メルセデス・ベンツAクラス 220d MBUXもAR(拡張現実)ナビもSクラス譲りになったコンパクト・メルセデスの完成度を探る

メルセデス・ベンツA200d 車両価格:557万円
メルセデス・ベンツのスポーツコンパクトモデル、Aクラスが大幅にアップデートされた。エクステリアおよびインテリアが刷新され、インフォテインメントシステムのMBUXは最新世代となり、アダプティブハイビームアシストは全車に標準装備となるなど、装備レベルが向上している。試乗しながら確認していこう。
TEXT & PHOTO:世良耕太(SERA Kota)

Sクラス譲りの装備

全長×全幅×全高:4440mm×1800mm×1420mm ホイールベース:2730mm 車重:1540kg

エクステリアから見ていこう。アップデート版のAクラスは、全車にボンネットフード上のパワードームが標準装備になり、一段とスポーティなムードを手に入れた。フロントバンパーとフロントグリルは新デザイン。フロントグリルはシングルルーバーで、小さなスリーポインテッドスターがちりばめられている。

スリーポインテッドスターが散りばめられたグリル
スリーポインテッドスターが散りばめられたグリル

ハイビームとロービームを交通状況に応じて自動的に切り換えるアダプティブハイビームアシストを備えるヘッドライトは、インナー側の形状を変更。アルミホイールは標準仕様、AMGラインパッケージともに新デザインを採用している。テールライトもやはりインナーのデザインを変更。ディフューザーは形状を変更し、ワイド感をより強調した。ボディカラーには新色のローズゴールド(写真)が追加されている。

インテリアは最新世代MBUXの採用がハイライトだ。「ハイ、メルセデス」の問いかけで起動する対話型MBUXは2018年末に国内で販売が始まった現行Aクラスで採用済みだが、アップデート仕様では機能が進化している。ゼロレイヤーの採用が変更点のひとつで、マップ表示画面に複数のコンテンツを表示することが可能。目的地までの到着時間や混雑状況のほか、ペアリングした電話、ラジオやオーディオを表示することが可能。学習機能を備えており、ユーザーが毎朝通勤で勤務先を目的地に設定している場合、その時間になると目的地を会社に設定するかどうか予測提案をする。

最新のメルセデス・ベンツのインテリア

Sクラスなど上級モデルで採用されているAR(拡張現実)ナビゲーションをCセグメントでは初めて採用した(標準装備またはパッケージオプション)。目的地を設定して行き先案内をする場合、車両の前面に広がる現実の景色が10.25インチのメディアディスプレイに表示され、進むべき方向にブルーの矢印が表示される。地図上の案内表示や矢印だけの案内では曲がるべき交差点のひとつ前で曲がってしまうケースが起こりがち(とくに筆者の場合)だが、現実の景色に進むべき矢印が表示されるので、間違いが起こりにくくなる(と、短時間の試乗ではそう感じた)。

インテリアはクラシックレッド/ブラック(本革)
ステアリングホイールも最新世代に。ハンズオフの検知が静電容量式になった。

ステアリングホイールも最新世代にアップデートされている。デザインが一新されただけでなく、ハンズオフの検知がトルク感応式から静電容量式に変更された。追従型クルーズコントロールのディスタンスアシストディストロニックを機能させている際、従来はステアリングをしっかり握っていないと警告が発せられることがあった。静電容量式の場合は軽く触れているだけで検知してくれるので、ディスタンスアシストディストロニック使用時の使い勝手向上につながる。

横置きに搭載し、前輪を駆動するパワートレーンの設定に変更はない。A180はM282型の1.4L(1331cc)直列4気筒ガソリンエンジンを搭載。ルノーと共同開発したエンジンで、デルタシリンダーヘッドと呼ぶ、カムシャフトを軸方向から見た場合に三角形をした断面のシリンダーヘッドを持つのが特徴。高さ方向の寸法はかさむが、ヘッドまわりを省スペースかつ軽量化できるメリットがある。最高出力は100kW/5500rpm、最大トルクは200Nm/1460-4000rpmを発生。7速DCTとの組み合わせで、WLTCモード燃費は15.3km/Lだ。

