ルノー・スポール最後の一台「ルノー・メガーヌ ルノー・スポール」【最新スポーツカー 車種別解説 RENAULT MEGANE R.S】

ルノーのモータースポーツへの情熱の形「ルノー・メガーヌ ルノー スポール」。その名を冠した最後のロードカーの有終の美を飾るのが「ウルティム」モデルだ。初代が誕生した年を記念して世界に1976台のデリバリーとプレミアムの価値を持つ。サーキット走行に対応したグレードをベースに1.8ℓ直列4気筒ターボエンジン、4コントロール、HCC、トルセンLSDなどを受け継ぎつつ軽量ホイールをセットし、さらにボディに菱形のデカールなど、性能、スタイリングともにストイックな精悍さで究極の「メガーヌ」と言える。
REPORT:森口将之(本文)/山本晋也(写真解説) PHOTO:宮門秀行

東京オートサロンで発表の1976台の限定モデルも

ルノーは直系のスポーツブランド、ルノー・スポールをアルピーヌに集約させることを決めた。これによってこのブランド最後のロードカーになったのが、メガーヌRSとなる。現行型は3代目で、ボディは5ドアのみとなり、直列4気筒ターボエンジンは従来2.0ℓから新世代の1.8ℓに積み替え、トランスミッションは6速MTのほか、同じ6速のデュアルクラッチも選べるようになった。

エクステリア

限定モデルのメガーヌR.S.ウルティムはモータースポーツを想起させるブラックデカールやブラックアウトしたルノーエンブレムが特徴だ。リヤディフューザーもブリリアントブラックとなっている
1.8ℓの排気量ながら300㎰を発するハイパフォーマンスユニット。インタークーラーパイプの一部を金属製としているあたり、チューニングエンジンのような雰囲気ももつ。その効果はアクセルレスポンスの良さやピークパワーへ向けての伸び感などで体感することができる。
全グレードで19インチアルミホイールを標準装備。タイヤは専用セッティングを受けたブリヂストン・ポテンザS007が与えられている。指定空気圧は前230kPa/後210kPaと低めの設定だ。
もともとメガーヌがもつ実用性の高さは、まったくスポイルされていない。ラゲッジの奥行きは通常時で760㎜、後席を格納するとフロア部分の奥行きは1350㎜を確保しているほどだ(実測値)。

シャシーのトピックは4コントロールと呼ばれる四輪操舵システムと、ダンパー内にセカンダリーダンパーを組み込んだHCC(ハイドローリック・コンプレッション・コントロール)。初代から装備する、ストラットからハブキャリアを独立させたダブルアクシスストラットサスペンションも引き続き採用している。この現行メガーヌRSの最後を飾るのが、ルノー・スポールが誕生した年に合わせ、世界で1976台のみが生産されるウルティムで、ワールドプレミアの場はなんと今年1月に行なわれた東京オートサロン2023だった。

インテリア

ディンプル加工されたナパレザーとアルカンターラを組み合わせたステアリングが、欧州スポーツカーといった世界観を演出。パドルシフトは固定タイプだが、パドル自体が大きく操作しやすいものとなっている。
10インチディスプレイの液晶メーターは情報表示のデザインも優秀。
撮影車は6速DCTだったが、MT車でも同様に赤いアクセントの入ったレザーシフトノブとなる。
フットレストまでアルミで統一されたペダルもスポーティだ。

ベースはメガーヌRSの中でも、サーキット走行に対応してフロントアクスルにトルセンLSDなどを組み込んだRSトロフィーで、1.8ℓ直列4気筒ターボエンジン、4コントロール、HCC、トルセンLSDなどを受け継ぎつつ、ホイールは1本あたり2㎏軽い「フジライト」に履き替えたことが特徴だ。

優れたコントロール性をもたらす4コントロール

外観はフジライトのホイールや、昔のルノーエンブレムを思わせる菱形のデカールが目につく。ロゴやドアハンドルなどのブラックアウト化も、ほかのメガーヌRSとの違いで、さらに精悍な雰囲気になった。インテリアは、セレクターレバー奥に、日本でもその名を知られる開発ドライバー、ロラン・ウルゴンのサインとシリアルナンバーが入ったプレートが鈍く輝く。走り出すとまず、RSトロフィーとしては足まわりがしっとりしていることに気づく。ホイールが軽くなったためだろう。太いタイヤは硬さを伝えるものの、それを丸めて送り届けてくれるのがフランス車らしい。一方、まわりのスポーツモデルの快適性が増した結果、メガーヌRSのストイックなキャラクターがさらに強調されている気もした。

うれしい装備

後輪操舵機能を含めた「4CONTOROL 」は高速スタビリティにも寄与するメカニズムだ。
ルノー・スポールのファイナルモデルを記念してテストドライバーであるロラン・ウルゴン氏のサイン入りプレートが備わる。 
BOSEサウンドシステムは音量を下げていてもクオリティの高さが実感できる。
ドライブモードに応じてメーターのデザインが切り替わる。

300㎰/420Nmを発生するエンジンは、始動した瞬間に野太い排気音を鼓動とともに伝える。スポーツモードにすると、サウンドはさらに開放的になる。ステアリングは切れ味という表現を使いたくなるほどクイック。それでいて底なしと言いたくなるようなロードホールディングを見せつける。しかも4コントロールやHCCなどの技術は、基本はメカニカル。だから操る楽しさがリアルに手応えとなって伝わってくる。果たして今後このようなスポーツモデルに出会えるだろうか。ルノー・スポール最後の1台という以上の価値があると思った。

Country       France
Debut        2018年8月(一部仕様変更:22年7月)
車両本体価格     559万円~659万円

※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.151「2023-2024 スポーツカーのすべて」の再構成です。

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