“スポーツ”じゃなくても新型スイフトの走りはスポーティ!? しかも高速も後席も快適だった! スズキの世界戦略車はオールラウンダーだ!

2023年11月9日にフルモデルチェンジされたスズキのコンパクトカー「スイフト」。日本を代表するコンパクトカーの1台であり、スズキの世界戦略車でもあるこの一台が、フルモデルチェンジによりどのように変わったのかはこれまで色々な視点から紹介してきた。今回はいよいよその"走り"について、山田弘樹氏のドライブで確かめてみた。その走りはどのような進化を見せたのだろうか?
PHOTO:MotorFan.jp/中野幸次(NAKANO Kouji)

“スポーツ”の影を払拭するデザインライン

『ジャパンモビリティショー2023』ではコンセプトモデルと銘打ちながらも、ほぼほぼ市販車としてそのデザインとスペックをお披露目し、様々な話題を呼んだ新型スイフト。Bセグメントのコンパクトカーとしては先代モデルの面影を目元やグリルに残しながらも、そのディティールはクラムシェルタイプのボンネットを基軸に大胆なラウンドデザインを打ち出して、グラマラスだったその印象を、シャープに引き締めた。

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こうしたデザインの変遷について開発陣は、先代モデルで取り逃がしたユーザーの獲得を語った。スイフトスポーツの影響も強かったのだろうスイフトは「走り好きなユーザーが買うクルマでしょ?」と、敬遠されるケースが少なからずあったのだという。

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それはスバルのレヴォーグが、「レイバック」を派生させた理由にも似ている。気合いが入りすぎたルックスやインテリアを、いまいちど洗練させたというわけだ。

そのデザインの方向性に反して走りはスポーティ

ということで見た目を改めた新型スイフトを試乗したわけだが、これが予想に反してかなりスポーティな乗り味になっていたのには、ちょっと驚いた。

スイフト「HYBRID MZ」(FWD)

試乗車は、マイルドハイブリッドモデルの上級グレードとなる「HYBRID MZ」。パワーユニットは1.2L直列3気筒ターボ(82PS/108Nm)に直流モーター(3.1PS/60Nm)の組み合わせで、トランスミッションは今回CVTだったが、ハイブリッド「MX」(FWD)には5速MTも用意される。また試乗車の駆動方式はFWDだったが、フルタイム4WDも全グレードで選択可能だ(5速MT+4WDのみ設定なし)。

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乗り心地は、走り出しからシャッキリと硬めだ。
硬さの主軸となるのはエコタイヤ(ブリヂストン「エコピアEP150」)の縦バネだが、サスペンションもこの剛性にトーンを合わせて、トータルでメリハリを出していた。

純正装着タイヤはブリヂストン「エコピアEP150」。試乗車のサイズは185/55R16で16インチのアルミホールに装着される。

また車重も950kgと軽いからか、タウンスピードでも荒れた路面である程度のハーシュネスを許す。
しかしその一方で、タイヤは良く転がる。ちなみにその燃費性能は先代から3.1km/Lアップした、24.5km/Lとなった(WLTC値総合)。

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新開発となった1.2L 3気筒エンジンの評価は、開発陣が最も気にする部分だろう。しかし結論から言えば、筆者はそこにネガティブを感じなかった。

新開発のZ12E型1197cc水冷直列3気筒DOHC12バルブエンジンにISG(モーター機能付発電機)を組み合わせたマイルドハイブリッドを搭載(HYBRID MZ、HYBRID MX)。

マイルドハイブリッドゆえにコールドスタートでは、まずエンジンが“ブルン”と掛かる。しかし車体の遮音性の高さと、エンジン自体の振動の少なさから、走り出してしまえば車内は普通に静かだ。Bセグメント車のストロングハイブリットは起動時こそ無音だが、モーターのみで走れる時間はほんの僅か。だから、そこに大差はないと思えた。

