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低重心化&軽量化というスポーツカー作りの基本を徹底追求。車体剛性も大幅に向上
今夏発売予定の新型スバルBRZ、今秋発売予定の新型トヨタGR86。このたび、両車のより詳細な情報が公開されたので、その内容をご報告したい。
新型トヨタGR86と新型スバルBRZの開発において、課題となったのは以下の5項目だ。
- かっこいいデザイン
- 軽量化・低重心・シンメトリカル・前後重配、空力改善
- 車体剛性アップ
- 商品性向上のための重量アップと軽量化での重量相殺=現行と同レベルの重量
- GR86、BRZそれぞれにおいてより個性を引き出した走りの実現
3コートの鮮やかなレッドが新型GR86のイメージカラー
デザインに関してはすでに多くの写真が世の中に出回っているが、今回はカラーラインナップが明らかにされた。新型GR86、新型BRZともに7色展開で、そのうち2色が新開発されたカラー。1色は「サファイアブルーパール」と呼ばれる濃紺色で、もう1色が「スパークレッド(新型GR86)/イグニッションレッド(新型BRZ)」とメーカーによって呼び名が異なる赤色だ。この赤は、ベースの赤コートと高輝度の赤コート、そしてクリアコートの3コートとすることで、鮮やかさをより際立たせているのが特徴だ。
重心高は先代よりも4mmダウン。車重も先代同等を死守
新型の開発にあたって腐心したのが低重心化と軽量化だ。新型のボディサイズは全長4265mm、全幅1775mm、全高1310mmで、先代から全長が25mm長くなったほか、全高が10mm低くなっている。全高が低くなったのは低重心化を図るためで、ドライバーの着座高も5mm低められた。また、ルーフパネルをアルミ化したことでも重心高は1.2mm低下、それらの結果、重心高は先代より4mm低い456mmを実現した。さらに、カップルディスタンス(前席乗員の左右位置)も7.4mm近づけることで左右の重心位置も中央に寄せられており、キビキビしたハンドリングに貢献している。
車体骨格は先代を踏襲しつつ、SGP(スバルグローバルプラットフォーム)の要素を導入。フレームを先に溶接してからパネル類を溶接する「インナーフレーム骨格構造」により、軽量化と剛性向上を実現している。また、ステアリングギヤボックスやフロントサブフレーム、リヤスタビライザーの取り付け支持部の剛性強化も実施。それらの結果、車体のねじり剛性は50%アップしたほか、フロントストラット軸曲げ剛性が60%アップ、リヤサブフレーム剛性も70%アップした。
新型では衝突安全性能をはじめとする商品性の向上に伴い75kgの重量増が見込まれたが、それを相殺するレベルの軽量化を実現した。以下がその取り組みの一例だ。
- フロントフェンダーのアルミ化:−3.0kg
- フロントハウジングのアルミ化:−3.0kg
- ルーフパネルのアルミ化:−2.0kg
- フロントスタビライザーの中空化:−0.5kg
- マフラーの軽量化:−1.6kg
- フロントシートの軽量化:−2.6kg
- プロペラシャフトの軽量化:−1.1kg
先代オーナーから要望が多かったパワーアップを実現
先代は2012年の発売以来、多くのユーザーから愛されてきた。その中で、改善希望のポイントとしてもっとも多かったのが、エンジンのパワーアップだったという。新型トヨタGR86と新型スバルBRZではその声に応えるべく、エンジンを変更。従来の2.0L水平対向4気筒(FA20型)の排気量を0.4Lアップした、2.4L水平対向4気筒エンジン(FA24型)を搭載している。
FA20型のボア×ストロークは86.0×86.0mmだったのに対して、FA24型はボアを拡大した94.0×86.0mm。スペックはFA20型の207ps/最大トルク212Nm(ともにMT車)から最高出力235ps/最大トルク250Nmに引き上げられた。トルクの落ち込みもなく、リニアで高回転まで伸びのあるフィーリングを実現したという。なお、エンジン単体で比較すると、FA24型の方がFA20型よりも軽くなっているというから驚きだ(トータルではパワーアップに伴う冷却系の強化で新型の方が多少重い)。
