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最低地上高はクロストレック比マイナス80mm
スバルで一番小さな、そしてベーシックなエントリーモデルとなる「インプレッサ」が、7年ぶりにフルモデルチェンジ。そのプロトタイプを、クローズドコースで試乗することができた。
インプレッサといえば小さな驚きだったのは、クロストレックが先行発売されたこと。それまで派生車種だった「XV」が独自の名前を与えられ、あまつさえ本家を差し置いてデビューを飾ったことだ。
もっとも時代の流れがSUVに向かっていることを考えれば、スバルの選択は妥当。伝統への固執よりもフレキシブルな英断に踏み切った柔軟な姿勢は、企業の若さを感じさせられる。
とはいえ、そんな本家の良さが失われたわけではない。なぜならインプレッサはクロストレックよりも車高、すなわち重心が低く、シンメトリカルAWDレイアウトの利点をより素直に活かせるからだ。というわけで早速、その概要と走りをお伝えしよう。新型インプレッサのグレード構成は、全部で3つ。
新型インプレッサのグレード構成は、全部で3つ。ガソリンモデルが「ST」、e-BOXER搭載モデルが「STーG」と、その豪華仕様となる「STーH」のふたつで、全てのグレードにFWDとAWDが設定される。そして今回の発表では、セダンボディはラインナップされなかった。
今回試乗に用意されたモデルはe-BOXER仕様のプロトタイプ(といってもナンバーが付かないだけで、ほぼ市販状態だという)で、FWDとAWDの両方に試乗。また先代モデルのAWDで、その進化を比較することができた。
パワーユニットは2リッターの水平対向4気筒「F20型」エンジン(145PS/188Nm)とモーター(13.6PS/65Nm)の組み合わせで、先行発売のクロストレックとまったく同じスペックだ。
タイヤは17インチ、バネ下の収まりもちょうどいい
対してシャシーは、インプレッサが最低地上高120mmと、クロストレックの200mmに対して80mmも低い。その分ロールやピッチングを抑えることができるから、フロントのスプリングレートはソフトにできたようだ。かつリアはレートを少し上げることで、快適さとキビキビとしたハンドリングの両立を狙ったという。ちなみに装着タイヤのダンロップ「SP SPORT MAXX 050」(サイズは215/50R17)も、インプレッサと共にモデルチェンジを果たした。
AWDモデルを走らせてまず感じたのは、「これぞスバル!」と言うべき質感の高さだった。今回コース上には所々パイロンによって、曲がり込んだコーナーが設定されていた。またスキール音も禁止され、一般公道を想定したステージが用意されていた。
こうした状況で、緩慢に走って曲がれる・止まれるは当たり前。なるべく平均スピードを落とさず、かつコーナーの手前できちんと減速してターンすると、インプレッサの持つ表情が沢山見えてきた。
操舵フィールは、切り始めの感触が穏やかで、かつ操作に対する正確性が高い。そこにはクロストレックの公道試乗で感じた初期操舵時の手応えの希薄さは感じられず、2ピニオン化した電動パワーステアリングの動きはとても滑らかだった。実際に公道を走るまでは明言できないが、ここには車高の低さやダンパーレスポンス、そしてタイヤキャラクターの違いが利いているのかもしれいない。
フルインナーフレーム化を軸に高剛性化されたSPG(スバル・グローバル・プラットフォーム)も、そこにきちんと上質感を上乗せする。ブレーキング時の安定性、それがもたらすペダルリリースのしやすさ。コーナー立ち上がりで縁石を乗り越えたときの、ボディのシッカリ感とダンピング性能の高さ。タイヤサイズが17インチに抑えられているから、バネ下での収まり感も本当にちょうどいい。
パワーユニットに圧倒的なトルク感は望めないが、クロストレックと比べれば車重が少し軽いからか、その加速は心地良い。シャシーやAWDのトラクション、そしてCVTの制御といった、全ての動きに連続性があるため、アクセルがリニアに追従するのだ。
ACT-4 AWDの4輪駆動制御はコンサバだが、シャシー追従性が高いから運転が楽しい。ただスポーティというよりは上質な印象で、これこそスバルが作るCセグハッチの真骨頂だと思えた。かつてインプレッサがレガシィからスイッチしてWRCに投入されたのも、この小さくて高剛性なボディにシンメトリカルAWDを搭載していたからだと、そんなことを自然に思い起こした。
時代の流れはクロストレックかもしれないが‥‥?
