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第1回でオイル交換をしたNB型ロードスターだが、バッテリーも寿命を迎えている。そこで「DIY派はこれを揃えてお工具!」のDIY整備の実践編第2回として、今回はバッテリー交換の模様をお届け! ただ単にバッテリーを取り替えるだけでなく、作業時の注意点やあると便利な工具、やっておきたいプラスアルファの作業なども紹介しよう。
バッテリー構造と交換の目的および寿命について
今さら言うまでもないが、バッテリーはエンジンの始動をはじめ、ヘッドランプ やブレーキランプなどの灯火類、カーオーディオやカーナビ、ワイパー、パワーウインドウなどのクルマの電装系に電力を供給するために不可欠なパーツである。
乗用車に広く普及している12Vの鉛バッテリーは、鉛蓄電池の1セル(層)あたりの公称電圧が約2Vとなることから6セルを直列に並べて12Vとしている。1つのセルの内部には、プラスとマイナスの極板が交互に重なっており、極版は両極とも同じ構造をしており格子状の薄い金属にペースト状の鉛と二酸化鉛が塗布される。また、両極の間には絶縁のためセパレーターが挟まれており、各セルの中には電解液である希硫酸が収められている。
バッテリーは通常時は電解液の中で希硫酸が水素イオンと硫酸イオンに電離して、それぞれがプラス極とマイナス極の周りに集まっているのだが、接続した導線に負荷がかかると硫酸イオンの電子がマイナス極から導線を経由し、プラス極へ移動して水素イオンと化合しようとする。この化学反応によって電流が発生する。そして、蓄電時にはこれとは逆の化学反応が起こるのだ。
そんなバッテリーも充放電を繰り返すことで徐々に劣化していく。寿命は使用環境によっても異なるが、おおよそ2~3年程度とされている。バッテリーが劣化するとヘッドランプが暗くなったり、パワーウインドウの昇降が遅くなったり、エンジンの掛かりが悪くなったりする。
ズボラで貧乏性な筆者はバッテリー上がりが頻繁に起こるようになってから新品へと交換する(だいたい4年くらいは保たせている)。設計の古いロードスターや旧車のアルファロメオはそれでも問題はないが、電装アクセサリーの多い最近のクルマは、こうした症状が現れたら早めに交換しないと装備が誤作動を起こしたり、機能しなくなったりするから注意が必要だ。
バッテリーの選び方
バッテリーは車種やグレード、仕様に応じて適したバッテリーを選ばなければならない。JIS規格の場合は、「55B24L」のように2桁の数字・アルファベット・2桁の数字・アルファベットの順番で表記されている。
頭の2桁の数字は「性能ランク」を示しており、サイズが大きくなるほど容量が大きくなる。次のアルファベットはバッテリーの幅と高さによるサイズを規格化したもので全部で8種類あり、「A」→「H」の順番で大きくなる。そして、次の2桁の数字はバッテリーの長さをセンチメートルで表したものだ。最後のアルファベットはプラス端子とマイナス端子の極性位置を示したもので、バッテリー上面をプラス側短側面から見てプラスが左にあると「L」、右にあると「R」と表記される。
ほかにもアイドリングストップ車専用、ハイブリッド車専用、欧州車用のEN・DIN規格など車種ごとに表記はことなる。販売店に聞くか、ネットで検索すれば適合を調べることができるが、いちばん簡単なのは現在車両についているバッテリーの形式番号を確認することだ。
バッテリー交換に使用する工具
近頃のバッテリーはメンテナンスフリー化が進んだこともあり、バッテリー液の定期補充がいらなくなった。バッテリーのメンテナンスと言えば、バッテリーが寿命を迎えたときに、古いバッテリーを取り外して新品へと付け替えることくらいで、誰にでもできる簡単な作業だ。
今回作業するNB型ロードスターや旧車のアルファロメオのような設計の古いクルマならとくに注意すべきところもない。だが、電子制御機器が増えた最近のクルマの場合、カーナビやオーディオ、ECUなどの電子メモリーを保存するため、作業時に「メモリーバックアップ」などの補助電源を使用する必要がある(今回は使用していない)。
