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驚きの連続!時代に合わせて進化した2台のランドクルーザー
2023年8月2日午前10時。世界のランクルファンにビッグなニュースが届けられた。新型車「ランドクルーザー250」の登場と、名車「70系」のカタログモデル復活である。
筆者も会場となった東京ビッグサイトの特設ステージ下にいたが、まずリニューアルされた70系がベールの奧から飛び出してきた時、そのデザインに「やられた!」と思ったのだ。
70系再々販の情報は数年前から出ており、今年初めには丸目ヘッドライトになるという噂が漏れ伝わってきた。だが、30周年再販モデルの時は角目ヘッドライトであったのにもかかわらず、チーフエンジニアの小鑓貞嘉氏は「中は丸目です」と言い切っていたので、おそらくオーストラリアモデルのようなカタチで出てくるものだとばかり思っていたのである。
しかし、結果はご覧の通りの完全な丸目LED。しかも、ボンネットの形状も変わったため、往年の70ワゴンを彷彿させるスタイルで登場した。さらに、30周年モデルよりもバンパーやフェンダー回りに大型の樹脂製ガードが取り付けられたことで、イマドキのオフロード系カスタムワゴンのようなスタリッシュな雰囲気も持っていたわけである。30周年モデルではダミー状態だった縦のリヤコンビネーションランプにはカバーが掛けられたのも、解消された不満ポイントのひとつだ。
ランクルマニアも納得する、250系の丸目デザインと本格装備
70系に“完全にやられた…”と衝撃を受けながら、続けて250の全貌を見た時は、完全に打ちのめされた感じがしたのである。250系についても、ここ数カ月でどんなスタイルになるのか噂を聞いていたし、レクサス「GX」が先行して登場したことでヒントもあった。しかし、だ。マスクデザインが2種類あると聞いていたものの、あの丸目デザインはランクル好きの心を鷲づかみだ。
しかも、300系とは違ってSUV寄りなところは微塵もなく、往年の40系や初期の70系といったヘビーデューティ系モデルの匂いを振りまきつつ、所々に50型や60系といった名車たちの意匠を感じさせるボディデザインになっていたのである。
もちろん、キーンルックの角目LEDヘッドライトも悪くなかったが、やはりランクルは丸目だろう…と思っているファンが多いなかで、このデザインを出してくるトヨタ開発陣には、「うーん、わかってるよね〜」と頬ずりしたいくらいの愛おしさを感じたのである。しかも購入後に、丸目↔角目をエレメントで交換できるというから、これまた驚きだ。
しかもこの250系、現代的な電子バイスを惜しむことなく投入し、ランドクルーザーの歴史で最高峰と言える悪路走破性を実現している。何よりも凄いのは、遂にサスペンションが、エンジンやパワートレーンと統合制御になったことだ。
オフロードには「モーグル」というコブが連続する地形があるのだが、こういった場所をオフロード4WDで走行すると、4輪のうち対角線上2輪のタイヤが地面に接地せず、残りの2輪だけが地面に着いているという状態が多々発生する。特にランクルは数代前からフロントがインデペンデント式になったため、接地性がリジッドアクスル式よりも希薄になっているのだ。
新しい250系は、サブトランスファーをローレンジに入れてこういう状況に陥ると、減衰力を自動制御してタイヤの接地性回復を試みる。そして、タイヤのトラクションを得ることで、走破性を向上させたのである。電子デバイスが次々と採用されるランドクルーザーだが、正直300系の時は「こんなものか」と感じた。だからこそ、250系のこのシステムは「そうきたか!」と手放しで驚いたのである。
これ以外にも、マルチテレインセレクトがハイレンジでも選択可能になり、さらにハイ・ローの両レンジに「AUTO」モードまで付いた。これがあれば、「ダートとマッドが混在しているが、どちらを選べばいいのか?」というシチュエーションでも悩まずに済む。
とにかく250系は、現代的なデザインと技術を纏った次世代ヘビーデューティ4WDのど真ん中にあるモデルで、おそらく向こう10年はこれを超える四駆は出てこないのではないだろうか。さらに、北米、中国で先行販売されるハイブリッド車が日本で登場すれば、もはや無敵の状態。
70系の進化ポイントをまとめると…
さて、もう一度70系に戻りたい。新型の70系のナニが魅力的なのかということを、SNSなどを見ていると十分に理解できていない人が結構いるようだ。まず、この70系はディーゼルエンジンなのだ。30周年モデルは、このガソリン高騰時代に燃料をガバガバと使う4.0LのV6ガソリンエンジンだった。70系に憧れて、このモデルを買った人も、あまりの燃費の悪さに悲鳴を上げた人が少なくないと聞く。
次に、新型70系は3ナンバーワゴンになった。30周年モデルは1ナンバーの貨物車だったので、毎年車検だし、後部座席はリクライニングしないし、しかも高速道路料金が中型車枠。こちらのコストも、ユーザーの懐を直撃したわけだ。
その上、トランスミッションはMTのみ。AT率が9割を超える現代の日本で、AT免許では運転できない“特別なクルマ”だったのが、これまでの70系。それが新型ではATのみに切り替えられ、ギヤ比の見直しによって中速、高速での走りやすさが大幅に向上している。
今から30年前、筆者も70系の所有を熱望したが、やはり1ナンバー車という壁に阻まれて断念した経験がある。ランクリストのなかには、3ナンバーワゴンになったことで70系の価値が下がったと言っている人もいたが、70系というクルマが永く残っていくことを望むなら、現代的な商品価値を持つ必要があるということだ。
550万円前後の価格なら、本命は250系だが70系も捨てがたい…
さて、ランドクルーザーへの買い替えを考えていた筆者にとっては、この2モデルの登場はまったくの予想外だった。当初は「まあ70系かな」と思っていたのだが、250系は相当魅力的だ。しかも、どうやら両モデルのプライスは拮抗するらしい。
70系も250系も、550万円前後というプライス付けがされるようだ。もちろん、安全装備や電子デバイスを考えれば、同じような価格なら250系がお得ということになる。しかし、安全装備も充実し、現代的にお色直しした70系なら多少高くても乗ってみたいと思う。何より、70系が持つブランド力はもはや媚薬だと言ってもいい。
ちなみに発売時期は、70系が今年の冬、250系が2024年春になるという。とりあえず70系の内容をもう一度確認してから答えを出したいと思うが、どちらが末永く楽しくなりそうか、グルグル悩む幸せな時間が続きそうだ。