スバルが言うような、よりキビキビとした操作性を求めるならFWDがお勧めだ。筆者はクロストレックでも同じ評価をしたが、リアに駆動が掛からない分だけ、その旋回性がスッキリと機敏だからだ。そしてクロストレックよりも重心が下がる分だけ、操舵に対するレスポンスタイムが短くなる。
水平対向4気筒をトランスミッションと共に縦置き搭載するFF車は、いまやアウディとスバルくらい。降雪地域では選びづらい選択になるかもしれないが、このバランスの良さは、ぜひとも味わってみて欲しいところだ。
難しいのは先代AWDモデルとの比較だった。なぜならこれも、未だに現役感があるからだ。確かに電動パワーステアリングの追従性は滑らかさに欠けるが、その分ずっしりとした手応え感がある。またボディ剛性が低い分だけトータルでシャシー剛性が補われており、シャシーレスポンスにもダイレクト感がある。
エンジン制御は現行モデルの方が緻密。それによってe-BOXERの効果もより体感しやすい。ただその電動アシスト効果はストロングハイブリッドほどではないから、ここが強烈なセリングポイントにはなりにくい。つまり無理して新型へ乗り換える必要性は低く、とことん現行モデルに付き合うのはありだと思う。もしくは長く乗り倒したならレヴォーグなど、次のステップに進むのもいい。
そう聞くと面白みを感じないかもしれないが、誠実な進化とはこういうものだ。総じて新型インプレッサは、スバルを支えるCセグエントリーモデルの役割をまじめに果たし続けているといえるだろう。時代の流れはクロストレックかもしれないが、動的質感を現実的な価格で味わいたいならインプレッサはお勧めだ。
SUBARU インプレッサ ST-H(FWD) 全長×全幅×全高 4475mm×1780mm×1515mm ホイールベース 2670mm 最低地上高 135mm 最小回転半径 5.3m 車両重量 1540kg 駆動方式 前輪駆動 サスペンション F:ストラット R:ダブルウイッシュボーン タイヤサイズ 215/50R17 エンジン型式 FB20 エンジン種類 水平対向4気筒DOHC 直噴 総排気量 1995cc 最高出力 107kW(145ps)/6000rpm 最大トルク 188Nm(19.2kgm)/4000rpm モーター型式 MA1 モーター種類 交流同期電動機 最高出力 10kW(13.6ps) 最大トルク 65Nm(6.6kgm) 燃費消費率(WLTC) 16.6km/l 価格 2,992,000円
SUBARU インプレッサ ST-H(AWD) 全長×全幅×全高 4475mm×1780mm×1515mm ホイールベース 2670mm 最低地上高 135mm 最小回転半径 5.3m 車両重量 1580kg 駆動方式 全輪駆動 サスペンション F:ストラット R:ダブルウイッシュボーン タイヤサイズ 215/50R17 エンジン型式 FB20 エンジン種類 水平対向4気筒DOHC 直噴 総排気量 1995cc 最高出力 107kW(145ps)/6000rpm 最大トルク 188Nm(19.2kgm)/4000rpm モーター型式 MA1 モーター種類 交流同期電動機 最高出力 10kW(13.6ps) 最大トルク 65Nm(6.6kgm) 燃費消費率(WLTC) 16.0km/l 価格 3,212,000円
SUBARU インプレッサ ST(FWD) 全長×全幅×全高 4475mm×1780mm×1450mm ホイールベース 2670mm 最低地上高 130mm 最小回転半径 5.3m 車両重量 1380kg 駆動方式 前輪駆動 サスペンション F:ストラット R:ダブルウイッシュボーン タイヤサイズ 205/50R17 エンジン型式 FB20 エンジン種類 水平対向4気筒DOHC 直噴 総排気量 1995cc 最高出力 113kW(154ps)/6000rpm 最大トルク 193Nm(19.7kgm)/4000rpm 燃費消費率(WLTC) 14.0km/l 価格 2,299,000円
グレード 駆動方式 価格 ST FWD 2,299,000円 ST AWD 2,519,000円 ST-G FWD 2,783,000円 ST-G AWD 3,003,000円 ST-H FWD 2,992,000円 ST-H AWD 3,212,000円