マツダのラージ商品群第一弾、CX-60の姿を街で見かけることが増えてきた。販売実績はどうだろう?
月 | 2022年9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 2023年1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 |
販売台数 | 813台 | 1738台 | 1405台 | 1304台 | 3023台 | 4375台 | 4313台 | 2101台 | 897台 |
月販目標台数は2000台だ。
2022年度(~2023年3月)の販売台数が1万7475台。2023年4月2101台、5月が897台。ここまでの合計が2万0473台。22年10月くらいから納車が始まったとするなら、8ヵ月でこの台数だから月販2559台で、目標をクリアするところからスタートしたわけだ。現在の工場出荷時期の目処は1~2ヵ月とHPで案内されている。生産が軌道に乗れば、さらに販売台数を伸ばせるかもしれない。
さて、今回試乗したのは、2.5L直4ガソリンエンジン搭載の「25S」である。ご存知の通り、CX-60は
2.5L直4ガソリン+8AT
3.3L直6ディーゼル+8AT
3.3L直6ディーゼル+48V MHEV(8AT)
2.5L直4ガソリン+PHEV
の4つのパワートレーンをラインアップにもつ。下に行くほど上級・高価になる今回の25S S Packageは、CX-60のエントリーモデル(最廉価モデル)である。2WD(FR)なら、なんと300万円切りの299万2000円だ。今回の試乗車は4WDなので、22万5500円高で321万7500円だ。
CX-60は、マツダの未来を担う「ラージ商品群」の第一弾だ。後輪駆動ベースで、直6エンジン(日本はディーゼルのみだが、SKYACTIV-X、ターボの登場も予告されている)が話題になった。
さて、25S S packageだ。じつは、この試乗車で東京~鈴鹿サーキット往復を含む約900kmを走った。往路は、ジャーナリスト世良耕太さんが集中豪雨による通行止め、大渋滞のなかをドライブしてくれた。
まずは、外観。18インチホイール(上級グレードは20インチ)を履くが、見た目で「最廉価版」だと意識させられることはない。乗り込んでも、凝りに凝った上級グレードとは違うが、これはこれで、シンプルで悪くない。少なくとも安っぽくはない。
筆者が担当したのは、復路+東京近郊の430kmだ。
走り出すと、大柄なボディとそれなりの車重(1720kg)に対して、2.5L直4SKYACTIV-G2.5の188ps/250Nmがやや力不足感であることを感じさせられる。高速道路への流入加速、追い越しではかなり深くアクセルを踏む必要がある。そして、その場合は、エンジンがかなり唸るのだ。
巡航時の静粛性は上級モデル譲りだが、余裕には乏しい。なにせ、直6ディーゼルターボのパワースペックは231ps/500Nmなのだ。その走りを知った身からすると、25Sはもの足りない。
48Vマイルドハイブリッドシステムを積まない(エントリーモデルから当然だ)から、アイドルからの再始動もショックは大きめ。また、なぜか2~4速あたりでの変速ショック、ギクシャク感も気になった。
ボンネットフードを開けると、ずいぶん奥(バルクヘッド側に食い込んだカタチで)にSKYACTIV-G2.5は載せられているのがわかる。これがクーペやセダンならフロントミッドシップに近い位置に、ということになるのだろうが、なにせ車重が1720kgもある大型SUVだ。
前後重量配分はF53.5:R46.5
ちなみに、直6ディーゼル搭載のFRモデル(XD Exclusive Mode)は車重1840kgで前後重量配分はF54.3:F45.7だ。
いつか、ラージでセダン(つまり次期MAZDA6?)やクーペが登場したときに、もっと軽い車重でこの位置にSKYACTIV-G2.5を積むエントリーグレードがあったら魅力的だと思うが、CX-60にはこのエンジンは力不足だと思う。
ボディ剛性の高さは、上級グレードでもエントリーグレードでも変わらない。ボディの造りは基本的に同じだからだ。だから通常は「素の魅力があるエントリーグレード」が大好きなのだが、CX-60に関しては違った。
