レクサスLBXは気持ち良く走って燃費がいいクルマと断言していい

レクサスLBXは、サイズのヒエラルキーを超えたコンパクト・ラグジュアリーとして開発された。プラットフォームはほぼ同サイズのヤリスクロスと同じTNGA GA-B。だが、そこからレクサスらしい走りのために、大幅に手が入っている。レクサスLBX、どんなクルマに仕上がっているのか?
TEXT & PHOTO:世良耕太(SERA Kota)

乗り込んだ時点で剛性が高いことがわかる

レクサスLBX Relax(E-Four)全長×全幅×全高:4190mm×1825mm×1545mm ホイールベース:2580mm
車両本体価格:486万円 試乗車はオプション込み 531万6500円 車重1400kg 前軸軸重790kg 後軸軸重610kg

「本物を知る人が素の自分に戻れるクラスレスコンパクト」をコンセプトに開発されたのが、レクサスLBXだ。LBXはLexus Breakthrough X(cross)overの頭文字をつなげたもので、サイズのヒエラルキーの概念を超えて「新たな価値を提供する」ことを目指している。

LBXの全長×全幅×全高は4190×1825×1545mmだ。GA-Bプラットフォームのベースを共有するヤリスクロス(4180〜4200×1765×1580〜1590mm)とオーバーラップする。プラットフォームを共有するとはいえ大がかりな手が入っており(詳細は後述)、ホイールベースはトヨタ・ヤリスクロス比で20mm長い2580mm、トレッドは前後ともに1570mmで、45〜55mm拡幅されている。

レクサスLBX Relax(E-Four)のインテリア

リヤフェンダーの膨らみはクルマをグラマラスに見せているし、筋肉質だ。絶対的なサイズは小さいが、存在感はあり堂々としている。上質なのは見た目だけではなく、ドアを開け閉めする度に感じられる。2021年のNXからレクサスで採用が始まった電動ラッチ(e-ラッチシステム)を採用しており、内も外もハンドルに指を当てて軽く押せば電動でロックが解除される。

ボタンを押すとガチャっと機械的な音がしてドアがスッと外に出る。この一連の動きがスマートでラグジュアリーの度合いを高めるのに貢献しているように感じる。ドアが閉まるときに、いかにも剛性と密閉感が高そうな音を発するのもいい。

