トヨタのe-Paletteは自動運転もいいけど、運転しても結構楽しい!

東京オリンピックの選手村で走っていたe-Paletteと外観は変わらないが、中身は進化しているという。
トヨタ自動車は6月8日、「トヨタテクニカルワークショップ2023」を東富士研究所(静岡県裾野市)で開催し、モビリティカンパニーへの変革を支える電動化、知能化、多様化を支える新技術を報道陣に公開した。広い研究所内の移動用にも供されたe-Paletteは、東京五輪の選手村でも使われていたが、さらなる進化を遂げていた。
TEXT:世良耕太(SERA Kota)

自動運転仕様/手動運転/移動コンビニ仕様を体験

全長×全幅×全高は5255×2065×2760mm。ホイールベースは4000mm

e-Palette(イーパレット)は電動化、コネクテッド、自動運転技術を活用したMaaS(Mobility as a Service=マース:次世代移動サービス)専用の電気自動車(BEV)だ。全長×全幅×全高は5255×2065×2760mm。ホイールベースは4000mmで、タイヤを四隅に配置することで広い室内空間を確保。大開口のスライドドア、低床フロア、電動スロープなどを採用することで、車いすユーザーを含めた複数人のスムーズな乗降が可能な設計となっている。

e-Paletteには室内空間を最大限に活用できる運転席なし(自動運転)の仕様と、運転席あり(自動運転だけでなく、手動運転も可能)仕様の2タイプがある。ワークショップでは運転席あり仕様での自動運転を乗員として体験し、手動運転でドライブし、移動コンビニ仕様を見学した。

まずは自動運転体験。大開口かつ床が低いので、乗り降りに気を遣わない。ガラスエリアが大きく開放的なのは、好印象だ。運転席には運行状態を監視するためのオペレーターが座っているが、「オペレーターが運転に関する操作を行なっていない」ことは、運転席周辺を捉えて映し出すディスプレイによって確認することができた。

e-PaletteはカメラやLiDARなどのセンサーを用いて周囲を360度常に監視。トヨタ自動車、ウーブン・バイ・トヨタ、デンソーで開発中の自動運転システムを搭載している。モーターで走るBEVなので走行中は極めて静かだし、発進や停止はスムーズだ。不安になるような動きは一切なく、その他の公共交通手段を利用しているときと同じようにリラックスして過ごすことができた。

e-PaletteのSBW(ステア・バイ・ワイヤー)のステアリングホイールは、bZ4XやレクサスRZで将来設定されるであろうものと同じものを使う。(PHOTOはbZ4Xコンセプト)

そのe-Paletteを東富士研究所の周回路で運転することができた。バスの運転席のように一段高い場所に運転席は用意されているが、右か左、どちらかいっぽうにオフセットしておらず、中央にある。アイポイントが高い位置にあるので、見晴らしがいい。上辺がカットされたステアリングは、e-Paletteがステア・バイ・ワイヤシステムを搭載していることを示している。ステアリングホイールとステアリングギヤボックスはシャフトなどで機械的につながっておらず、ステアリングの操作量を電気信号に置き換え、アクチュエーターの作動によって操舵を行なう仕組みだ。

低速域では小さな操作量で大きくタイヤが切れる制御になっているため、慣れるまでは予想以上の大きな動きに戸惑うが、感覚をつかめば操る楽しさがフツフツと沸き上がってくる。車両の前端に座って操作しているせいか、キャブオーバーのトラックを運転する感覚に似ている。BEVなので静かだし、アクセルペダルの操作に対するクルマの動きがリニアで反応が良く、それが運転しやすさにつながっているのが確認できた(自動運転でサービスに用いるのが本来の姿ではあるが)。

コンビニは東富士研究所内で「開店営業」した実績があるそうだ。

移動コンビニ仕様のデモンストレーションは、「こういう使い方が実現したらよろこぶ人がたくさんいるだろうな」と感じた。運転席なし仕様を活用すると、本来なら運転席があるスペースも商品の陳列スペースに使えるので、室内空間を有効に使える。コンビニ以外の物販やサービスなど、さまざまな用途に使えそうで、人を運ぶだけではないe-Paletteの可能性を感じた。

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著者プロフィール

世良耕太 近影

世良耕太

1967年東京生まれ。早稲田大学卒業後、出版社に勤務。編集者・ライターとして自動車、技術、F1をはじめと…