積載性に加え快適性や上質感も向上した「日産 キャラバン」【最新国産新型車 車種別解説 NISSAN CARAVAN】

日産を代表するワンボックス商用車「キャラバン」。長距離の移動も多いため、最新の改良では、乗り心地の快適性を高めた。刷新されたディーゼルエンジンは動力性能と燃費が向上し、実用回転域の駆動力が高まったことでさらにパワフルになった。乗降性を高めるためにステアリングホイールの下部をフラットとした形状にもユーザーへの配慮が感じられる。
REPORT:渡辺陽一郎(本文)/小林秀雄/工藤貴宏(写真解説) PHOTO:平野 陽/中野孝次 MODEL:新 唯

最高出力もトルクも向上 ミッションも7速ATに進化

キャラバンは日産を代表するワンボックスボディの商用車だ。現行型は2012年に発売され、直近では21年にガソリンエンジン車、22年には販売比率の高いクリーンディーゼルターボ搭載車がマイナーチェンジを行なった。

エクステリア

新型キャラバンはフロントバンパーとフロントグリルのデザインを刷新。動きを感じさせるグリル形状とバンパーコーナーの造形によりダイナミックさを強調し、より乗用車ライクな印象を高めている。最小回転半径は5.2m。

後者は直列4気筒2.4ℓだが、エンジンは刷新された。基本的には、資本・業務提携を結ぶ三菱デリカD:5の2.2ℓをベースに、排気量を拡大したものだ。最高出力は12㎰/3250rpm、最大トルクは37.7㎏m/2000rpmで、改良前に比べると3㎰/1.4㎏m向上した。

トランスミッションも従来の5速ATから7速ATに改良されている。燃費数値は、改良前のプレミアムGX・2WDはJO80モード燃費が12.2㎞/ℓだったが、改良後は13.6㎞/ℓ(WLTCモード燃費は11.3㎞/ℓ)になった。動力性能と燃費が両方とも向上している。

乗降性

そこで改良後のディーゼルを試乗すると、最大トルクの変化からわかるとおり、実用回転域の駆動力が高まった。特に2000〜3500rpm付近が力強い。ATも多段化のおかげでギヤ比の配分が細かくなり、ディーゼルエンジンが得意な低回転域を効率良く使いながら加速できる。通常の市街地走行では、3000rpm以上を回す機会はほとんどない。

アクセルペダルの踏み方も改良前に比べて少なくなり、エンジンの負荷も軽減された。ノイズも小さく抑えられ、快適性も向上している。また高速道路への進入でフルに加速したいときは、ATは3000〜4000rpmの間でエンジン回転数を上下させながらシフトアップする。このようにエンジンの変更とATの7速化によって動力性能を進化させた。

インストルメントパネル

水平基調のシンプルデザイン。空調操作パネルに加え、かつてはシルバー加飾だったシフトレバー周辺のパネルも光沢ブラック仕上げとして質感を高めている。ダッシュボード全体がブラック基調なのも変更点。

サスペンションの設定は以前と共通だが、新旧モデルを乗り比べると、新型では操舵に対する反応が少し正確になった。乗り心地は荷物を積んでいない時は硬めだが、突き上げるような粗さは抑えられた。居住空間では、スパイナルサポート機能付きフロントシートが全車に装着された。シートが乗員の背中から大腿部にフィットするようにデザインされ、腰の支え方を改善している。

改良前に比べると身体が座面に沈みにくく、足まわりの設定と相まって座り心地が硬くなった印象を受ける。それでも長距離の移動では、改良後のシートが快適だ。開発者は「ワンボックスボディの商用車は、軽商用車と違って、長距離の移動も多い」という。改良後のシートも、キャラバンの使われ方を考えて開発されている。

居住性

安全装備も充実しており、衝突被害軽減ブレーキや標識検知機能、車線逸脱警報は全車が標準装着している。移動物の検知機能を備えたインテリジェントアラウンドビューモニター、液晶タイプのインテリジェントルームミラーも、グレードに応じて標準装着、あるいはオプション設定とした。

うれしい装備

スライドドアは後方から身体で押すことでも閉めることができる。両手が荷物でふさがっている場合に便利な機能だ。
マイナーチェンジ発表      22年2月28日発表
月間販売台数             1645台(22年7月〜12月平均値)
WLTCモード燃費             11.3km/l ※バン2WDのディーゼルエンジン

ラゲッジルーム

以上のようにキャラバンのディーゼルは、動力性能、静粛性、ノイズ、安全装備などがバランス良く改善され、ビジネスによる移動の安全性と快適性が高められた。運転感覚が乗用車のミニバンに近付いたから、アウトドアライフなどのために購入する一般ユーザーにとっても、選びやすくなっている。

※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.147「2023 国産新型車のすべて」の再構成です。

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