電動ラッチ(e-ラッチシステム)を採用しており、内も外もハンドルに指を当てて軽く押せば電動でロックが解除される。引くのではなく、軽く押すのだ。

1 / 7

「レクサスLBXは気持ち良く走って燃費がいいクルマと断言していい」の1枚めの画像

2 / 7

「レクサスLBXは気持ち良く走って燃費がいいクルマと断言していい」の2枚めの画像

3 / 7

「レクサスLBXは気持ち良く走って燃費がいいクルマと断言していい」の3枚めの画像

4 / 7

「レクサスLBXは気持ち良く走って燃費がいいクルマと断言していい」の4枚めの画像

5 / 7

「レクサスLBXは気持ち良く走って燃費がいいクルマと断言していい」の5枚めの画像

6 / 7

「レクサスLBXは気持ち良く走って燃費がいいクルマと断言していい」の6枚めの画像

7 / 7

「レクサスLBXは気持ち良く走って燃費がいいクルマと断言していい」の7枚めの画像

LBX Relax(FFモデル)の内装

1 / 12

「レクサスLBXは気持ち良く走って燃費がいいクルマと断言していい」の1枚めの画像

2 / 12

「レクサスLBXは気持ち良く走って燃費がいいクルマと断言していい」の2枚めの画像

3 / 12

「レクサスLBXは気持ち良く走って燃費がいいクルマと断言していい」の3枚めの画像

4 / 12

「レクサスLBXは気持ち良く走って燃費がいいクルマと断言していい」の4枚めの画像

5 / 12

「レクサスLBXは気持ち良く走って燃費がいいクルマと断言していい」の5枚めの画像

6 / 12

「レクサスLBXは気持ち良く走って燃費がいいクルマと断言していい」の6枚めの画像

7 / 12

「レクサスLBXは気持ち良く走って燃費がいいクルマと断言していい」の7枚めの画像

8 / 12

「レクサスLBXは気持ち良く走って燃費がいいクルマと断言していい」の8枚めの画像

9 / 12

「レクサスLBXは気持ち良く走って燃費がいいクルマと断言していい」の9枚めの画像

10 / 12

「レクサスLBXは気持ち良く走って燃費がいいクルマと断言していい」の10枚めの画像

11 / 12

「レクサスLBXは気持ち良く走って燃費がいいクルマと断言していい」の11枚めの画像

12 / 12

「レクサスLBXは気持ち良く走って燃費がいいクルマと断言していい」の12枚めの画像

走る楽しさを感じられるハイブリッド

サイズは小さくとも、レクサスらしいラグジュアリーなムードはたっぷりだ。しかし、走り出して驚いた。見た目とは裏腹に(?)、走りに振り切れているからだ。GRヤリスの硬質でシャキッとした動きを彷彿とさせる。走り出した瞬間に剛性の高さを感じるし、車体のしっかり感は車速が増して路面からの入力が大きくなるほど強く感じられるようになる。

ステアリングを切ると、LBXは狙いどおりに向きを変えてくれる。リヤの追従遅れを感じさせず、クルマ全体が瞬時に向きを変えるイメージ。車体のコンパクトさも相まって縦横無尽に動き回れる。

エンジン 形式:直列3気筒DOHC+THSⅡ 型式:M15A-FXE 排気量:1490cc ボア×ストローク:80.5mm×97.6mm 圧縮比:ー 最高出力:91ps(67kW)/5500pm 最大トルク:120Nm/3800-4800rpm 燃料供給:PFI 燃料:レギュラー
フロントモーター:1VM型交流同期モーター 最高出力:94ps(69kW) 最大トルク:185Nm  ヤリスクロス(1NM型交流同期モーター最高出力:80ps 最大トルク:141Nm)よりパワフルなモーターを使う。
リヤモーター:1MM型交流同期モーター 最高出力:6ps(5kW) 最大トルク:52Nm

パワートレーンは、M15A-FXE型の1.5L直列3気筒自然吸気エンジンに発電用と走行用のモーターを組み合わせたハイブリッドシステムのみの設定。バッテリーはエネルギーの出し入れ性に優れたバイポーラ型のニッケル水素電池を搭載する。トヨタ・アクアの上級版が搭載するシステムをベースに、アクア(1NM)よりも高出力の走行用モーター(1VM)を組み合わせていると理解すればいいだろう(3気筒エンジンに、従来はガソリン車のみに設定していたバランスシャフトを適用するなどの違いもある)。システム最高出力は100kWだ。

アクアやヤリスクロスと違い、LBXは燃費一辺倒ではなく、「走る楽しさを感じられるハイブリッド」を目指して開発が行なわれた。もう少し具体的に表現すると、燃費よりも走りとNV(振動騒音)を優先した。燃費を優先しないわけではないが(その証拠に、2WDのWLTCモード燃費は27.7km/Lである。ヤリスクロスのGR SPORTは25.0km/Lだ)、優先順位を少し落とした。

バカッ速とは言えないが、LBXのハイブリッドシステムは気分良く走れる程度には力を出してくれる。タイヤが転がり出したあとにアクセルペダルを踏み増したときのグッと押し出してくれる瞬発力の高さは快感に直結。高速道路の料金所から本線に合流するときのような、長い加速が持続するようなシーンでの伸び感が気持ちいい。

バッテリーから持ち出す出力では足りないときはエンジンが始動して出力をアシストするが、エンジンの存在はドライバーに意識させないよう、制御で始動時の回転立ち上がりを滑らかにし、振動を抑えている。また、点火時期を遅角することで、回転0.5次や1.5次のハーフ次数成分を抑え、音の雑味を抑えてもいる。

いずれも燃費と相反する制御だが、それよりも走りとNVを優先したということだ。しかし、少しばかり燃費を犠牲にしようと、もともとが極めて効率の高いシステムなので(空力で取り戻してはいる)、周囲を見渡せば、依然として燃費のいいクルマの部類に収まっている。前述したように、2WDのWLTCモード燃費は27.7km/Lだ。LBXは気持ち良く走って燃費がいいクルマと断言していい。

制御に固有の名称は設けていないようだが、前後左右Gの状態からワインディングロードを走っていると車両が判断すると、自動的に、アクセルペダルを離したときの減速度を強める制御に切り替わる。その際、エンジンを始動させて待機回転数を保っておき、再加速する際にレスポンス良く力を発生させる。これも、走りに振りきった制御の一例。