エンジン 形式:直列4気筒DOHCディーゼルターボ 型式:OM654 排気量:1949cc ボア×ストローク:82.0mm×92.3mm 圧縮比:ー 最高出力:150ps(110kW)/3400-4400rpm 最大トルク:320Nm/1400-3200rpm 燃料供給:DI 燃料:軽油 燃料タンク:43L

A200dはOM654型の2.0L(1949cc)直列4気筒ディーゼルエンジンを搭載する。最高出力は150ps(110kW)/3400-4400rpm、最大トルクは320Nm/1400-3200rpmを発生。8速DCTとの組み合わせで、WLTCモード燃費は19.1km/Lである。

サスペンション形式はフロントがマクファーソンストラット式、リヤはトーションビーム式で、横置きパワートレーンを採用するCセグメントとしては標準的な構成。AMGラインパッケージ(39万2000円)を選択するとロワードコンフォートサスペンションとなり、全高が標準仕様より20mm低くなる(1440mm→1420mm)。また、ステアリングは可変ギヤレシオのダイレクトステアリングとなり、試乗車はまさにこの仕様だった。クラシックレッドとブラックの色鮮やかなレザーのスポーツシートを備えているのは、AMGレザーエクスクルーシブパッケージ(22万9000円)を選択しているからだ。

リヤサスペンションはTBA(トーションビームアクスル式)
タイヤサイズは225/45R18 コンチネンタル EcoContact6
後席の居住性は充分

1400rpmで320Nmの最大トルクを発生してしまうのだから、車両重量がガソリンのA180より130kgも重い1490kgになろうとも(Cセグメントハッチとしては、いまやそう重い部類でもない)、A200dの走りは余裕しゃくしゃくだ。静かに巡航スピードに達し、静かにクルーズする。見た目のスポーティなイメージとは裏腹に、ジェントルな走りが印象的だ。

しかし鞭をくれれば別で、320Nmのトルクは偉大だと感じる。加速する際に背中を蹴飛ばす力強さはなんともたのもしい。VWゴルフもそうだが、欧州系のこのクラスのステアリングは軽めがトレンドなのだろうか。しっかりした手応えのあるGLCに乗った直後だったのが尾を引いていたのかもしれないが、拍子抜けするほど軽く感じた。

よりアグレッシブな造形の前後バンパーを装着するAMGラインパッケージ装着車は、もともとスポーティな仕立てのAクラスが一段とスポーティに感じられる。インテリアも同様。いっぽうで、車両サイズはコンパクト(全長×全幅×全高4440×1800×1420mm)なのに後席の居住性は充分に確保されているし、ラゲッジスペースも同様。EクラスやCクラスなどからダウンサイズしてAクラスを選択するユーザーが多いと聞くが、メルセデス・ベンツ同士の乗り換えに限らず、ダウンサイズ派の要望をしっかりと受け止める、完成度の高い静的&動的質感の持ち主であるのは間違いない。

最小回転半径:5.0m 最低地上高:125mm ラゲッジスペースは345L 後席を倒せば1185L
メルセデス・ベンツA200d
全長×全幅×全高:4440mm×1800mm×1420mm
ホイールベース:2730mm
車重:1540kg
サスペンション:Fマクファーソンストラット式/R トーションビームアクスル式
駆動方式:FWD
エンジン
形式:直列4気筒DOHCディーゼルターボ
型式:OM654
排気量:1949cc
ボア×ストローク:82.0mm×92.3mm
圧縮比:ー
最高出力:150ps(110kW)/3400-4400rpm
最大トルク:320Nm/1400-3200rpm
燃料供給:DI
燃料:軽油
燃料タンク:43L
トランスミッション:8AT

WLTCモード燃費:19.1km/ℓ
 市街地モード 14.3km/ℓ
 郊外モード 18.5km/ℓ
 高速道路モード 23.0km/ℓ

車両価格:557万円
オプションはAMGラインパッケージ 39万2000円  AMGレザーエクスクルーシブパッケージ 22万9000円 ドライバーズパッケージ45万7000円  メタリックペイント9万5000円 op込み価格675万30000円

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著者プロフィール

世良耕太 近影

世良耕太

1967年東京生まれ。早稲田大学卒業後、出版社に勤務。編集者・ライターとして自動車、技術、F1をはじめと…