スバルのニューモデル『クロストレック』はソロキャンプ、ファミリーキャンプの荷物も積める本格仕様! 新型アイサイトで家族も安心!

2022年12月に発売されたばかりのクロストレックに試乗することができた。先代「SUBARU XV」の頃から気に入っていたのは使い勝手の良いパッケージとタフな動力性能。「先代XVから、更に安全性能、ロングドライブ性能を高め、アウトドアによりでかけたくなるようなクルマに進化した」 という新型クロストレックで、試乗からソロキャンプまで欲張ってみた!
REPORT:宮崎正行(MIYAZAKI Masayuki) PHOTO:高柳 健(TAKAYANAGI Ken)

ラインナップで一番オシャレ?

先代モデルにあたる「SUBARU XV」はとても出来のいいクルマだった。欲張るところは欲張って、でもデイリーユースで持て余さないジャストなコンパクトサイズは守る。そんな明快な開発コンセプトに共感したユーザーもきっと多かったはずである。

それでいて悪路での走破性やタフネスさなどスバルらしいグッドポイントはしっかり抑えてあり、さらには……小声で言うが「スバルのラインナップで一番オシャレでしょ」というべきスタイリングとカラーがSUBARU XVらしさを引き立てていたからだ。

そんなSUBARU XVが昨年末にモデルチェンジの発表をした。車名はSUBARU XVから「クロストレック」へ。寒さに凍えたウインターシーズンが明けて待望のキャンプシーズンが到来したいま、新型の乗り味を確認することとファミリーキャンプへ行くためのロケハンを兼ねてソロキャンプへと向かったのである。まあざっくばらんに言えば、公私混同?(笑)

11.6インチディスプレイのデカさよ!

早朝の乗車前、今日はひとりだけど4人ぶんのキャンプ道具を想定しつつそれらをトランクルームに詰め込んでエンジンスタート。戸外はまだまだ静かだが、シックなブラックで統一された車内はよりいっそう静寂に包まれている。

今日の行き先をナビに設定しようと相対したインパネの画面……デカい! しかも横長ではなく縦長にレイアウトされているのが新鮮だ。ただ大きいだけでなく、必要とする情報が理知的にレイアウトされているのが嬉しいし実際の操作性もいい。

「Limited」に標準装着される11.6インチセンターディスプレイ&インフォテインメントシステムは大型で高精細なディスプレイに各種の車両設定やエアコンを集中して管理。USBやBluetoothを経由したオーディオプレーヤー接続やApple CarPlay、Android Autoにも対応している。

この11.6インチセンターディスプレイ&インフォテインメントシステムの見やすさと使いやすさは画期的で、触れば触るほどその良さを実感する。

自然なハンドリングにはダルさも過敏さも皆無。ハンドルを切った分だけ行きたい方向にノーズが入ってくれる。操作系のインターフェースも上質だ。

あえてのFWDチョイス

今回試乗したクロストレックだが、仕様はあえて四駆(AWD)ではなく今回から新たにラインナップに加えられた「二駆(FWD)」をチョイスしてみた。スバルの作る四駆の出来が悪いはずもなく、ちょっとした猜疑心(イジワル心だね)もあって「FFでどのくらい行けるんだ?」というトライをしてみることに。

FWDでも最低地上高も200mmとしっかり取られていて、本格的なアウトドアでも問題なく使える。

スバルだったらやっぱり四駆でしょ!……との声も聞こえてきそうだが、たまにしか行かないキャンプのために四駆を選ぶのも悩みどころ。アクティブに使い倒すならもちろん四駆の走破性が頼もしいが、使用頻度がそれほど多くないユーザーにはFWDでも走破性は十分と言えるだろう。

クロストレックのボディデザインは写真よりもずっと張りがあって大きく見える。それでも車幅は1800mmなのでタイトな箇所が多いキャンプ場へのアクセス路でも問題なし。

新型アイサイト/大学といっしょに開発したシートで安心ラクチンドライブ

アイサイトではおなじみのステレオカメラに加えて広角単眼カメラも追加。3つのカメラに進化し、視野角が従来の約2倍になったため、左右からの急な飛び出しなどにもさらに対応ができるようになった。

クロストレックでやはり忘れちゃいけないのがスバル独自の運転支援システム「アイサイト」のこと。事故の起きやすい交差点では、進化したアイサイトが安全なドライブを手助けしてくれる“もうひとつの眼”の働きをしてくれる。

だから初めての道や疲れた帰路も、よりセーフティなものにしてくれるのだ。いや、むしろ疲れないためにサポートしてくれるのがアイサイトの長所とも言えるな。……なんだ、家族の一員のようなクロストレックとドライバーは結局、守り守られるイーブンな関係ということなのか。

キャンプ場への往路、高速道路に乗るまでのさして広くない街中の交差点。全長4480mmのクロストレックはスルリと向きを変える。フットワークの軽さがドライバーの気持ちも自然にライトに。さらに、作動領域が拡大した3つのカメラのおかげで、曲がった先にクルマやバイク、歩行者がいないかなど過度に心配する必要がないので、安心して運転を愉しむことができる。