驚くべきはシャシー&ボディの改良

これまでGA-Bプラットフォームを使っているのはヤリス、ヤリスクロス、アクア、シエンタだ(GRヤリスはGA-B+リヤセクションにGA-C)。LBXはここからこれだけボディ剛性アップの施策を施したわけだ。

驚くべきはシャシー&ボディの改良だ。LBXはGA-Bプラットフォームに対して溶接打点を増やし、構造用接着材の採用部位を拡大。これは剛性向上のため。また、人に近い部位には高減衰接着材を適用して乗り心地の向上を狙っている。「ボディは硬くて、脚(サスペンション)はしなやかに動くのが一番いい」(シャシー開発担当者)という考えのもとに実施した取り組みである。フロアを前後に走るトンネルには複数箇所にブレースを追加した。

タイヤはヨコハマADVANV61 サイズは225/55R18
E-Fourのリヤサスはダブルウィッシュボーン式
FFのリヤサスはトーションビーム式

カッコイイスタイルを実現するため、LBXは225/55R18とヤリスクロス(215/50R18)やレクサスUX(225/50R18)よりも外径の大きなタイヤを履く。そのため、前車軸を前に22mmずらした。カタログ諸元値でホイールベースがヤリスクロス比で20mm伸びているのはそのためだ。ダイヤを大きくするとフロントバルクヘッドやロッカー(サイドシル)と干渉するため、タイヤを前に出す選択をした。

ストラット式フロントサスペンションのアッパーサポートの位置を変えると生産工程面で大仕事を強いられるので、位置は変えられない(変えたくない)。となると、前車軸が前に移動したぶん必然的にキャスター角は強くなるが、もともと外乱に強くしたい思いがあったので好都合だったという。結果、キャスタートレールが大きくなって転舵するのに大きな力が必要になる。そこはコラムEPSの容量を拡大して対処した。

ベースは同じGA-Bプラットフォームのヤリスクロスでスチール鋳造品だったナックルは、軽量化のためアルミ鍛造品に置き換え、タイヤサイズ拡大にともなう重量増を相殺している。

レクサスLBXのナックル。アルミ鍛造品に変更された。
3点締結に変更されたアッパーサポート。

1 / 3

「レクサスLBXは気持ち良く走って燃費がいいクルマと断言していい」の1枚めの画像

2 / 3

「レクサスLBXは気持ち良く走って燃費がいいクルマと断言していい」の2枚めの画像

3 / 3

「レクサスLBXは気持ち良く走って燃費がいいクルマと断言していい」の3枚めの画像

ダンパー(ショックアブソーバー)とコイルスプリングの入力を受け止めるアッパーサポートは1点締結から3点締結に変更した。どこかで聞いた覚えがある変更だが、そう、進化型GRヤリスが適用したのと同じ技術である。レクサスLBXの世界初公開は2023年6月5日なので、世に出たのはこちらが先。開発もLBXが先だったという。

1点締結だとコイルスプリングの入力もダンパーの入力も同じブッシュで受け止めるため、硬くも柔らかくもできず、設計自由度に欠ける。3点締結にすると入力が分離できるため、コイルスプリングを受け止める部分は硬く、ダンパーの入力を受け止める部分は柔らかくできる。つまり、横方向には硬くして操縦安定性を向上させることができ、縦方向は柔ら約して乗り心地を良くすることができる。

限られたスペースでこの変更を実現するため、3つの締結点をコンパクトに成立させる構造を考案している(特許取得済みだそう)。

ヤリスクロスのフロントサスペンション
LBXのフロントサスペンション

素のLBXは進化型GRヤリスに準じた技術と考え方が適用されている

ドライバーの着座位置を下げたのも進化型GRヤリスと同じだ。というより、GRヤリスより先にLBXが実施している。進化型GRヤリスと同様、乗員位置が変わったのにともない衝突試験をやり直している。

ドライビングポキションの低下はGRヤリスの25mmに対し、LBXはヤリスクロス比で-15mmだ。ヒップポイントを下げて低重心にするのが狙いで、下げたドライビングポジションに合わせてステアリング位置を後方にずらし、角度を変更している。ステアリングコラムの取り付け位置を変更するのに乗じてインパネリインフォースの設計を見直し、ステアリングの取り付け剛性向上を図っている。操舵した際のしっかり感は、この設計変更も寄与しているはずだ。

