラで撮影した映像を、ミラー面に設置した液晶パネルに映すので、荷物に邪魔されることなく、後続車両がスッキリ見える。

とはいえ、思い返せばT30〜31型のラゲッジユーティリティは優秀だった。特にT31型のラゲッジ高は最大1020mmあったから、僕のロードバイクも丸ごと積めたはず。そんなクルマは、もう現れないのかしら?

積載自転車の寸法図

■第1形態 完成車状態 長さ1680mm 高さ1000mm 幅445mm

車載時に最大のネックとなるのが、サドルの高さ。全長はフレームサイズが変わってもそれほど大きく変化しないのがロードバイクの特徴。身長150cmぐらいのライダーのサイズでも、短くなるのは40mm程度だ。

■第2形態 前輪を外してホルダーに固定 長さ1510mm 高さ965mm 幅445mm

前輪を外せば全長は170mm短くなるが、サドルの高さは35mmしか低くならない。サドルを外せば高さは760mmまで下がるのだが、ロードはミリ単位でセッティングを出すし、真直度を合わせるのも面倒なので、サドルはなるべく触りたくない。

■第3形態 前後輪を外し、後輪はリヤエンドサポートで保持 長さ1230mm 高さ880mm 幅445mm

前後輪を外せば全長は450mm短くなるが、高さを下げるのは前ギヤ(46t)が限界を決めるので、120mmしか低くならない。サドルを外すとハンドルステムがいちばん高くなり、710mmとなるため、車載可能なモデルは増えそう。

■第4形態 前後輪外して倒立 長さ1115mm 高さ870mm 幅445mm

このサイズなら、セダンのリヤシートにも積めてしまう。大きめのセダンなら、トランクにも入れることができるだろう。実際、僕の仲間は、ランエボやアテンザ、フィアット500にこうして積んでやってくる。自転車乗りは、運転が楽しいクルマ好きが多いのだ。

著者と自転車のプロフィール

キャプション欄・画像は任意のサイズにドラッグ可能

メカニズムを得意とするジャーナリストの安藤 眞氏は、40年以上も自転車を趣味とし、カングーに愛車を積んでサイクリングを楽しんでいる。身長181cm。フレームを購入して自分で組み上げた写真のロードバイクはサドル高が1mあるから、この自転車が載るクルマなら、アナタの自転車も積載できる可能性が高いはず。


キャプション欄・画像は任意のサイズにドラッグ可能

ブリヂストンサイクルのNEO-COTというフレームを購入して、自分で組み上げた。92年発売のスチール製(CrMo鋼)だが、当時としては画期的なもので、ハイドロフォーミング製法で接合部の形状が最適化されている。それを見た僕は「スチールフレームの最高到達点」と直感して即購入。部品を交換しながら30年間、乗り続けている。その後、アルミフレームやカーボンフレームに押され、2021年を最後に絶版となってしまった。ホイール径は700C。


キーワードで検索する

著者プロフィール

安藤 眞 近影

安藤 眞

大学卒業後、国産自動車メーカーのシャシー設計部門に勤務。英国スポーツカーメーカーとの共同プロジェク…