新型Eクラス、ベストどれだ? PHEV、ガソリン+ISG、ディーゼル+ISGの3つのパワートレインを試乗

新型Eクラスはエンジンとモーターの魅力的な共存に注目せよ!

メルセデス・ベンツの中核を担うEクラスがフルモデルチェンジ。BEVに軸足を移そうとしている中、エンジンをメインに据えるEクラスは果たしてどのようなクルマに仕上がっているのか?
写真:編集部/メルセデス・ベンツ

ふたつのボディに3つのパワートレインをラインナップ

「Eクラス」という名称では今回の新型は6代目になるが、メルセデス・ベンツによればその起源は1946年に発表されたW136型に遡る。以来、常に革新的な技術を導入し続け、世界に対してプレミアムセダンのあるべき姿を示し続けてきたのだ。
そんなEクラスの最新モデルは全車が電動化され、プラグインハイブリッド、あるいは電動モーターのISGを搭載することになった。そして助手席ディスプレイを一体型にしたMBUXスーパースクリーンやサードパーティー製のアプリを使える最新世代のMBUX(メルセデス・ベンツ ユーザーエクスペリエンス)を採用するなどユーザーインターフェイスを大幅に進化させているのが特徴だ。

ラインアップとしてはセダン、ステーションワゴン共に、204ps/320Nmを発揮する2.0L直4ガソリンターボを搭載するE200 アバンギャルドと、197ps/440Nmを発揮する2.0L直4ディーゼルターボを搭載するE220d アバンギャルドを用意。いずれのモデルでも17kW/205NmのISGがサポートしてくれる。そしてセダンにのみ、204ps/320Nmの2.0L直4ガソリンターボに、95kW/440Nmを発揮するモーターを組み合わせたプラグインハイブリッドのE350 e スポーツEdition Star(以下E350e)が設定されている。
トランスミッションは全車9速ATで、駆動方式はFRのみの設定だ。

E350 e スポーツ Edition Star 2.0Lガソリンターボのプラグインハイブリッドだ。
E200 ステーションワゴン アバンギャルド 2.0LガソリンターボをISGがアシストする。
E220 d アバンギャルド 2.0Lディーゼルターボ+ISGというパワートレイン。

伸びやかなフォルムと各部に散りばめられたスリーポインテッドスター

まずは外観から見てみよう。ボディサイズは全長4960mm×全幅1880mmという堂々たるサイズ。全高はE350eスポーツ Edition Star(以下E350e)のみ1485mmで、他は1470mmだ。そしてホイールベースは2960mmもあり、オーバーハングを短くまとめたフォルムはBEVもかくや、と思わせるものだ。

フロントマスクは、ヘッドライトとグリルをつなぐハイグロスブラックの仕上げがEQシリーズを思わせ、BEVとICE搭載モデルも等しくメルセデス・ベンツのクルマであることをアピールしているようにも思える。
グリル内に散りばめられた無数の小さなスリーポインテッドスターにも注目!
全車にオプション設定されるウルトラハイビーム付きデジタルライトは、100万個以上の微少な鏡により光を屈折させることで照射方向を定める。またE350eには、夜間走行中に車線をはみ出しそうになると、ヘッドライトが車両前方の路面に矢印を写しだして警告するという、日本初の機能もオプションで用意されている。
テールランプには、新しくスリーポインテッドスターをモチーフとしたツーピース型LEDリヤコンビネーションランプを採用。

インパネを埋め尽くすかのようなMBUXスーパースクリーン

車内に乗り込んでみると、これまでEQシリーズにのみ設定されるだけだった助手席一体型ディスプレイのMBUXスーパースクリーンが目に飛び込んでくる(全モデルにオプション設定)。最新MBUXはサードパーティー製のアプリケーションをインストールできるようになっていて、車載のビデオカメラを使えば車内からzoom会議に参加することも可能なのだとか。また、これまで「Hi、メルセデス」をキーワードに音声アシスタントを立ち上げていたが、一人で乗っている時は「Hi、メルセデス」のキーワードがなくても音声操作が可能になっている。この機能に気がついたのは、筆者が運転中に気がついたことをボイスメモへ吹き込んでいたとき。突然メルセデスアシスタントが喋り始めたので何事かと思ったのだが、どうやらドライブ中のつぶやきを音声入力と思ったらしい。一人で運転している時に歌うことが多い人はご注意を!?。