そもそもCX-60に2.5L直4ガソリンエンジン搭載モデルが必要なのか? 300万円を切る価格はなるほど魅力的で、ディーラーに人を引き寄せてくれるかもしれない(それがこのグレードの役目なのかもしれない)。が、これがCX-60の目指す、言い方を変えればラージ商品群が提示する世界観を表現できているか、少し疑問が残る
ディーゼルアレルギーの方向けにガソリンモデルを設定しておかないと、というなら、欧州に導入予定の直6SKYACTIV-X、あるいは北米向けの直6ガソリンターボを設定した方が、「マツダのラージ」をよりわかってもらえるのではないか。価格は高くなるかもしれないが、価格以上の価値を提供できる自信がいまのマツダにはあるはずだ。
マツダには、CX-5という非常に良くできた美しいSUVがある。2.2L直4ディーゼル(SKYACTIV-D2.2)という魅力的なエンジンを搭載したCX-5(XDスマートエディション)の4WDモデルが331万6500円で買える。筆者なら、CX-60 25Sならこちらを選ぶ。
それ以前に、3.3L直6ディーゼル搭載のFRモデルXDなら323万9500円だから、(4WDが必須でないなら)XDのほうが、より「濃い味」が楽しめると思う。
CX-60で25Sを筆者が選ばない理由のもうひとつに、燃費がある。今回433km走って燃費は13.5km/Lだった。WLTCモード燃費が13.1km/Lだから実力通りの燃費性能だが、つねに「抜群の燃費性能を発揮してくれるマツダ」としては物足りない。
直6ディーゼルのXD(FRモデル)を試乗したときの燃費は996.2km走って19.2km/L(モード燃費は19.6km/L)だった。
燃料費を考えてみる。軽油=146円/L、レギュラーガソリン=166円/Lで計算してみる。
25S(4WD)の13.5km/Lは12.3円/km
XD(FR)の19.2km/Lは7.6円/km
その差は4.7円/kmだ。
年間1万km走った場合の燃料代の差額は年間47000円、5年間で5万kmなら23万5000円
年間1万2000kmなら年間56400円、5年間で6万kmなら28万2000円である。
排気量に連動している自動車税は、25Sなら年額4万3500円、XDが5万7000円で差額は1万3500円、5年間で6万7500円となる。重量税やほかにもいろいろ要素はあるが、
5年5万kmなら燃料代の差額ー自動車税の差額=16万7500円
5年6万kmなら燃料代の差額ー自動車税の差額=21万4500円
となる。
25S S Package:321万7500円(4WD)
XD:323万9500円(FR)
の価格差は2万2000円。
4WD同士(XD 4WD346万5000円)なら24万7500円だ。
燃料代、自動車税を考えると、24万7500円の価格差は「誤差範囲内」ではないか。となれば、筆者なら300万円台前半という予算なら直6ディーゼルのXD(FR)を選ぶ。4WD必須でも燃料代で取り戻せるから直6ディーゼルを選ぶ。なによりも500Nmの直6エンジンの魅力は大きい。
というわけで、CX-60を選ぶなら、エントリーモデルは直6ディーゼルのXD(FR 323万9500円)、というのが今回の結論だ。
マツダCX-60 25S S Package(AWD) 全長×全幅×全高:4740mm×1890mm×1685mm ホイールベース:2870mm 車重:1720kg サスペンション:Fダブルウィッシュボーン式/Rマルチリンク式 駆動方式:AWD エンジン 形式:直列4気筒DOHC 型式:PY-VPS型(SKYACTIV-G2.5) 排気量:2488cc ボア×ストローク:89.0mm×100.0 mm 圧縮比:13.0 最高出力:188ps(138kW)/6000pm 最大トルク:250Nm/3000rpm 燃料供給:DI 燃料:レギュラー 燃料タンク:58ℓ トランスミッション:トルクコンバーターレス8AT 燃費:WLTCモード 13.1km/ℓ 市街地モード10.4km/ℓ 郊外モード:13.1km/ℓ 高速道路:14.8km/ℓ 車両本体価格:321万7500円(オプション:地上波TVチューナー3万3000円、セーフティパッケージ9万9000円、シースルービューパッケージ9万3500円、ドライバー・エマージェンシー・アシストパッケージ7万7000円、ドライビングポジションサポートパッケージ8万2500円、パワーリフトゲートパッケージ8万2500円、BOSEサウンドシステム+12スピーカー8万2500円)オプション込みの価格は376万7500円