脱・温暖化その手法 第74回 ―世界的に太陽光発電と電気自動車を普及させることで考えられる懸念点とその解決法 その4―

温暖化の原因は、未だに19世紀の技術を使い続けている現代社会に問題があるという清水浩氏。清水氏はかつて慶應大学教授として、8輪のスーパー電気自動車セダン"Ellica"(エリーカ)などを開発した人物。ここでは、毎週日曜日に電気自動車の権威である清水氏に、これまでの経験、そして現在展開している電気自動車事業から見える「今」から理想とする社会へのヒントを綴っていただこう。

前回は電気自動車が大量に普及することの懸念点とその解決法について述べた。今回は自動運転が大量に普及することの懸念点とその解決法について述べる。

1 自車が事故を起こさなくても衝突される危険性がある以上安全ではないのでは?

このことは、自動運転に関しての懸念点の真っ先に来ることだ。他の車からのもらい事故は自動運転の普及段階ではあり得ることであるが、すべての車が自動運転となった時には解消される。指摘されているように、過渡期においてはありうる。自動車による事故は自動車対人、自動車対二輪車、自動車対自動車の3つのケースがある。このうち最も多いのは歩行中が35%であり、自動車運転中が33%、二輪車が31%である。このことから、自車の自動運転が完璧になれば、歩行中と2輪車の事故はなくなり、自動車運転中も自車の責任と相手の責任が半々とすると16%にまで減ることになる。さらに、相手との運転で最も多いのは正面衝突であるが、これを察知して自車が瞬時に停止すれば、衝突の衝撃は半減するので、もらい事故による死亡の確率はさらに低くなる。

2021年の状況別事故死者数
自動車運転中が33%に対して、歩行中が35%、二輪車が31%である。
令和3年中の道路交通事故の状況- 内閣府資料)

2 機械任せで事故が起こった時にだれが責任を取るか

これまでの自動車社会では、交通事故は第一義に運転者の責任であった。このために自賠責保険がすべての車が加入を義務付けられており、ほとんどの車が任意保険に加入し、ほとんどの事故の補償は保険で賄われてきた。ごくまれに調査の結果、原因が車そのものの欠陥による場合には自動車会社や部品会社が損害賠償をすることがあった。

 自動車が自動運転になった場合、その事故の発生が皆無ということはない。その補償は車の使用者が行なうか、自動車会社が追うかということに関しては自動運転の議論の中で常に話されてきたことである。その補償を使用者が負うことになると、自動運転に乗ろうという人は少なくなる。自動車メーカーが負うということになると、開発に力が入らなくなる。

 これを解消するには、事故が起こった時に誰かが調整することである。それに最もふさわしいのは、これまで自動車保険を扱ってきた損害保険会社である。自動運転による事故を補償する制度が成立すれば自動運転の促進は進む。勿論、利用者及び自動車会社は予め保険会社と契約して代金を支払う必要があるが、その保険料は事故が大いに少なくなるために大いに安価になる。それでも保険会社は自動運転が増えればこれまで運転免許証を持っていなかった人々や、高齢で運転を諦めた人たちも利用するようになるために、保険加入者は増え、一定の売り上げとそれに基づく利益は確保できることになる。

3 機械に運転を任せるのは怖くてできない

これまでの自動車社会に慣れ切った人々が、自動運転の自動車に乗ることに抵抗感があるのは理解ができる。

 これに関してはそれぞれの人々の感性であるから、強く価値を押し付けることはできない。

 過去の技術で、当初は人が操作していた機械がある。その典型はエレベーターである。その発明は1853年でアメリカのエリシャ・オーチスによるものである。当初はオペレーターが同乗して、操作していた。戦後でもデパートのエレベーターは、女性が乗っていて操作していた。それが、次第に自動化され、今のエレベーターは利用者が自分で行き先階だけを押せば済むようになっていて、誰も安全性に問題があるとは思っていない。

 このため、自動運転の利用に関しても、比較的抵抗感が少ない人から受け入れが始まり、時間とともにすべての利用者の抵抗感が和らぐことを待つのが無理のない普及のさせ方だと考える。

4 インフラ整備にとてつもなく大きな費用が掛かるのではないか

私は今の道路構造のままではふいに人や自転車の飛び出しがあるので、レベル4の自動運転を実現するには歩道と車道の完全な分離は必要だと考えている。道路幅によってそれができない場合がある。そうした道路に関しては自動的に時速約6㎞の制御を付けて、例え人との衝突があったとしても怪我がないということにするのが合理的であると考えている。道路の完全な歩車道分離を行なうための費用を試算すると16兆円という結果であった。

 この金額の多寡であるが、かつて、日本では道路整備に10兆円の投資が行なわれていたことや、金額では測れない事故による損失の大きさを思い、渋滞による損失が年間10兆円に及ぶという報告からも考えると、決して高額ではない。このための投資をすることを前提にした自動運転化を進めることは、政策としてかなっている。

全国に適用した場合、費用は16兆円と試算される。
かつて、道路建設に年間10兆円が使われてきた。

自動運転が普及するとしても、高速道路のような限られた場所になるのではないか

前項4で述べたように、歩車道の完全分離なしに自動運転を普及させるのは難しいと考えている。但し、その最高速度の設定如何で、この見方も変わってくる。もし時速6㎞までなら間違いなく安全である。しかし、おそらくそれ以上でも、ある速度までは安全ではないだろうか。時速10㎞までか、20㎞あるいは30㎞まで行けるのか、閾値(しきいち)は今までの情報では明らかになっていない。このために、今後の研究として、車歩が分離されない道路での自動運転の安全な範囲の見極めは極めて重要である。 なお、完全自動運転が実現されるという前提の下では、最高速度は時速100㎞ということは起点にしたい。それにより、人と物の流れは極めて効率が良くなる。

プラチナカー0号車
全長1.2m、全幅0.7m、全高1.2mの規制値に
適合車した車両。二輪1m80㎝の利用者が十
分居座れている。

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著者プロフィール

清水 浩 近影

清水 浩

1947年宮城県仙台市生まれ。東北大学工学部博士課程修了後、国立環境研究所(旧国立公害研究所)に入る。8…