バッテリー交換作業:取り外し
最初の作業は古いバッテリーのステーを外す作業だ。作業はエンジンを切った状態で行う。バッテリーから発生する水素ガスに引火・爆発する恐れがあるため、交換作業中の火気は厳禁。タバコを吸いながらの作業は論外として、誤って工具をプラス端子をマイナス端子や車体に接触させてしまいショートさせることがないように注意が必要だ。
NB型ロードスターの場合は、重要配分を最適化させるため、トランクの手前右側下にバッテリーが備わる。トランクのカーペットを捲ればバッテリーが顔を出す。固定のための金属製ステーはトランク壁面から床へと伸びる1本の金属製の棒だ。壁面はステーは差し込まれているだけなので、床面の17mmのボルトをラチェットハンドルとソケットで外せばバッテリーがフリーとなる。
バッテリーの固定用ステーを外したら、次は端子の固定のボルトを緩める。端子を外す順番はマイナスから行うのが鉄則だ。端子の固定には10mmのボルトが使われている。
車種によっても端子の固定方法は異なるが、ロードスターのように作業のためのクリアランスが確保されていなかったり、ロングボルトのステーにナットで固定されていたりと、メガネレンチが使えないケースがほとんどだ。締結トルクも小さく舐める心配がないので、一般的にはスパナやコンビネーションレンチの片口側を使用する。なお、ロードスターは固定ボルトを抜かずとも緩めるだけで端子が外れる。
マイナス端子が外れたら、次は保護カバーを捲ってプラス端子を外す。作業はマイナス端子を外すのと同じ手順だ。このときに工具をマイナス端子や車両の金属部分に接触させないようにしなければならない。間違って接触させてしまうと大きな電流が流れてショートしてしまい危険だ。なお、エーモンからは「ショート防止2wayレンチ」というゴム被膜で覆った専用のレンチが販売されている。こちらを使うとより安全に作業ができるようだ。
マイナスとプラスの端子が外れたらバッテリーに繋がるビニール製のホースを外す。これはバッテリーの内圧が上がったりなどしてバッテリー液があふれたときに出てくるホースだ。そして、接続されたパーツがすべて外れたら慎重に古いバッテリーを上方へと引き抜く。作業時にはバッテリーを常に水平に保つように注意しよう。バッテリーを横倒しにするとバッテリー液が漏れたり、飛び散ったりする可能性がある。中に入ったバッテリー液は希硫酸であり、目に入ったり、肌に触れると怪我の元だ。
筆者は日頃から眼鏡をかけており、バッテリー交換は手慣れた作業なのでしていないが、心配な人はゴーグルや厚手のビニール手袋を装着してから作業に臨んだ方が良いだろう。万が一、バッテリー液が目や肌に触れた場合は、大量の水で洗い流し、直ちに病院で診察を受けよう。
バッテリーを外したらバッテリーの下に置かれていたトレイやパネル部分をチェックする。この部分は漏れ出したバッテリー液や侵入した雨水によって錆などで腐食していることが多々ある。作業車のロードスターもトレイ下にあるパネルの表面が若干錆が浮いていたのでワイヤーブラシで掃除してワックスをかけておいた。
バッテリー交換作業:取り付けと廃バッテリーの処分
古いバッテリーを抜き、バッテリーのトレイやパネルを掃除したら新品のバッテリーへと積み替える。あとは先ほどとは逆の手順でバッテリー端子やステーを元に戻すだけだ。注意すべきは1点だけ。取り外しはマイナス側からの端子から外したが、取り付けるときはプラス側の端子からとなる。
外した古いバッテリーは、ディーラーや整備工場、カー用品店、ガソリンスタンドなどで引き取ってくれる。というのも、廃バッテリーはリサイクル需要があり売れるからだ。解体屋や産廃業者、非鉄金属回収業者の中には1個からでも買い取ってくれるところもある。1点数百円程度と買取金額は高くはないが、もし近くにそのような業者があるのなら持ち込んでも良いだろう。
バッテリー交換はオイル交換と違って作業場所の確保に頭を悩ませることはなく、手順さえ守れば初心者でも安全かつ簡単にできるDIYメンテナンスだ。次回のバッテリー交換の際にはトライしてみてはいかがだろうか?