空気抵抗もデザイン性も追求されたトヨタ2000GTのフェンダーミラー【TOYOTA 2000GT物語 Vol.33】

空気抵抗低減のためスリムな砲弾型フェンダーミラーを採用したTOYOTA 2000GT。前期型は防眩のため内側に艶消し塗装が施された。その取り付け位置といい、フェンダーミラーでありながらデザイン性を追求した。
REPORT:COOLARTS

フロントフェンダーのラインを美しく見せるデザイン

小ぶりな砲弾型のフェンダーミラーがTOYOTA 2000GTの特徴。テールレンズはマイクロバスから流用していたが、このフェンダーミラーは専用設計だ。

“外圧”によるドアミラーの規制緩和

運転中のドライバーが後方を確認するためのサイドミラーには、ドアミラーとフェンダーミラーの2タイプがある。現在、フェンダーミラーを採用している乗用車を街で見かけるとすれば、タクシーかハイヤー、公用車くらいなもの。

 

そもそも、日本でドアミラーが解禁になったのは、次のような経緯がある。1989年初頭にアメリカの自動車業界から「ドアミラーの装着を認めないのは非関税障壁である」との指摘を受け、1983年3画に規制緩和された。それ以降、国産車のドアミラー装着が可能になったのだ。いわゆる“外圧”による解禁である。

もちろん、ボンネットそのものがないワンボックスカーは、規制緩和以前からドアミラーが装着されていた。それ以前にもドレスアップのアイテムとして国産車用のドアミラーが販売されていたが、装着は違法であり、取り締まりの対象だった。

フェンダーのラインがスッキリ見えるドアミラーは確かにクルマ全体をスタイリッシュに見せる効果がある。とくにフェンダーがクサビ形のウェッジシェイプのスポーツカーではより顕著だ。しかも、フェンダーミラーより鏡面を大きくして見易くできるというメリットもある。

後期型は全体を艶消しグレーで塗装

本体をクロームメッキと艶消しグレー塗装に塗り分けているのが前期型の特徴。後期型では全体がグレーの艶消しに変更された。

しかし、フェンダーミラーにもメリットがないわけではない。ボンネット前方に装着されていることからドライバーの視線移動が少なくて済む。右ハンドルのクルマのドアミラーなら首を振らないと左側のミラーが確認できないが、フェンダーミラーなら前を向いて視線を移動するだけで左側ミラーが見える。

ドライバーとボンネットの位置関係が明確で、車両感覚がつかみやすいという点もメリットだ。そのため、タクシーでは今でもフェンダーミラーが愛用されている。さらに、フェンダーミラーはボディから離れているので、空気の流れを乱すことが少なく、ドアミラーよりも空力的に優れているとされる。

フロントフェンダーの後ろ寄りに取り付けられたフェンダーミラー。

1967年に発売されたTOYOTA 2000GTのサイドミラーは、当然、フェンダーミラーだ。輸出された個体の何台かにはドアミラーが取り付けられていたが、左ハンドル仕様でもフェンダーミラーが基本だ。

フェンダーミラーが本体は、空気抵抗を低減するために砲弾型のスマートなデザインを採用。他車からの流用ではなくTOYOTA 2000GT専用設計だ。本体のクロームメッキが反射することを考慮して、ドライバー側から見える内側は艶消しのグレーで塗装されている。ちなみに、後期型は全体が艶消し塗装仕上げになった。鏡面の角度を手元で調整できるリモコン式ではなく、調整は先端のネジを緩めて行なう。

TOYOTA 2000GTの小ぶりなフェンダーミラーは、長いボンネットのフロントウインドウに近い位置に取り付けられているのが特徴だ。フロントタイヤの車軸よりも後方にある。同じようにロングノーズに直列6気筒を搭載する日産フェアレディZ(S30)は、フェンダーミラーをフロントタイヤの車軸より前に取り付けていた。

どちらのデザインが正解とは言えないが、少なくともTOYOTA 2000GTのデザインとしてはこの位置が最適だろう。フェンダーの盛り上がりが美しく見え、しかもフェンダーミラーがそれをさりげなく強調しているかのようだ。60年代当時の国産車のありきたりなフェンダーミラーとは、完全に一線を画する優雅なデザインだったといえよう。

同じロングノーズでもフェアレディZ(S30)ではフロントフェンダーの前寄りにフェンダーミラーを取り付けていた。

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