新型スズキ・スペーシアカスタムの走りを郊外・市街地・高速道路で確かめた! 違いはスタイルとターボだけじゃない? 【新型スペーシア試乗・後編】

『ジャパンモビリティショー2023』でコンセプトモデルが発表され、11月22日に6年ぶりにフルモデルチェンジを果たして発売されたスズキ・スペーシア。大人気の軽スーパーハイトワゴンジャンルにおいて、スペーシアはどのような走りを見せてくれるのだろうか? 山田弘樹が富士山麓のワインディングや高速道路、そして都内一般道を走って確かめる。前編に続いてターボエンジンを搭載したスペーシアカスタムをチェックする。
REPORT:山田弘樹(YAMADA Kouki) PHOTO:MotorFan.jp/中野孝次(NAKANO Koji)

新型スズキ・スペーシアの走りをワインディング、高速道路、都内一般道で確かめた! 軽量ボディのハンドリングは◎【新型スペーシア試乗・前編】

『ジャパンモビリティショー2023』でコンセプトモデルが発表され、11月22日に6年ぶりにフ…

本革巻きステアリングのタッチと15インチタイヤがもたらす上質感

スペーシアから、カスタムのターボ仕様「XS」へと乗り換える。
走り出した瞬間に感じたのは乗り心地の変化で、ほんの少しこちらの方がNAモデルよりも上質。本革巻きステアリングのしっとりとした質感と、トーンが揃っている感じがした。

その主な原因となっているのは、15インチタイヤの採用だろう。タイヤ銘柄の差もあるが、全体的には少し落ち着きが増した印象だ。
ちなみにその足周りは、スプリングやダンパー、そしてスタビライザーやブッシュに至るまで、NAモデルと同じだという。そう考えると乗り味的にはこちらが本命で、1インチ大きなタイヤからの入力をカバーする足周りの剛性が、NAモデルだと少し硬目に出たと言えるかもしれない。

カスタムは15インチアルミホイールに165/55R15を装着。新車装着タイヤは横浜ゴムの「ブルーアースES ES32」だ。

とはいえ凹凸が激しい路面では変わらずダンピングが足りず、最終的にはNAモデル同様バンプラバーにタッチして突き上げた。
また都内の平坦では、後部座席の乗り心地は14インチの方が良かった。

ただ相対的に言えば、それはストローク量が取れないスーパーハイトワゴンとしては想定内の乗り心地だと思う。改めてホンダN-BOXとの対比もするが、スペーシアとライバルの間で大きな差はない。

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NAの素直なハンドリングに落ち着きをプラス!ターボのトルクもありがたい

パワーユニットは、64PS/98Nm(10.0kgm)を発揮する660ccの直列3気筒ターボがベースのマイルドハイブリッド。モーターの出力は3.1PS/50Nm(5.1kgm)とNAエンジン用の2.6PS/40Nm(4.1kgm)より僅かに高められているが、モーターの存在感は当然マイルドハイブリッドの域は出ておらず、黒子的にその走りをアシストしている。

カスタムのエンジンは先代と同じR06A型658cc水冷直列3気筒DOHC12バルブターボ。仕様やカタログスペックは基本的に先代から変化はないが、燃費はWLTCモードで19.8km/L→21.9km/L(FDW)/19.2km/L→19.8km/L(4WD)に向上している。

だからターボになっても、割とエンジン音はクリアに聞こえてくる。トーンは一段低めだが、NAモデルに対してプレミアム感が大きく増しているとは感じなかった。
アクセルをゆっくり開けて行けば静かだが、出足はやや鈍くなる。むしろPWRモードで踏み始めからトルクを出して、快活に走らせる方がキャラクターには合っていると感じた。

相対的な走りは、当然ターボの方がトルキー。街中でのダッシュ力が欲しかったり、高速道路で高い速度をキープしたいならやはりこちらに軍配が上がるが、きちんと交通の流れを読んでアクセルを踏み込めば、NAモデルでも大きく見劣りしない。というかNAモデル頑張ってるな! という印象だ。そこには880kgという車重の軽さが大いに利いているのだと思う。ちなみにターボの車重は910kgと、こちらも軽い。

身のこなしは基本的に同じだが、乗り心地同様NAモデルより少し落ち着きがある。ターボを搭載してノーズが少し重たくなっているのだろう、NAでは軽快だった足周りの抑えが効いて、操舵応答性がよりリニアだ。カーブでは15インチタイヤの踏ん張りも感じるし、高速巡航時の直進性も上がっている。