アクセルペダルはオルガン式に変更されている。

レクサスとしてはスタンダードだが、ヤリスクロス比でいえば、アクセルペダルを吊り下げからオルガンタイプにしたのも変化点。フットレストもこだわりを持って設定しており、ペダル操作に力をいれやすい角度に変更している。

東京オートサロン2024では、進化型GRヤリスのパワートレーンを移植したレクサスLBX MORIZO RR CONCEPTが世界初公開された。てっきりショーモデルだとばかり思っていたが、発売に向けて鋭意開発中だそう。ボディの大幅な剛性向上に加え、3点締結のアッパーサポート、ドライビングポジションの低下など、LBXにはすでにGRヤリスばりの技術が投入されており、ポテンシャルは充分。

見方を変えれば、素のLBXは進化型GRヤリスに準じた技術と考え方が適用されていることになる。つまり、見た目はラグジュアリーだけど、その実、走りに振りきったコンパクトSUVというわけだ。

レクサスLBX Relax(E-Four)
レクサスLBX Relax(E-Four)
全長×全幅×全高:4190mm×1825mm×1545mm
ホイールベース:2580mm
車重:1400kg
サスペンション:Fマクファーソンストラット式/Rダブルウィッシュボーン式
エンジン
形式:直列3気筒DOHC+THSⅡ
型式:M15A-FXE
排気量:1490cc
ボア×ストローク:80.5mm×97.6mm
圧縮比:ー
最高出力:91ps(67kW)/5500pm
最大トルク:120Nm/3800-4800rpm
燃料供給:PFI
燃料:レギュラー
燃料タンク:36L
フロントモーター:1VM型交流同期モーター
最高出力:94ps(69kW)
最大トルク:185Nm
リヤモーター:1MM型交流同期モーター
最高出力:6ps(5kW)
最大トルク:52Nm
バッテリー:ニッケル水素電池
電圧:28.8V
電池容量:5Ah
総電圧:210.6V
燃費:WLTCモード 26.2km/L
 市街地モード24.7km/L
 郊外モード:28.8km/L
 高速道路:25.3km/L
車両本体価格:486万円
試乗車はオプション込み 531万6500円

レクサスLBX Relax(FF)

レクサスLBX Relax(FF)車両本体価格:460万円 試乗車はオプション込み 520万8300円
車重1320kg 前軸軸重790kg 後軸軸重530kg

1 / 7

「レクサスLBXは気持ち良く走って燃費がいいクルマと断言していい」の1枚めの画像

2 / 7

「レクサスLBXは気持ち良く走って燃費がいいクルマと断言していい」の2枚めの画像

3 / 7

「レクサスLBXは気持ち良く走って燃費がいいクルマと断言していい」の3枚めの画像

4 / 7

「レクサスLBXは気持ち良く走って燃費がいいクルマと断言していい」の4枚めの画像

5 / 7

「レクサスLBXは気持ち良く走って燃費がいいクルマと断言していい」の5枚めの画像

6 / 7

「レクサスLBXは気持ち良く走って燃費がいいクルマと断言していい」の6枚めの画像

7 / 7

「レクサスLBXは気持ち良く走って燃費がいいクルマと断言していい」の7枚めの画像
レクサスLBX Relax(FF)
全長×全幅×全高:4190mm×1825mm×1545mm
ホイールベース:2580mm
車重:1310kg
サスペンション:Fマクファーソンストラット式/Rトーションビーム式 
駆動方式:FF
エンジン
形式:直列3気筒DOHC+THSⅡ
型式:M15A-FXE
排気量:1490cc
ボア×ストローク:80.5mm×97.6mm
圧縮比:ー
最高出力:91ps(67kW)/5500pm
最大トルク:120Nm/3800-4800rpm
燃料供給:PFI
燃料:レギュラー
燃料タンク:36L
フロントモーター:1VM型交流同期モーター
最高出力:94ps(69kW)
最大トルク:185Nm
バッテリー:ニッケル水素電池
電圧:28.8V
電池容量:5Ah
総電圧:210.6V
燃費:WLTCモード 27.7km/L
 市街地モード28.1km/L
 郊外モード:29.8km/L
 高速道路:26.4km/L
車両本体価格:460万円
試乗車はオプション込み 520万8300円

キーワードで検索する

著者プロフィール

世良耕太 近影

世良耕太

1967年東京生まれ。早稲田大学卒業後、出版社に勤務。編集者・ライターとして自動車、技術、F1をはじめと…