今、フィアット・デュカトが熱い! バリエーション豊かなカスタムが魅力のイタリアン・キャンパー【ジャパンキャンピングカーショー2024】

2024年2月2日~5日に幕張メッセで開催されたジャパンキャンピングカーショー2024は、5つの展示ブースを使って盛大に行われ、4日間合計で51,000人超の来場者で賑わった。その中でバリエーション豊かなカスタムで存在感を誇示していたのが、「フィアット・デュカト」をベースとしたキャンピングカー。広大な荷室スペースを生かしてカスタムされた空間には、どのような世界が広がっていたのかレポートしよう。
REPORT&PHOTO 小原裕一郎(OHARA Yuichiro)

正規輸入されるフィアット・デュカトのボディタイプは3種類

「フィアット・デュカト(以下、デュカト)」は、1981年に誕生した「LCV(Light Commercial Vehicle)」と呼ばれる商用バンだ。日本では、2017年のジャパンキャンピングカーショーで参考出品されたことで知られるようになり、2022年2月に正規輸入されるようになった。

現行型は2014年にリリースされた6代目となるが、この10年間にさまざまな改良を受けて、信頼性や使い勝手は熟成の域に達している。

ボディタイプは、全長5410mm×全幅2055mm×全高2525mmnの「L2H2」、全長5995mm×全幅2055mm×全高2525mmの「L3H2」、全長5995mm×全幅2055mm×全高2765mmの「L3H3」の3タイプ。1番コンパクトな「L2H2」でもハイエースのスーパーロングの全長より30mmほど長く、かなり大柄なボディであることがわかる。

パワートレインは、どのタイプにも直列4気筒 2.2ℓインタークーラー付ディーゼルターボエンジン(132ps/450Nm)を搭載。駆動方式はFFで、トランスミッションは9速ATのみの設定となっている。

デュカトの架装前の荷室スペースは、鉄板やフレームがむき出しになっており、むしろカスタムには便利な構造となっている。

キャンピング仕様からビジネス仕様まで幅広いカスタムが勢ぞろい

ここからは、ジャパンキャンピングカーショー2024に出展されていたデュカトのカスタム事例を紹介していこう。昨年は、輸入が開始されたばかりだったこともあって、さほど多くの出展はなく、カスタム事例も少なかった。しかし、今年は会場の至るところにデュカトが鎮座していて、キャンピング仕様からビジネス仕様に至るまで、さまざまなバリエーションを見ることができ、今年の“イチオシ”という印象だった。

デュカトの正規ディーラー各社は、数多くのデュカト・カスタム車両を出展。今年のキャンピングカーシーンはデュカトが熱い!

【WHITE HOUSE CAMPER】

愛知県に本拠を構え、国産車から輸入車まで、さまざまなカテゴリーのキャンピングカーを製作・販売している「WHITE HOUSE CAMPER」のブースには、5タイプのデュカト・カスタムが展示されていて、とても見応えがあった。

■DUCATO CREW CAB TERRACE

「WHITE HOUSE CAMPER」のブースで一番注目を浴びていたのが、スライド式のフロアボードや大型のオーニングを装備した「DUCATO CREW CAB TERRACE」。リアに展開できる巨大なフロアボードは、まるで移動式のウッドデッキのようで、オーニングとともに短時間でくつろぎの空間を作ることができる。ベース車両は「L2H2」と「L3H2」の2タイプがあり、室内に設けられたベッドスペースには「L2H2」で2名、「L3H2」は3名の車中泊が可能だ。

一般的なキャンピングカーのようにトイレやシャワーはないが、一方でアウトドアを満喫できる広々とした空間が確保されており快適性は抜群!
スライド式のフロアボードを展開すると、高級感のあるくつろぎ空間に変貌する。室内と屋外をシームレスに繋ぐことができる素晴らしいアイデアだ。

■DUCATO×CARGO CLIPS(参考出品)

環境に配慮した天然木材を使用した有孔ボード「クリップウォール」と特許取得済の「マルチクリップ」を組み合わせ、ユニークな車両架装システムを開発したオーストリアのカーゴクリップスとのコラボ車両。独自の架装システムによって、収納棚、引き出し、キッチン、ベッドなどさまざまなモジュールを自由かつ安全に固定でき、限られた車内空間を最大限に有効活用することが可能。これまで諦めていたデザイン性と実用性の両立も実現されており、オーナー自らが好みの用途にカスタムできる。

室内のパネルは、すべてマルチクリップ仕様となっていて、専用のフックを利用してさまざまなものを取り付けることができる。
リアハッチゲートにもマルチグリップボードが張り付けられており、とても便利そうだ。1穴当たりの耐荷重は90~150㎏と強度もッチリ!
断熱材は100%羊毛を使用。ボードにはたくさんの穴が開いているので、湿気が抜けやすく、パネル内側に発生しやすいカビをシャットアウトしてくれる。

■DUCATO CREW CAB

デュカトのオリジナルモデルは2人乗りだが、ベーシックモデルの「CREW CAB」は、荷室との隔壁(固定窓付き)を設けたうえで3人掛けシートを設置し、5人乗り仕様としている。それでも荷室は広大なスペースがあり、バイクを載せるなど、さまざまな用途に利用することが可能だ。

