なにがスゴい?トヨタの次世代eAxle(イーアクスル)「小型化すれば航続距離が伸びる」

トヨタが開発中のeAlex
電動化、知能化、多様化を掲げるトヨタの技術戦略。次世代電池と並んでキーとなるeAxle(イーアクスル=走行用モーターとインターバー、トランスアクスルを一体化したユニット)も進化する。トヨタは、小型化すれば航続距離も伸びるというが、どうしてだろう?
TEXT:世良耕太(SERA Kota)

小型eAxleを採用するとクルマのパッケージングが変わる

トヨタ自動車は6月8日、「トヨタテクニカルワークショップ2023」を東富士研究所(静岡県裾野市)で開催し、モビリティカンパニーへの変革を支える電動化、知能化、多様化を支える新技術を報道陣に公開した。

「風が吹けば桶屋が儲かる」の論法ではないが、eAxle(イーアクスル)を小型化すれば航続距離が延びるとトヨタは説明する。eAxleを小型化することによって車室や荷室空間を拡大しながら、空気抵抗低減が可能な形に設計することが可能になるからだ。要するに、デザインの自由度が高まるというわけだ。

eAxleは走行用モーターとインバーター、トランスアクスル(減速機)を一体化したユニットである。トヨタは先のワークショップで、「これまで培ってきたモノづくりの要素技術で、BEV(電気自動車)の商品力向上につなげます」と宣言している。eAxleの小型化もそのひとつ。「HEV(ハイブリッド車)の開発で培ってきたBluE Nexus(ブルーイーネクサス)、アイシン、デンソー、およびトヨタ内製の技術をフル活用して開発中」だと伝える。

BluE Nexusはアイシン(45%)とデンソー(45%)、トヨタ(10%)が共同出資して設立した会社で、トランスアクスルに強みを持つアイシンとインバーターやモーターに強いデンソー、車両目線でシステムアップできるトヨタが手を組み、知恵と技術を出し合っている。電動駆動モジュールから電動化システムまで幅広くラインアップをそろえており、技術コンサルティングから開発サポート、アフターサービスまで、こちらも幅広く手がけているのが特徴だ。

2019年4月に設立されたBluE Nexus初のeAxleが、トヨタの電気自動車(BEV)、bZ4Xに採用された150kW仕様(フロント用)と80kW仕様(フロント/リヤ用)だ。ワークショップにはbZ4Xのリヤに搭載する80kW仕様が展示されていた。

これがbX4XのeAlxe

その隣に展示されているのが開発中の小型eAxleであり、桶屋を儲からせる……ではなく、航続距離の延長に結びつくポテンシャルを秘めている。

写真を見れば一目瞭然、現行の80kW仕様に比べて格段にコンパクトになっているのがわかる。コンパクト化を実現したカラクリのひとつは、モーターの高回転化だ。高回転で使うことによりローター径を縮小することができているという。モーターを高回転化すると、それまでより大きな減速比が必要になり、一般論でいえばギヤは大きくなる方向だ。

これが次世代eAxle。より小さく、より高回転化される。回転数は2万rpm。当然減速機に高い減速比が求められるわけだ。また、インバーターも大幅に小型化されていることが見てとれる。
これがプラネタリーギヤを使う減速機。プラネタリーギヤを使うeAlexはフォードやZFが実用化している。トヨタもかつてテスラと協業していた際に開発したRAV EVではこのタイプを使っていた。

それを防ぐ狙いもあり、小型eAxleではプラネタリーギヤを使って減速している。小型eAxleの右横に展示してあるのが、プラネタリーギヤのサンプルだ。プラネタリーギヤの採用により軸の数を減らすことが可能になり、これもコンパクト化に貢献している。また、インバーターの体積も大幅に削減しているという。

eAlxeが小型になれば、さまざまなメリットがある。説明を担当していたエンジニアに「将来的にトヨタも電動車をRWDにするのか?」と訊いたら「その可能性も考えてはいる」と話してくれた。

図が示すように、小型eAxleを採用するとクルマのパッケージングが大きく変わる。空気抵抗を低減する外形デザインと居住性や荷室スペースを両立したパッケージングが可能になるポテンシャルを秘めている。空気抵抗が低減できれば、エネルギーのロスが減るので航続距離が延びる。だから、eAxleの小型化は航続距離の延長につながるというわけだ。

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著者プロフィール

世良耕太 近影

世良耕太

1967年東京生まれ。早稲田大学卒業後、出版社に勤務。編集者・ライターとして自動車、技術、F1をはじめと…