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ホンダN-BOX、スズキ・スペーシア、ダイハツ・タントの美点とは?
2021年度、2022年度の軽自動車販売ランキングは、1位がホンダN-BOX、2位がダイハツ・タント、3位がスズキ・スペーシアという順位で、2023年度はN-BOX、スペーシア、タントという順だった。タントは、2019年7月にフルモデルチェンジを受け、N-BOXは2023年10月、スペーシアは翌11月に全面改良されている。今回は、軽自動車の中でも売れ筋の軽スーパーハイトワゴン3台をチェックした。
ダイハツは、認証不正問題で全車種出荷停止という事態に陥っていて、2023年度は18年ぶりにスズキに軽自動車首位の座を受け渡したことも、スペーシアとタントの順位変更に影響を及ぼしているはずだ。しかし、2024年4月23日には、認証不正問題に関する再発防止策の四半期進捗報告のほかに、一部報道で全車種出荷再開が報じられている。ダイハツ車もオーダーできるようになり、2024年度も巻き返しなるかが注目だ。
王者N-BOXの人気に陰り!?
1位の王者N-BOXは、モデルチェンジの前後でも売れまくっていて、安泰のように思えるが、2024年に入ってから前年同月比を見ると、1月は88.1%、2月は84.2%、3月は73.2%と明らかに失速している。ホンダを代表する車種であり、ブランド化したN-BOXは、軽スーパーハイトワゴンというライバルとは違う土俵でも戦っていて、コンパクトカーやコンパクトワゴン、コンパクトミニバンなどとも競合しているはずだ。とはいえ、新型N-BOXの価格帯は164万8900円~236万2800円。先代(2代目)の138万5640円~208万80円から大幅に高騰している。新車価格の上昇は、N-BOXだけではないものの、ひと昔前までのターボ車の最上級仕様で、乗り出し250万円前後から新型N-BOXでは、300万円に迫っていて、新型では「カスタム」のみに設定されたターボ車を指名すると、ベースグレードでも205万円に迫る。
価格に敏感な層は、153万円100円~219万3400円の新型スペーシアに流れたり、今夏で5年目を迎えるタントに絞ったりするニーズも当然あるだろう。
走りの質感でライバルをリードするN-BOX
しかし、N-BOXはライバル2台に対して、乗ってみると価格相当の走りの質感を備えているのが実感できる。新型同士になるスペーシアと比べても、街中での乗り心地の良さはもちろん、高速道路でのフラットランドな乗り味や操縦安定性の高さ、そして、乗り心地や快適性、静粛性などを左右するNVH(ノイズ、バイブレーション、ハーシュネス)の低減でもN-BOXが一歩も二歩もリードしている。N-BOXのNAエンジンは、「ハイブリッドなし」にもかかわらず、58PS/65Nmというスペックを実現。
マイルドハイブリッド化されているスペーシアは、エンジンの49PS/58Nmに、1.9PS/40Nmのモーターのアシストがあっても短時間(限定的であり)、しかも平坦路での街中での加速時に実感できる範囲に収まっている。こうしたシーンでも力感ではN-BOXが上で、それが郊外のバイパスや高速道路ではより差が顕著になる。ターボ車は自主規制により両モデルともに最高出力は64PSに制限されていて、N-BOXは104Nm、スペーシアは98Nmという最大トルクを得ている。スペーシア・ターボには、2.3PS/50Nmというモーターによる加勢があるものの、街中も高速道路も含めて力感ではNAエンジンと同様に上という印象を受ける。
価格と後席快適性、積載性のバランスがいいスペーシア
とはいえ、そこまでの走行性能は不要というニーズに、価格面も含めてスペーシアは巧みに応えている。最新の先進安全装備をはじめ、後席に「オットマン」や「座面延長モード」、「荷物ストッパー機能」という1人3役を与えた「マルチユースフラップ」を設定するなど、後席の快適性向上にも注力。後席背もたれを前倒しした際の段差を抑え、自転車の積載性が向上するなど、軽スーパーハイトワゴンに求められる利便性の高さを、価格に配慮しながら実現している。
また、使い勝手の面では、N-BOXは新型になりポケッテリアの数を減らしたが、かゆいところに手が届くのはスペーシアの方だ。助手席前のアッパーボックスなど数も多く、容量も大きい。さらに、前席裏にあるパーソナルテーブルは、スマートフォンやタブレットを立てかけることのできるストッパー、幼児用マグや500mLの紙パックも収まるドリンクホルダーが付くなど、小物などの荷物が多くなる子育て層にとって便利な装備が多く用意されている。
荷室の使い勝手を高めたマイナーチェンジ後のタント
根強い人気を誇るダイハツ・タントは、助手席ピラーイン構造の「ミラクルオープンドア」が最大の魅力だ。乗降性の高さだけでなく、後席にベビーカーなどの大きな荷物を載せる際も重宝する。テールゲートを開けなくても助手席側だけで事足りてしまうことも多そうだ。2022年10月のマイナーチェンジで、荷室側からも後席の前後スライドが可能になり、荷物の大きさや量に応じたアレンジのしやすさが格段に向上している。
加えて、新たに上下2段式デッキボードを備え、荷物や用途に応じて上段どちらかに設置できる。上段にすれば、後席バックレスト前倒し時にフラットになり、下段にすれば荷室を上下に仕切ることが可能。このデッキボードは、脱着式になっていて、キャンプなどのアウトドアでミニテーブルとしても使えるなど、荷室まわりの使い勝手を高めている。
走りだけ切り取れば、N-BOXがライバルをリードしているが、予算も当然あるだろう。軽自動車の3強は、似通っているようで、それぞれ価格戦略も含めて独自路線を進んでいる。予算も含めてニーズに合ったチョイスをしたいところだ。