ちなみに、「L2H2」の荷室サイズは奥行1900mm×全幅1800mm×高さ1900mm、「L3H2」は奥行2500mm×全幅1800mm×1900mmと十分な広さがあるので、車中泊スペースとしても活用可能。とりわけ、高さが1900mmあるので、車内で立って移動できる点は嬉しい。

荷室側に隔壁を設けることでプラス3人の乗車スペースを確保。足元・横幅とも十分なスペースがあり、天井も高いので、開放感は抜群だ。
荷室スペースはバイクを2台搭載しても余裕の広さだ。天井高が1900mmあるので、バイクや重い荷物を出し入れする際は立ったまま作業ができ、とても便利だ。

■DUCATO CAMELOT

イタリアのGEMA社と日本独占販売契約を結び、スタイリッシュでありながらプロの厳しい要望を叶えたビジネスユースのカスタム車両。車内には、同社が開発したプロ仕様の質実剛健なツールラックが整然と設置してあり、まるでスナップオンの移動販売車のような雰囲気で、メカ好きな男心をくすぐる仕様となっている。

ルーフにはラダーラックシステムが装備されており、ラダーなど長尺物を載せることができる。「GEMA」のロゴやプリントもカッコイイ!
荷室スペースにはGEMA社のアルミ製ツールラックが両サイドに設置してあり、中央に広い通路もあるので、使い勝手はとてもよさそうだ。

DUCATO VERONA

「VERONA」は電動ベッドのほか、トイレやシャワーなどのサニタリーユニット、キッチンスペースなどを装備したモダンかつ贅沢な仕様が特徴のキャンピングカー。観音開きのリアゲートの特徴を最大限に生かし、サニタリーユニットを最後部に配置することで外からのアクセスが容易になっている。また、サニタリーエリアとリビングスペースは扉で仕切ることができるので、リビングスペース側の快適性を常に保つことができる。これは、ありそうでなかった構造でナイスアイデアだ!

リビングスペースは上質な素材をふんだんに使ったゴージャスな造りとなっており、電動ベッドで1名、ポップアップルーフ内のベッドスペースで2名が就寝できる。
サニタリースペースを最後部に配置してあるので、アウトドアで汚れた身体を綺麗にしてから車内へ立ち入ることができる。素晴らしいレイアウトだ!

【トイファクトリー】

岐阜県に本拠を構える同社は、2年連続でキャンピングカーアワードを受賞したNEWS 小山慶一郎さんに車両を提供したことでも有名なキャンピングカー・ビルダーだ。今年のショーでも広大なブースにデュカトのほか、数多くのキャンピングカーを展示しており、多くの来場者の注目を浴びていた。

■DUCATO×Eversys×bott(参考出品)

DeLonghi(デロンギ)社の業務用フルオートコーヒーマシーンEversys(エバシス) を、ドイツbott社のキャビネットシステムを利用して製作したデュカトベースのカスタム車両。コンセプトは移動事務所となっているが、コーヒーの移動販売車としても十分使えそうだ。

カスタムの幅が広いデュカトは、キャンピングカー以外にも移動販売車やリモートワークなど拠点としても利用できるマルチパーパス性が最大の魅力だ。
Bott社のキャビネットシステムは、約25,000点のパーツから用途や好みに合わせてフレキシブルに構築できる優れた車載用ユニットだ。

【RVランド】

茨城県に本拠を構える同社は、ドイツの老舗キャンピングトレーラーメーカーの「HYMER」をはじめ、国内外のキャンピングカーを数多く取り扱っているほか、オリジナルキャンピングカーの製作やキャンプ場の運営など、キャンピングカー業界で幅広いビジネスを展開。デュカトの正規販売ディーラーのひとつで、前述の「WHITEHOUSE」の車両も取り扱っているなど、以前からデュカトと深い関わりがある。

■DUCATO LOUNGE

天然木をふんだんに採用し、暖かみとリッチさをバランスよく兼ね備えたRVランドのニューモデル。回転収納式テーブルやソファを装備することで、ビジネスユースにもレジャーユースにも利用できるモダンな空間に仕上げている。

「DUCATO LOUNGE」の車内は、床から天井まで天然木で覆われていて高級感と暖かみがあり、まるでオフィスの商談スペースのようだ。
観音開きのリアハッチゲートを持つデュカトは、車両後部からも出入りができるので、使い勝手は極めてよい!

今回は、「ジャパンキャンピングカーショー2024」に出展していたデュカトにフォーカスしてレポートしたが、ベース車両は鉄板やフレームがむき出しの状態であるうえ、持ち前の大柄のボディも手伝ってカスタムの自由度が高く、キャンピングカーのカスタムベースとしては打って付けのクルマだ。

しかも、ベース車両の価格は5,295,000円からと安価なので、キャンピングカーユースに限らず、ビジネスユースとしても導入のハードルが低く、この点でもポイントが高い。各社がこぞって本格的なカスタムに乗り出した今年は、フィアット・デュカトから目が離せないだろう。

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著者プロフィール

小原 裕一郎 近影

小原 裕一郎

メディアプランナー&ライター。メディア業界でテレビ視聴率調査、マーケティング(リアル&デジタル)、…