「メタバース×モビリティの未来」は明るい!? ホンダ三部敏宏社長がトークショーで語ったモビリティの新しい価値とは?

現在開催中の「ジャパンモビリティショー2023(旧:東京モーターショー)」では、西展示棟1Fのステージで「ジャパン フューチャー セッション」と題して、さまざまなトークセッションが開催される。各界のトップランナー達が集い語られた「メタバース・リアルを行き来する時代。モノづくりに与える影響とは?」について。

ゲームの世界で作ったクルマを現実世界で注文できたら面白い!

写真左から、谷川氏、タツナミ氏、加藤氏、佐々木氏、三部氏。

モビリティの様々な可能性について発信をしているジャパンモビリティショー、10月31日の夕方に開催されたトークセッションのテーマは「メタバース×モビリティの未来」で、「メタバース・リアルを行き来する時代。モノづくりに与える影響とは?」と題して、各界のトップランナー達が興味深いトークを繰り広げた。

ステージ上には、日本自動車工業会副会を長務める本田技研工業 取締役代表執行役社長の三部敏宏氏と、クラスター代表取締役CEOの加藤直人氏、東京大学 大学院情報学環 客員研究員でプロマインクラフターのタツナミシュウイチ氏、作家・ジャーナリストの佐々木俊尚氏が登壇した。モデレーターはインプレス コンシューマメディア事業部 事業部長の谷川 潔氏。

トークセッションのステージは、西展示棟1階で開催。

まず、メタバースの現在位置として、プロマインクラフターのタツナミ氏が以下のように解説。
「現時点では、メタバースはまだ我々の日常生活に溶け込むレベルまで達していないと思います。次のステップに進むためには、まずデバイスの進化が必要です。例えば、小型軽量のVRゴーグルとか。そのあたりのデバイスが浸透してきたら、現在のスマートフォン並みに生活に浸透するテクノロジーになると思います。スマートフォンも登場からたった15年で生活になくてならない存在になったので、メタバースも同じぐらいの速度で生活に浸透していくと思います」

今回のトークセッションに登壇したメンバー。難しい話を解りやすく楽しく話して頂きました。

モノづくりという観点からみたメタバースについて、クラスターの加藤氏はこう語った。
「メタバースの特徴はものづくりにあると思います。物理的な制約がなく想像したとおりの物が自由に作ることができます。つまり、既に作られたものだけでなく、自分だけのオンリーワンを作ることができます。“モノ作りの民主化“と表現したらいいでしょうか。メタバース空間でも移動は乗り物に乗りたいと思うのは、人間が根本的にもっている欲求だと思います。バーチャルの空間でも移動の楽しみを感じたいと思っているのです」

“陸・海・空”すべてのモビリティにホンダのロゴが付いていることを目指したいと語るホンダの三部社長。

メタバースの現在の立ち位置について様々な意見が交わされたところで、ホンダの三部社長は自動車業界でのメタバースの活用について問われると、
「現在でもARやVRなどの技術は、生産ラインの確認や自動運転のシュミレーションなどの開発系には使われていますが、自動車にどんなものを組み込んだら有効かという部分はまだ試験段階です。

一方で、バーチャル空間にディーラーの店舗を作るという試みは進んでいて、バーチャルの世界で3D化された新車を確認して、色や自分好みのカスタマイズパーツを追加して注文する。ということは始まりつつあります。特にアメリカはデジタルへの興味が高い国民性なので、少し先に進んでいます。また、レースゲームに実際の車のデータを提供して、ゲーム内で走らせるということはやっています。将来的には今とは逆で、ゲームの世界で自分好みに作った車を、リアルの世界の車として再現する。ということができたらいいなと思っています。

そのように、メタバース空間との親和性が高めることで、新しいビジネスに発展する可能性があると考えいます。ただ、自動車業界はメタバースに取り組み始めたばかりなので、これから発展していく段階です」と語った。

人気ゲーム「フォートナイト」ではホンダ車が登場するステージも。

メタバースとこれからの自動車業界の関係性は?

これからはメタバースをうまく活用したメーカーが自動車業界の勝者になる可能性はあるのだろうか?
その問いに対し、ホンダの三部社長はこう語った。
「モビリティという考え方では、あらゆる可能性がある。人間が空想できる乗り物、例えばSF映画に出てくる空飛ぶ乗り物とかは必ず実現できると思っています。我々ホンダは、2040〜50年頃にはモビリティは必ず空中を移動するものになると考えています。

そうなったときに、“陸・海・空”すべてのモビリティにホンダのロゴが付いていることを目指して頑張っています。そのひとつが飛行機です。今回展示した「eVTOL」(イーブイトール=電動垂直離着陸機)は、飛行機が飛んでいる空間と地上の空間を繋ぐモビリティということで開発を進めています。

ホンダ・eVTOL

自動車の価値についても変化していくと考えていて、いままでは目的地に早く到着するという“時間的な価値”が重視され、馬車から車、飛行機など速い乗り物に進化していきました。
これからは、移動している間に何ができるかという“空間的な価値“が、モビリティの価値となるでしょう。
例えば、レベル4以上の自動運転なら車内がパーソナル空間になるので、そこで何ができるかが新しい価値になるということです。
車内が森の中のような風景になりリラックスして移動できる、または、3Dの会議システムを使って仕事を進めるなど、パーソナル空間の使い方には様々な可能性があります。メタバースのテクノロジーを活用して、リアルとバーチャルの融合をして大きな価値を生み出していきたいと考えています。

ただ、理想をすべて現実にするのには少し時間が掛かるので、現実的なところだと、ナビのルート案内をフロントウインドウを介して道路上に映し出す拡張現実の実装といったところからでしょうか。

いままでは“走る曲がる止まる” という、基本性能の高い車に価値がある時代だったが、これからのモビリティは、そこにデジタルの価値を加えたものが、価値をもつ時代になると考えています」

そして、約1時間のトークショーの最後に、ホンダの三部社長はジャパンモビリティショー2023について「4年ぶりの開催で、東京モーターショーからジャパンモビリティショーと名前を変えて新しくスタートしています。これからのモビリティの未来のカタチを表現できればと考えていますので、各ブースでぜひ未来のモビリティを感じて頂ければと思います」と締めくくった。

「ジャパン フューチャー セッション」は、会期終了まで連日開催される。各分野のトップランナーが集まって多角的な視点でトークを繰り広げる、魅力的なプログラムが目白押しだ。ぜひ、聴きにいっていただきたい。

また、11月3日15時からは、日本カー・オブ・ザ・イヤーの「10ベストカー発表会」も開催される。こちらも、ぜひ多くの人に見ていただきたい。

「ジャパン フューチャー セッション」が面白い。「カーボンニュートラル×モビリティの未来」でスズキ鈴木俊宏社長とトヨタ佐藤恒治社長は何を語ったか

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