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改良でフルハイブリッド換装 操舵は軽快で室内実用も◎
先代エスクードは、後輪駆動をベースにした4WDを備えるミドルサイズSUVだった。それが2015年に発売された現行型は、エンジンを横向きに搭載する一般的な前輪駆動ベースのコンパクトSUVになった。ハンガリーのマジャールスズキが生産して日本に輸入している。
エクステリア
発売当初は1.6ℓ自然吸気エンジンを搭載したが、17年にスイフトスポーツと同型の1.4ℓターボを加え、18年には1.6ℓを廃止した。この後、販売を一度終了したが、22年にフルハイブリッドを搭載して輸入販売を再開した。フルハイブリッドは1.5ℓエンジンがベースで、モーターは最高出力が33.4㎰、最大トルクは60Nmだ。ヤリスクロスのモーターに比べると、性能の数値は半分以下だが、マイルドハイブリッドよりはパワフルだ。街なかではモーターだけで発進することも多く、アクセルペダルを緩く踏み増した程度ならエンジンは始動しない。実用回転域の駆動力に余裕があり、50㎞/h前後までは、モーターだけで加速できる。その後にエンジンが始動しても、ノイズが急に増える違和感はない。
乗降性
トランスミッションは1組のクラッチを使う有段式6速AGS(オートギヤシフト)だ。このタイプのATは、欧州製のコンパクトカーに多く、変速に若干の時間を要するから加速がギクシャクしやすい。その点でスズキの制御では、エンジンの駆動力が途切れる変速時に、モーターの駆動力を高める。この効果で、以前からギクシャク感を抑えた変速を特徴としてきた。フルハイブリッドのエスクードでは、この制御がさらに綿密になり、2組のクラッチを使う有段ATに近付けている。フル加速時を除くと違和感はない。
峠道などを走ると、高重心のSUVとしては、鈍さを感じさせずによく曲がる。車両重量も4WDを搭載して1320㎏だから、フルハイブリッドでは軽い部類に入り、軽快な運転感覚が特徴だ。インパネ周辺の質感は、コンパクトSUVとして不満はない。ATレバーは、フルハイブリッドながら前後方向にスライドさせる一般的な形状で、操作感覚も馴染みやすい。
居住性
前席の座り心地は欧州車風だ。少し硬めで身体が座面に沈みにくいが、背もたれの下側がしっかりと張り出し、疲労を抑えると同時に着座姿勢を安定させる。後席の膝先空間は、身長170㎝の大人が4名乗車して握りコブシひとつ半だ。ヴェゼルなどに比べると狭いが、後席に座る乗員の足が前席の下に収まりやすく、窮屈には感じない。全長が41754㎜のSUVとしては、荷室容量にも余裕があって実用性を高めた。
うれしい装備
月間販売台数 115台(22年9月〜23年2月平均値) 現行型発表 15年10月(一部仕様変更22年4月) WLTCモード燃費 19.8km/l
ラゲッジルーム
エスクードの22年における登録台数は、1ヵ月平均が約100台と少ない。それは欧州のベーシックカーのような価値観で開発されたからだ。外観は控え目で、WLTCモード燃費もフルハイブリッドながら19.6㎞/ℓに留まる。その代わり長距離の移動でも疲れにくく、車両との一体感も味わえる。4WDにはロックモードが備わり、最低地上高も185㎜だから悪路にも相応に強い。ちょっとマニアックな玄人好みのコンパクトSUVが欲しいユーザーには、エスクードがピッタリだ。
※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.149「2023-2024 国産&輸入SUVのすべて」の再構成です。