また、エンジンサウンドの演出として「アクティブサウンドコントロール」が全車に採用された。3300rpm付近からエンジン回転数が高まるに連れて高次成分の音色が強調され、より回したくなるような気持ちの良いエンジンサウンドを聴かせてくれる。
動力性能は、先代から飛躍的に向上している。0-100km/h加速タイムは、先代が7.5秒だったのに対して新型は6.3秒に短縮された。また、ダブルレーンチェンジの通過限界進入速度も先代の89.6km/hから93.3km/hまで高められている。
AT車にアイサイトを装備するほか乗員保護システムも強化
スポーツカーとはいえ、安全性能の向上に関しても手抜かりはない。AT車にアイサイトが装着されたのは既報の通りだが、それ以外にも前突や側突に対応するためのボディの強化、乗員保護システムの強化(以下参照)が施されている。
- 斜め衝突対応のカーテンシールドエアバッグ採用
- 運転席ニーエアバッグ採用
- 助手席アダプティブベルト採用(シートのセンサーとコントロールユニットが乗員の体格を判定し、シートベルトの吸収荷重を最適化する)
- 後席シートベルトリマインダー追加
新型GR86はダイレクト、新型BRZはリニア。走り味の違いはより鮮明に
さて、今回は新型トヨタGR86と新型スバルBRZの走りの味付けの違いも明らかにされた。先代でも両車の走りの個性は差別化が図られていたが、新型ではそれがいっそう推し進められいてる。両車の走りの方向性を簡単に表すならば、新型トヨタGR86は「ダイレクト」、新型スバルBRZは「リニア」となるだろうか。具体的にいうと、以下のような方向性を両車は目指したという。
【新型トヨタGR86】
「コンセプト:レーシングカンパニーGRがつくる、とんがったスポーツカー」
・ダイレクトな走り
・高揚感、ワクワク感
・動きが機敏
・限界領域での走行性能
【新型スバルBRZ】
・高い安定性
・リニアで気持ちいい走り
・扱いやすい
・大人のスポーツカー
・動きが穏やか
当初は、両車の乗り味の違いはダンパーとEPS(電動パワーステアリング)のみで差別化を図ろうとしていたが、それでは不十分と判断。それらに加えて、ECUの特性、足周りの締結剛性、スプリングも変更することとなった。具体的な仕様差は以下の通りである。
エンジン特性の違いに関しては、”なまし”の制御が異なる。なましとは追従性を穏やかにするもの。MT同士で比較すると新型スバルBRZの場合は、中速・高回転ではなましなしだが、それ以外ではなましを入れてレスポンスとショックのバランスを取っている。一方、新型トヨタGR86は低速でアクセル開度が大きいときもなましを入れず、レスポンスを優先したものとなっている。
また、アクセル開度に対するエンジントルクの出し方も両車では異なる。新型スバルBRZではアクセル開度とトルクの関係が均等に近いが、新型トヨタ86だとより小さいアクセル開度の時点から大トルクを引き出すような配分となっている。例えば2速2000rpmからアクセルオンした際、新型トヨタGR86がアクセル開度30〜40%で全トルクを使い切ろうとするのに対して、新型スバルBRZはアクセル開度20〜80%の領域でリニアにトルクを配分するという違いがある。
足周りでの大きな違いは、リヤスタビライザーの取り付け構造だ。新型スバルBRZではサブフレーム付けではなくボディ直付けに変更。サブフレームブッシュの影響を受けることがないのがメリットで、インプレッサなどSGPの採用車は同様の仕様となっている。一方で、新型トヨタGR86のスタビライザーは従来通り、サブフレームにブラケットを介して取り付けられている。
また、フロントのハウジングは新型スバルBRZがアルミ製を踏襲するのに対して、新型トヨタGR86では鉄製に変更されているのも大きな違いだ。こうした差別化により、新型トヨタGR86はより機敏な走りを、新型スバルBRZはより安定感のある走りが楽しめるようになっているという。
※ご紹介した仕様はすべてプロトタイプ、諸元は開発目標値のものです。