センター部分と左右部分のエアコンアウトレットはインパネ上部の輪郭に沿って繋がっており、センターと助手席ディスプレイがまるで一体の大画面のように浮かび上がる。
サウンド面では新しくBurmaster4D サラウンドサウンドシステムが採用された。これはフロントシートに震動機能を組み込み、音楽に合わせて震動するというもの。シートがビシビシとキレの良い震動をドライバーに伝えてくれる。17個のスピーカーがつくり出すサウンドと共に身体中を包み込むかのようなサラウンド体験はちょっとクセになりそう。
シートはオプション設定のレザーエクスクルーシブパッケージで装着されるトンカブラウンのナッパレザー。2960mmのホイールベースのおかげで、後席の膝前空間は握りこぶしがふたつは余裕で入りそうなほど。前席下への足入れ性も良く、後席乗員へのおもてなし度は高い。写真はE350e。
こちらはステーションワゴンのシート。後席頭まわりの空間はこちらの軍配が上がるが、足元空間にセダンとステーションワゴンの違いは無い。
E350eのラゲッジはバッテリーの分、床が高くなっており、通常時の荷室容量は370lと少し物足りないところ(E200/E220dセダンは540l)。
ステーションワゴンでは通常時で615l、最大で1830lの荷室容量を誇る。

E350eが見せる、3つの走りのカオ

それでは走りはどうだろうか? とはいっても筆者は一編集者に過ぎず、あくまでも”人よりも多少クルマに触れる機会の多い市井のクルマ好き”というレベルでの印象であることをご了承いただきたい。
さて、最初にステアリングを握ったのは350eだ。先ほど説明したようにプラグインハイブリッド車であり、最大で112kmのモーター走行が可能である。

エレクトリックモードでの振る舞いはEQEを走らせているかのようだ(ロードノイズはEQEより多少大きいようにも感じたが)。440Nmの最大トルクは2170kgの車重を感じさせずに、文字通り滑るように車速を乗せていく。
ハイブリッドモードでは極めてスムーズにエンジンとモーターを切り替えていく。身近な例で言えば、トヨタのハイブリッドシステムのような高い完成度の制御が行われている、という印象だ。

そしてダイナミックモードに切り替わると、エンジンは常時稼働して存在感を一気に高める。アクセルを踏み込めばトルクが瞬時に湧き上がり、ペダルで直接クルマを動かしているようなモータードライブならではのダイレクト感に、ICEでしか味わえないエンジンサウンドの高まりが被さって気分を高揚させてくれる。有段ギヤの9速ATはコーナーでもギヤを低く保ってくれるので、より一体感を高めてくれていることも見逃せないポイントだ。

ステアリングはダイナミックモードになると手応えを増すが、切り込んでいく時の滑らかさは変わらない。そして2960mmというロングホイールベースを意識させずにスルリと向きを変えてくれるのは、4WSのリア・アクスルステアリングの恩恵が大きいはず(E350eにオプション設定)。恥ずかしながら乗っている時は4WSが搭載されていることに気がつかなかったのだが、ステーションワゴンに乗り換えてから、4WSがE350eのハンドリングに貢献していたことに気づかされたのだった。ちなみに高速道路でのしっかりとした直進安定性も印象的だったのだが、やはりこれも4WSの効果が現れていたものだろう。

次に試乗したのはE200ステーションワゴンだ。E350eに対し、ガソリンエンジンは同じだがISGは17kW/205Nmと控えめな数値。ハイブリッドモードであってもエンジンが主体となるが、ISGの205Nmというトルクのおかげでゆとりある加速を見せてくれるのが印象的だ。コーナーでは4WSがないことと、ワゴンボディということもあってE350eに較べるとさすがにリヤが多少付いてこないような印象があった。ただ、これはある程度の横Gを感じるようなシチュエーションで、E350eと比較すれば……の話。通常のペースであれば吸い付くような安定感と安心感で距離を稼いでくれる。

最後に乗ったのはE220dのセダン。こちらはディーゼルエンジンなのだが、ディーゼルを意識したのは、ちょっと強めにアクセルを踏み込んだ時に聞こえるカラカラ音くらい。あとはガソリン車とさほど変わること無く、それでいてちょっとキツ目の登り坂では大きくアクセルを踏み込まずとも、腰を押してくれるかのような分厚いトルク感で軽々と登っていく。この完成度の高さは、E200かE220dを選ぶとしたら大いに迷いそうだ。

この3台を試乗した後で感じたのは、「ああ、いいクルマに乗ったな」という充実感。具体的にここがこうでコレが……という表現が出来ないのは恥ずかしい限りだが、贅沢して美味しいものを食べた後の満足感のような……といったらわかってもらえるだろうか? もし新型Eクラスのオーナーになれば、これがクルマに乗る度に味わえるのかと思うと羨ましい限りだ。

新型Eクラスラインアップ
■セダン
E350 e スポーツ Edition Star:988万円
E220 d アバンギャルド:921万円
E200 アバンギャルド:894万円
■ステーションワゴン
E220 d ステーションワゴン アバンギャルド:955万円
E200 ステーションワゴン アバンギャルド:928万円

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著者プロフィール

大津 英昭 近影

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