単走優勝、そして総合3位入賞へ!! DUNLOPタイヤでD1に挑むチーム・ドルーピーの石川隼也(GR86)が有終の美【D1GP TOKYO DRIFT】

2023年「グランツーリスモD1グランプリシリーズ」は、11月11〜12日、東京・お台場の特設会場で第9戦と第10戦(最終戦)が開催された。名門チーム・ドルーピーは、GR86を駆る石川隼也が第9戦で完璧な走りを披露。文句なしの「単走優勝」を果たして勢いに乗る石川は、追走でもベスト4まで駒を進めて待望の3位入賞を果たした。今シーズンのファイナルラウンドの舞台で有終の美を飾った、チーム・ドルーピーの戦いを振り返る。

Photo:サンプロスD1事務局

2023年のD1GPシリーズの最後のステージを飾るに相応しい、本当に素晴らしいリザルトを残したのが石川隼也だった。石川がドライブする「広島トヨタ team DROO-P」GR86は、土曜日の第9戦の練習走行で誰が見ても分かるほど、安定した走りを見せていた。

“TOKYO DRIFT”は、普段は駐車場である特設会場に作ったドリフトコースで争う特別な一戦。5年振りの開催となったお台場は、アスファルト路面の老朽化が進み、一部アスファルトが剥がれている箇所が散見された。マシンを激しく左右に振って競技に挑むD1マシンにとって、パンピーな路面で思った走りができないことがある。また、上下に大きく跳ねて挙動が落ち着かないマシンも散見された。しかし、チーム・ドルーピーのGR86は違った。

これまでシーズンを通して、DUNLOP DIREZZA β02に全幅の信頼を置いていたチーム・ドルーピーの松岡歩監督は、この週末を迎えるにあたり、足回りのセッティングに重点を置いてきたという。

「本当に色々とかみ合った状態で週末を迎えることができました。金曜日の練習走行から石川が乗れていて、かなり高い水準からセットアップすることができたのが大きなポイントだったと思います。オートポリス戦からバネレートとスタビライザーを変更してきましたが、実際に走るまで本当に良いかどうかは分かりませんでした。しかし、事前のシミュレーションがばっちりとハマり、金曜日の練習走行ではバンプラパーをミリ単位で変えていき、最後に2mm調整してマシンが決まりました。これで荒い路面の吸収力と走行安定性のバランスがとれましたし、石川は安心してマシンを操れたと思います」

土曜日・第9戦。石川はAグループ10名中6番目の走行だった。一本目から美しく安定した走りを見せた石川は、99.2点という高得点をマーク。その後、グループBからグループDの選手が続々と走行するも、石川の得点を上回る選手は最後まで現れず、ナンバー1=単走優勝を決めたのである。

そしてベスト16戦を迎えた石川は、本戦前のパレードランでトップに登場。誇らしげにダンロップの黄色いキャップを大きく振り上げ、マシンから乗り出し笑顔で観客の声援に応えた。どこかしらに王者の貫禄を漂わせ、この日の追走への期待が次第に高まっていた。

まずは、日比野哲也との対戦。「GR86同士」の戦いとなるが、搭載するエンジンは石川がV6・2GR、日比野が直6・2JZである。別の見方をすれば、ダンロップvsシバタイヤという戦いでもあった。

石川が先行でスタートした直後、直後を走る日比野の左フロントが石川の右リヤに接触するアクシデントが発生。石川のGR86はリヤバンパーが外れ万事休す⋯というシーンに見えたが、まったく違った。バンパーを引きずりながらも各コーナーで綺麗に安定したドリフトを決めてフィニッシュラインまで走りきった。逆に接触でペースを崩した日々野は安定せず。1本目、石川96、日比野95.5。日比野はプッシングによって6点減点された。

1本目を終えた石川のGR86は、時間をぎりぎりまで使ってメカニックがリヤバンパーとダメージを負った右リヤフェンダーをガムテープで補修する。こうした緊急対応を経て2本目を迎えた石川は、今度は後追いで挑む。ヒットした右リヤタイヤに少し不安があったが、無理なく走行した石川が104.5点、ゾーン不通過もあり96点に終わった日比野を破り、ベスト8進出となった。

ベスト8は秋葉瑠世(シルビアS15)との戦いだったが、一本目に秋葉がヘアピンでハーフスピンを喫したことで得点差が付き、石川は楽勝でベスト4へと駒を進めることになった。

セミファイナル。次なる対戦相手は中村直樹(シルビアS15)。会場は夕闇に包まれ、完全なナイトランとなった。注目された戦いは。1本目=石川98、中村110、2本目=石川105.5、中村97でファイナル(決勝)進出は中村に軍配が上がった。ここで破れた石川だったが、単走優勝という結果によって総合3位入賞を決めたのである。

そして、もうひとりのダンロップユーザーである松川和也(AE85)は、予定通りマシン重量を増やし、ワンランク太い前後285/35R18サイズのタイヤを投入。マシンは見た目が大きく変貌し、タイヤの存在感が増していた。実際、コントロール性は劇的に変わった模様で、第10戦では石川と揃ってベスト16入りする健闘を見せた。まさに逆転の発想とも言えるマシンの進化を含め、最後までチャレンジングな姿勢で挑むことこそが、チームの大きな原動力となっているのだろう。

これで、2023年のD1シリーズは幕を閉じたが、チーム・ドルーピーは早くも来シーズンを見据えている。DUNLOP DIREZZA×GR86×石川隼也という組み合わせは変わらず、新たに搭載するエンジンをV6・2GRから直6の2JZにスイッチして2024年シーズンに挑むことが決まっているという。心臓部の移植により、これまで800ps程度だった最高出力が1000psオーバーに達するのだから、いやがうえにも期待が高まる。

松岡監督は力強く語る。「普段は“勝つ”“狙う”という言葉は使わないのですが、このお台場の第9戦で先が見えたと思っています。今シーズンは色々な経験をしましたし、さらにマシンを進化させればチャンピオン争いができる可能性はあるでしょう。確実に光りが見えました。なによりも、一年でダンロップタイヤが充分に上位で戦えることが証明できたことが、とても嬉しいです」と。

第9戦で見せた石川のパフォーマンスを振り返ると、2024年はシリーズ争いのメインストリームとなることは間違いないだろう。右肩上がりで調子を上げたチーム・ドルーピーは、4年振りにD1GPフル参戦を果たし、その存在を強くアピールした。いまから、2024年シーズンの活躍が楽しみである。

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