足周りの良さは操舵支援にも効果あり

またこの足周りが、操舵支援の追従性も大きく高めていると感じた。
システム的には広角な単眼カメラとミリ波レーダーの採用でその検知範囲が広がった。カーブの手前で減速してくれるきめ細やな制御もしてくれるようになったのだが、そもそも足周りがシッカリしているからこそこうしたシステムがきちんと動く。

カメラ位置が高いスーパーハイトワゴンでもADASセンサーがぶれないから、カーブでは修正舵が入らず挙動が安定するのだ。その切り始めこそまだレスポンスが遅くて唐突な所もあるが、自動運転ではなく操舵アシストだと考えれば、かなり頑張っているし今後の洗練に期待が持てる。

単眼カメラの搭載位置はフロントウインドウ上端中央。車種に関わらずお決まりのポジションだが、全高が高く、ウインドウ位置も高い軽スーパーハイトワゴンはその分カメラの位置も高くなる。

またシステムがアップデートされたことで、今回から右左折時の歩行者や自転車、そしてオートバイを検知して警告・ブレーキアシストを行う「デュアルセンサーブレーキサポート」がバージョンⅡへと進化。そして駐車時の衝突被害を軽減する「低速時ブレーキサポート」(前進・後退)がセーフティサポートに加わった。

センスの良いインテリアは実用性にも優れたくつろぎ空間

カスタムのインテリア

インテリアはデザインセンスが高く、ハードプラスチック然としていながらも安っぽく見えないのが素晴らしかった。
助手席側のダッシュ上部はその造形が立体的でスタイリッシュ。コロナ禍を経験して車中でご飯を食べたりくつろぐ時間が増えたことを踏まえ、ダッシュ下部は先代のボックス形状からトレータイプに改められた。

ダッシュボードのビッグオープントレーは、右手にタイプAとタイプCの2つのUSB電源を用意し、スマートフォンやデジタル機器の充電に対応。さらに、スマートフォンを置いた際に滑って行かないように間仕切りも設置されている。ビッグオープントレーの下には引き出し式のドリンクホルダーを左に、右にはボックスティッシュが収まるインパネボックスを配置するなど、使い勝手に配慮されている。

ボルドー×ブラックカラーでラウンジ感を演出したというカスタムのインテリアカラーは、走りに対してプレミアム感をちょっと高めすぎている気がするけれど、中高年以上のダウンサイザーを迎える上ではおもてなし感が出せている。
対してブラウン基調のダッシュにホワイトのトレー、そしてマット質感のカフェラテ色を組み合わせた標準車のインテリアは、シンプルかつ今風で若々しい。

標準車のインテリア

ピアノブラックトリムされた9インチモニターは液晶画面とのコントラストが見やすく、ハザードランプ位置もよく目立つ。デジタル表示に割り切った速度計も直感的に把握しやすい。ハイテンションスチールの採用で強度を確保し、細身にしたAピラー周りの視野の広さも合わせて、とても実用的で居心地のよい室内空間に仕上がっていると思えた。

インストゥルメントパネル
メーター

ひとつ注文したいのはカスタムに標準装備となった電動パーキングブレーキの制御。信号待ちでブレーキを踏み続けてくれるホールド機能も付けたのだから、サイドブレーキは自動解除しないでよいのではないかと感じた。

確かにアクセルを踏み出せば走り出せるのは快適だ。また万が一の際には誤発進抑制機能が注意喚起をして最後にブレーキを掛けてはくれるのだろう。しかしそれだって、完璧ではない。実際走り出して電動サイドブレーキが解除されないクルマに乗ると、自分も一瞬煩わしさを感じる。しかしそこで、安全が意識できる。

標準車かカスタムか? NAかターボか? 標準車にターボがあれば……

NAとターボの違いは純粋な出力差で、乗り味に大きな違いはない。そしてその価格差も僅か8万円弱だから、どうせ乗るならターボ一択! と言いたいところだが、ターボはカスタムのみの設定となっている。

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セーフティサポートは、全車標準。個人的には豪華装備のない標準仕様にアダプティブクルーズコントロールとターボを選び、スペーシアの実用性を漫喫したいところだが、それができないのは少し残念だ。とはいえ車重の軽さからNAモデルも実によく走ってくれるから、デイユース主体ならスペーシア「ハイブリッドX」で十分か……

などと、スペーシア選びはちょっと悩ましい。
装備早見表とにらめっこしながら、予算と目的にぴったり合ったグレードを探し当てて欲しい。

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著者プロフィール

山田弘樹 近影

山田弘樹

自動車雑誌の編集部員を経てフリーランスに。編集部在籍時代に「VW GTi CUP」でレースを経験し、その後は…