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2023年4月23日(日)に富士スピードウェイ(静岡県)で開催された「モーターファンフェスタ 2023」の自衛隊ブースに展示された7種類の車両は以下のとおり。また、以下に加えて偵察用オートバイも展示されていた。
1/2t(小型)トラック 高機動車 1 1/2tトラック 軽装甲機動車(LAV) 87式偵察警戒車 96式装輪装甲車 16式機動戦闘車
軽装甲機動車(LAV)や高機動車については上記などで紹介しているが、今回は「1/2t(小型)トラック」(以下、1/2tトラック)について触れてみよう。展示車両の中では小さく地味めなクルマだが、それだけに一般ドライバーからすると意外に近しいクルマだったりするのだ。
先代は1973年に採用された三菱「ジープ」
第二次世界大戦でアメリカ軍の軽車両として「JEEP(ジープ)」が活躍したのはあまりに有名な話。戦後、日本のモータリゼーション黎明期において、このジープは三菱とウィリスオーバーランド社の提携によりノックダウン生産され、今なお根強い人気がある。
三菱ジープはトヨタ・ジープBJ型(後のランドクルーザー)、日産4W60型(初代パトロール)との競争入札に競り勝ち、1953年に警察予備隊(後の自衛隊)に正式採用され、「1/4tトラック」として長らく愛用された。
1/4tトラックはショートホイールベース車だったが、1973年に1/4tトラックの後継にミドルホイールベース車を「73式小型トラック」として制式採用している。
1/4tトラックの採用から73式小型トラックの採用まで20年が経過しているが、73式小型トラックもまた20年以上を自衛隊の車両として活躍していくことになった。
パジェロの採用は新型導入ではなくあくまで”更新”だから名称はそのまま
そして1996年、自衛隊車両として公道を走る以上排ガス規制から逃れることはできず、いよいよ73式小型トラックも代替する必要に迫られたのだがそこで採用されたのが二代目の三菱パジェロだった。
ただ、この代替わりは自衛隊内ではあくまで従来の装備の”更新”であり新装備の”採用”ではなかったことから、全く新しいクルマになったにも関わらず「73式小型トラック」という制式名は変わらなかったのが面白い。
とはいえ、1996年に更新された装備がいつまでも「73式(=1973年採用)」というのもおかしなもので、2003年以降は「1/2tトラック」に変更され今に至っている。
面影を感じられないこともないが、ぱっと見では1/2tトラックがパジェロには見えない。また、自衛隊車両の常ではあるが、生産メーカーがどこなのかもわからない。自衛隊車両には必ず付けられている銘板に記載されてはいるのだが、それ以外で判別することは難しい。
しかしよく見ると、1/2tトラックはフロントグリルの中央に三菱のエンブレムであるスリーダイヤモンドが据えられていた。また、縦長のスリットはいかにも”ジープ”の後継を感じさせる一方で、本家に7本スリット対して6本になっているのは何か意味があるのだろうか?