そして、信号待ちで「これ、いいな」と思ったのはドライバーズシート。大きめなキャパシティとパンッと張った接触面が全身をしっかりとホールドしてくれるし、そのポジションを正確にキープしてくれるので疲れをほとんど感じない。
フロントシートは骨盤をしっかりと支える構造により、車体の揺れが頭部に伝わることを防いでいるという。そのことで結果的に三半規管で感じる振動も大幅に軽減されるため、クルマ酔いしにくい構造になっている。なるほど、確かにその効果は実感できた。

たっぷりとしてボリュームのある運転席と助手席のシート。医学的な見地から骨盤を効果的に支える構造が謳われているが、筆者にとっては一体感が強いことがなにより質実に感じられた。
外観の印象から低く感じられたルーフの高さだが、実際には意外と頭上スペースに余裕がある。車体が揺れにくい「フルインナーフレーム構造」によってリアシートの居住性も向上している。

聞けば群馬大学医学部との産学協同によるメディカルなアプローチで設計された一品とのこと。とかく「日本車はシートが……」と言われたのも今は昔、スバルが世界に問うスタンダードとしてデザインされたシートの出来はかなりの高得点だった。

気持ちのいい直進安定性を感じながら一路、緑深い山奥のキャンプ場へ。アイサイトとツーリングアシスト機能のおかげで疲れ知らず。

ハイウェイでは全車速追従クルーズコントロールができるアイサイトのツーリングアシスト機能がとても便利だ。遠出の際に現地に着くまでに疲れてしまうことも避けられるし、一方、疲れた帰り道ではミニマムな体力で安全に移動が行える。
空いたハイウェイから流れのスムーズな県道を経て、キャンプ場への道はだんだんとタイトになっていく。それでも全長4.5mを切る全長と全幅1.8mのほどよいボディサイズのおかげでワクワクした気持ちで運転し続けられる。

予想を超えてかなり勾配がキツかった山道をクリアして目的のキャンプ場に無事到着。

クロストレックには全車にハイブリッドエンジン「e-BOXER」が搭載されているが、ドライビングを続けているとそれは単に燃費アップを狙ったものでないことがジワジワとクルマから伝わってくる。モーターと内燃機関を巧みに使い分けることで、スペックから想像するよりもはるかにパワフルでシャープな走りが楽しめるからだ。

クロストレックは全身キャンプ仕様

かなりしっかりと装備してのぞんだソロキャンプだったが、後部座席のシートバックを倒さずともこれだけの装備を積むことができた。ルーフボックスを装着すれば遊び道具はもっと充実できる。
後部座席のステップには“山並み”がモチーフのテクスチャー。「お!」と思わせてくれる小さな仕掛けにほくそ笑む。クロストレックが含んでいる遊び心が分かりやすいサイドシルプレートだ。
傷付き防止や滑り止めの機能を満たすために、上のカットで紹介した山並みテクスチャーはラゲッジルーム開口部にも反復されている。仕切りが低く開口自体も大きいので使いやすい。
ソロキャンプにはちょっと大きすぎるテントの設営が終わり、ホッとひと息のタイミングでコーヒーを淹れる。春になって日が伸びたおかげで、まだ太陽が高いのがうれしい。

世界のSUV市場で勝ち抜くために

最新のSGP(スバルグローバルプラットフォーム)が車体の基本構造を成している新型クロストレック。前後バンパーのラギッド感や左右フェンダーの張り出し感を増すなどのイメチェンとともに、細部のブラッシュアップには事欠かない。それでも全体から受ける印象はSUBARU XVの美点だった「ポップさと質実さ」をしっかりと受け継いでいるように感じられたことは、単純に嬉しかった。

オートキャンプのいいところはたくさんあるけれど、自分が気に入って選んだ相棒、愛車がいつにも増して間近に感じられることも、そのうちのひとつかもしれない。クルマ好きならなおのこと。

クロストレックは多くのライバルがひしめくSUV市場での存在感を醸すために、オフローダーとしての輪郭をより際立たせてきている。その一方で、今回試乗したFWDモデルのようにライトユーザー向け仕様の導入にも積極的だ。クロストレックが裏切らない“悪路での走破性”は、このFWDモデルにもきちんと盛り込まれている。今回の試乗ではそんなクロストレックの全方位的なキャラクターが、道が不案内な郊外での心細さを積極的に和らげてくれた。うーん、頼もしい!

アウトドアへ繰り出す背中を後押ししてくれるスバルカー、クロストレック。「次はオイラも絶対に家族といっしょに来るぞ」と静かに誓いを立てた筆者なのでした。……ま、ソロキャンプもかなり楽しいけどね!

スバルオフィシャルサイト:クロストレック

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著者プロフィール

宮崎 正行 近影

宮崎 正行

1971年生まれ。二輪・四輪ライター。同時並行で編集していたバイク誌『MOTO NAVI』自動車専門誌『NAVI CAR…