街中では割とモーターが多めに活躍し、ふとした加速でも素早くトルクを補ってくれる。感心したのはこのモーターとCVTの協調制御で、アクセルの踏み込み量に対して加速感がずれがないこと。CVT特有のラバーバンドフィールは感じなかった。

トランスミッションはハイブリッドに合わせた新開発の高効率CVT。
CVT車はステアリング裏にパドルシフトを備える。

アクセルを閉じると回転が落ちて、スーッとコースト(滑走)。再びアクセルを踏んでも、トルクが瞬時に追従してくれた。
カーブが続く場面でのハンドリングは、まさに適度なキビキビ感。
ブラシレスモーターとなった電動パワステの感触もナチュラルで、ハンドルを切った通りに、素直に曲がって行く。

曲率が高いコーナーではブレーキで少しフロント荷重を乗せて行かないと応答が遅れるけれど、それこそがダンパー減衰力を高め過ぎていない証拠だ。むしろそうやって操作する運転は対話のようで楽しいし、タイヤをしっとりした銘柄に変えたら、もっと乗り心地が良くなるだろうと予測できた。

高速巡行も後席の居住性も良好

高速巡航も、直進性が高く快適だ。
アダプティブ・クルーズ・コントロールは、車線中央を操舵支援を効かせながらキープし続けてくれた。試乗路にきついカーブはなかったが、コーナー手前ではじわりと減速をしてくれたし、操舵支援のステア裁きも慎重派で好感が持てた。シッカリとした足周りを持つおかげで、単眼カメラとミリ波レーダーのブレも少ないのだろう。

またエンジンも、街中同様に静かだった。小排気量エンジンの常用域となる2000~3000回転での音量が小さく、クルージング状態ではさらに回転を低めてくれる。絶対的な加速力はないが、出足の良さがそれを補ってくれる。

リアの居心性も、相変わらずいい。
シャシーはキャリーオーバーで全高(1500mm)とホイルベース(2450mm)も変わりはないが、天井は高く、膝周りやつま先周りのスペースも広くて、ライバルと比べても解放感が高い。

筆者自身(身長171cm)が後席に座った状態。

乗り心地は、フロント同様ちょっとだけ硬めだ。フロアの微振動やロードノイズは上手に抑えられており、その分ハーシュネス(突き上げ)をはっきり感じる乗り味である。ただその入力も、短い時間でピシッと収まる。まだ1000kmも走らせていない新車だから、もっと走り込めばさらに良い感じに馴染むだろう。また長く乗っても、ヤレが少なそうな印象だ。

“スポーツ”でなくともスポーティな印象

総じて新型スイフトは、スポーティに生まれ変わった。
先代ハイブリッドのまったりとした足周りを知るユーザーは、その変わりっぷりには驚くかもしれない。
「走りのクルマというイメージを脱却したい」という割に走りがスポーティなのは、矛盾しているようだがわかる気がする。

言葉遊びのようだが「走りのクルマだと敬遠して欲しくない」だけであり、新型スイフトの魅力は気持ち良い走りにあるのだと開発陣は述べていた。

だから新型スイフトをして、「乗り心地が悪くなった」と評価する声は多くなるだろう。しかし筆者は、このシャッキリ感こそが新型スイフトの良さだと思えた。スズキのターゲットユーザーは活動的なZ世代の若者で、この乗り心地を硬いと騒ぐオジサンではないのだ。
その証拠にカタログの背表紙には、イメージカラーのブルーをまとったスタイリッシュな女性がキーを握っている。

新型スイフトのカタログの裏表紙。表紙と続きになっており、見開くと女性はスイフトの運転席側に立っている構図になる。
こちらがカタログの表紙。よく見ると女性の影が運転席側のヘッドライト付近に伸びていて続き写真なのがわかる。

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著者プロフィール

山田弘樹 近影

山田弘樹

自動車雑誌の編集部員を経てフリーランスに。編集部在籍時代に「VW GTi CUP」でレースを経験し、その後は…