日本製鉄が特許を侵害されたと主張しているのは、「無方向性電磁鋼板」の特許だ。特殊な製造プロセスによって鉄の磁石につく特性(磁気特性)を著しく高めた「高機能材料」で、発電所の発電機、電気機器や電動車・携帯電話の振動モータ等の「鉄心(コイルの中にある鉄材、コア)」として、身の回りで広く使用されている。無方向性電磁鋼板は、特定の方向に偏った磁気特性を示さないように、鋼板の面内でできるだけランダムに結晶方位をコントロールした鋼板で、モーターなど回転機の鉄心に広く使用されている。日本製鉄はトヨタと宝山とそれぞれ協議したが解決に至らず、提訴に踏み切った。
電磁鋼板は、電動化車両のモーターに使われる、いわばコア技術。日本の競争力の源泉でもある。日本製鉄は2012年に製造技術を不正に取得されたとして韓国の製鉄会社・ポスコを訴え、その後に和解したことがある。
それぞれの訴訟の内容は次の通りだ。
1.宝鋼に対する訴訟
①損害賠償請求訴訟
1)提訴内容:約200億円の損害賠償請求
2)提訴先裁判所:東京地方裁判所
3)提訴日:2021年10月14日
2.トヨタ自動車に対する訴訟
①損害賠償請求訴訟
1)提訴内容:約200億円の損害賠償請求
2)提訴先裁判所:東京地方裁判所
3)提訴日:2021年10月14日
②製造販売差止仮処分の申立て
1)申立内容:当社特許を侵害する無方向性電磁鋼板を使用したモータを搭載した電動車の製造・販売の禁止
2)申立先裁判所:東京地方裁判所
3)申立日:2021年10月14日