パジェロはなくとも岡崎製作所で今なお生産中
もちろん「パジェロ」はあくまでベース車両であり、自衛隊専用に作られている。ちなみにベースはショートボディで、フレーム後端を延長し、重積載に備えリヤサスペンションをリーフスプリングリジッド(パジェロは3リンクリジッド+コイルスプリング)に変更している。なお積載重量は440kgとされ、それが「1/2t」の名称の由来だ。
エンジンはパジェロ同様に4M40型2.8L直列4気筒SOHC16バルブインタークーラーターボディーゼルを搭載したが、2014年以降に納入された車両は4N15型2.4L直列4気筒DOHC16バルブインタークーラーターボディーゼルに変更された。このエンジンはトライトンや海外向けのパジェロスポーツに搭載されるもので、国内モデルには搭載されていない。また、4M40エンジン(125ps/2800rpm※自衛隊仕様)搭載車と性能を揃えるためにデチューンされているという(元来は181ps/3500rpm)。
タイヤサイズは215/85R18で、これは同年代のパジェロ「2ドアJトップXS」(幌車)のサイズで、主流グレードで装着された265/70R16とはかなり印象が異なる。
装着されていたタイヤはヨコハマの「SUPER DIGGER 817」だが、これはすでに市販されておらず実質自衛隊専用タイヤだ。
二代目パジェロは1999年に三代目へとモデルチェンジされており、かろうじて海外市場向けに2002年まで販売された。さらに2006年に四代目へとモデルチェンジ。2021年まで生産されたもののこれが最終モデルとなり、現在ではパジェロ自体が三菱のラインナップに存在していない。
パジェロの生産終了に伴い生産工場である三菱の岐阜製作所が売却されたのが2022年のこと。パジェロ同様に岐阜製作所で生産されたいた1/2tトラックはどうなったかというと、現在は岡崎製作所に設備を移管して継続生産されている。
最新のアウトランダーPHEVやデリカD:5を生産している工場で、二代目パジェロ(をベースにした1/2tトラック)が生産されているというのも感慨深いものがある。
搭載エンジンなどマイナーチェンジを受けているとはいえ、1991年発売の二代目パジェロをベースとした1/2tトラックも1996年の採用からすでに27年。先代、先々代のジープを上回る年数に達している。はたして次期モデルへの移行はあるのか? パジェロなき今、どうなるのか気になるところだ。
前期?後期?所属部隊? 1/2t小型トラックまちがい探し!
前述のとおりすでに27年も使われている1/2tトラック(73式小型トラック)だけに、納入時期により仕様が変わっているほか、使用目的や所属部隊によっても違いがある。
モーターファンフェスタ2023にも2台の1/2tトラックが展示されていたが、上の3枚の写真と下の3枚の写真はどちらも1/2tトラックだが、それぞれどこか違うのかおわかりになるだろうか? わかった人は相当な自衛隊ファンであると言えるだろう。クルマなのでナンバープレートが違うというのはナシで。
まずフロントまわりではボンネットが違っている。上のクルマはボンネット上にインテークダクトがあり、下のクルマにはない。インテークダクトの奥にはインタークーラーがあるのだが、下のクルマは2014年以降に納入されたインタークーラーがフロントグリル下部にある4N15エンジン搭載車なのでボンネット上のダクトがなくなっているのだ。
また、左フロントフェンダー上のラックの有無が異なっている。上のクルマにはなく下のクルマにあるこのラックだが、無線機のアンテナを立てる架台だ。無線機のアンテナは2本立てるのだが、後方に2本立てるか後方とこのフェンダー上に1本ずつ立てるかのパターンがある。
リヤまわりでいえば上のクルマには左右に大きなアンテナが立っているが、下のクルマは台座のみになっている。これは上のクルマは後部座席に大型の無線機が搭載されているからで、そのため本来は6名乗車(下のクルマ)のところ5名乗車になっているという違いもある。
最後に、前後のバンパーにある漢字が異なっている。上のクルマの「機教-本」と下のクルマの「普教-本」はそれぞれ所属部隊を表している。
「機教-本」は「機甲教導連隊本部管理中隊」で、「普教-本」が「普通科教導連隊本部管理中隊」だ。要は前者が戦車や装甲車などがメインの「機甲部隊」、後者が「歩兵部隊」という違いなのだ。
1/2t(小型)トラック 定員:6名 サイズ(全長×全幅×全高):4140mm×1760mm×1970mm 重量:1.94t エンジン:直列4気筒インタークーラーターボディーゼル(4M40型:SOHC2.8L/4N15型:DOHC2.4L) トランスミッション:AT 駆動方式:スーパーセレクト4WD サスペンション(前/後):ダブルウィッシュボーン+トーションバースプリング/リーフスプリングリジッド 最高速度:135km/h 武装:5.56mm機関銃MINIMI 製造:三菱自動車
普段はなかなか見ることができない自衛隊のクルマだが、こうしてマジマジと見てみるといろいろな発見があって面白い。まして、そのベースが一般市販車であるならなおさらだ。
モーターファンフェスタをはじめ各種イベントで展示されている車両を見る際にはよく観察してみてはいかがだろうか? 解説役の自衛隊員から面白い話も聞けるだろう。