実は“あの車”と同じじゃなかった!! レクサスLBXのメカニズムを探る ~パワーユニット編~

レクサスLBX
いよいよ2023年12月下旬発売がアナウンスされたレクサスLBX。レクサス・ブランドの最小モデルだが、「高級車の概念を変えるサイズのヒエラルキーを超える次世代LEXUSモデル」と位置付けられているだけに、その内容はこだわったものとなっている。そこでレクサスLBXのメカニズムに注目してみたい。まずはパワーユニットから見ていこう。
レクサスLBXのハイブリッドシステム。

いよいよ待望の日本登場となったレクサスLBXだが、巷では「とあるトヨタ車のレクサス版」との噂もある。果たしてそれは事実なのか、まずはパワーユニットから見ていこう。

パワーユニットは1.5ℓ直列3気筒エンジンにモーターを組み合わせたハイブリッドシステムが搭載される。エンジンは型式で言えばM15A-FXE型。トヨタのエンジン命名規則に則れば、TNGA設計となった“ダイナミックフォースエンジン”シリーズの1,5ℓ排気量版、すなわちM15A型エンジンの実用DOHC(F)+ハイブリッドシステム専用ミラーサイクル(X)+フューエルインジェクション(E)仕様。

レクサスLBXに搭載されるM15A-FXE型1.5ℓエンジン。他の同型ハイブリッド用エンジンと異なり、振動・騒音対策のためバランサーシャフトを備える。

トヨタのいわゆる“ダイナミックフォースエンジン”シリーズは、2000年代後半から自動車業界をにぎわせた、過給機(スーパーチャージャーやターボチャ―ジャーなど)を用いることで同等の動力性能を確保したまま排気量を小型化して巡行時の燃費を向上させようというダウンサイジングコンセプトに対して生まれた、エンジンの排気量や気筒数を自動車の車格に対して適切な数字にして燃費向上を目指そうというライトサイジングコンセプトに則ったエンジンであり、コンセプトからしてまったくの新世代エンジンだ。そのファミリーの最小排気量帯を担うのが1.5ℓのM15A型になる。

一般的なガソリンエンジン仕様のM15A-FKS型。(画像はシエンタのもの)

このM15A型には一般的なガソリンエンジンであるM15A-FKS型があるが、ハイブリッド専用のM15A-FXE型はアイドリングをしないため駆動損失の原因となる1次バランサーシャフトを備えず、代わりにクランクプーリーにアンバランスマスを備えて振動を緩和しているのとポート噴射が採用されているのが大きな違いだ。大雑把にはM15A型は、組み合わせるトランスミッションと協調させるために様々な改良や最適化が行なわれる設計のエンジンと言えよう。ちなみにM15A-FXE型の熱効率は40%に達するという。

しかし今回、レクサスLBXに搭載されたM15A-FXE型は他車に搭載されているものとは異なり、エンジン音と振動を抑えるためにバランサーシャフトが奢られている。これは高級車にふさわしい演出であり配慮であることは言うまでもないだろう。同じハイブリッド専用のM15A-FXE型と言っても微妙に異なっているのだ。

型式M15A-FXE
種類直列3気筒
使用燃料無鉛レギュラーガソリン
総排気量(cc)1490
ボア×ストローク(mm)80.5×97.6
最高出力(NET)  kW(PS)/rpm67(91)/5500
最大トルク(NET)  Nm(kgm)/rpm120(12.2)/3800~4800
燃料供給装置ポート燃料噴射装置(EFI)
燃料タンク容量(ℓ)36
レクサスLBXのトランスアクスルはギヤトレーンとモーターが一体化された最新第5世代のものが採用されている。

ハイブリッドのシステムそのものは当然ながら、遊星歯車による動力分割機構を特徴とするシリーズパラレル式ハイブリッドのトヨタ・ハイブリッド・システム(THS)で、基本的には熟成の進んだ第4世代モデルだ。しかし、トランスアクスルにはギヤトレーンとモーターが一体となった最新の第5世代のものを組み合わせるなど、信頼性と先進性をバランスさせた進化版システムとなっている。これもまたレクサスLBXと他車との微妙だが重要な違いだ。

●駆動装置
駆動方式前輪駆動(FF)またはE-Four(電気式4WD)
トランスミッション電気式無段変速機
減速比FF:3.218/4WD・F:3.218,R:10.487
●フロントモーター
型式1VM
種類交流同期電動機
最高出力  kW(PS)69(94)
最大トルク  Nm(kgm)185(18.9)
●リヤモーター(4WD車)
型式1MM
種類交流誘導電動機
最高出力  kW(PS)5(6)
最大トルク  Nm(kgm)52(5.3)
レクサスLBXに搭載されるバイポーラ型ニッケル水素電池。従来型より出力が向上するのに伴い、アクセルレスポンスが向上する。

バッテリーは2021年に登場した2代目トヨタ・アクア(MXPK1系)の“X”以上のグレードから採用されたバイポーラ型ニッケル水素タイプを搭載する。これは集電体の片面に正極、もう一方の面に負極を塗り、複数枚積層させてパックにした電池で、正と負の双方(Bi/バイ)の電極(Polar/ポーラ)を持つためこう呼ばれる(Bipolar/バイポーラ)。

従来型とバイポーラ型の比較。正極と負極を別の集電箔に塗工し、電気的な接続のためにタブでつないだ従来型に対し、バイポーラ型は正負極を塗工した箔、セパレーターを積層。箔全面に電流を分散し高出力化を実現する。(図版はトヨタ・アクアのもの)

メカニズムに興味のある方にはもはや復習になるが、バイポーラ型は従来型のニッケル水素電池と比べて集電体などの部品点数が少なくなるためコンパクト化できるのが特徴で、従来型電池と同等のサイズの場合、より多くのセルを搭載することが可能になる。また、通電面積が広くシンプルな構造により、電池内の抵抗が低減することで、大電流が一気に流れるようになるため、出力の向上につながる。そして出力の向上はアクセル操作への応答性(アクセルレスポンス)が向上するとともに、低速からパワフルでスムースな加速を可能にするわけだ。

変な例え話で恐縮だが、2枚のパンで具をはさんだサンドウィッチが2組ある(パンの数は4枚)のが従来型電池の、3枚のパンで2種類の具を交互にはさんだ(パンの数は3枚)のがバイポーラ型電池の構造という感じだ。同じランチボックスにおさめるなら、パンの数が少ない分、より大量の具がはさめて一気に食べやすということになる。

●駆動用主電池
種類ニッケル水素電池
電圧(V)28.8
容量(Ah)5
個数168
総電圧(V)201.6

このバイポーラ型ニッケル水素電池が全グレードに採用されている点もまた、他車との違いと言ってよいだろう。レクサスLBXのパワーユニットは、総じて「ゆとりのある走り」を生み出すために練られ、作り上げられたものと見ることが出来るだろう。

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