打倒、日産エルグランド!のトヨタ高級ミニバン「アルファード」は336万円以上するも大ヒット【今日は何の日?5月22日】

トヨタ・アルファード
トヨタ・アルファードG MS
一年365日。毎日が何かの記念日である。本日5月22日は、1997年に日産からデビューし高級ミニバンという新たなジャンルを開拓して大ヒットした日産「エルグランド」に対抗し、トヨタが放った高級ミニバン「アルファード」が誕生した日だ。
TEXT:竹村 純(Jun TAKEMURA)

■高級ミニバントップの座に君臨したアルファード

2002(平成14)年5月22日、トヨタの高級ミニバン「アルファード」が発売された。1997年に高級ミニバンのパイオニアとして大ヒットした日産自動車「エルグランド」の牙城を崩すために登場したアルファード。FFプラットフォームを利用した圧倒的な室内空間と豪華な装備により、エルグランドから高級ミニバン、トップの座を奪取する大ヒットを記録した。

トヨタ・アルファード
2002年に誕生した高級ミニバン「アルファードV」

●高級ミニバン市場を開拓した日産エルグランド

1997年、ファーストクラスのミニバンを目指し、日産のエルグランドがデビューした。フロントマスクは、グリルおよびヘッドライトを上下2分割し、メッキ枠や厚みのあるバンパーで堂々たる風格を漂わせ、室内は高級感と快適性を追求し、7人/8人乗りに対応できる様々なシートアレンジが魅力だった。
さらに装備についても、ナビとTVが楽しめるツインナビゲーションやスーパーサウンドシステムなどで上級感を演出。パワートレインは、3.2L 直4ディーゼルターボおよび3.3L V6ガソリンエンジンンと4ATの組み合わせ、駆動方式はFRと4WDが選べた。

日産「エルグランド」
1997年に誕生した日産「エルグランド」。高級ミニバン市場を開拓して大ヒット

エルグランドは、発売開始から19ヵ月で累計台数10万台を突破する大ヒットを記録。高級ミニバンという新たなジャンルの開拓に成功したのだ。

●エルグランドから高級ミニバントップの座を奪取したアルファード

トヨタ・アルファード
「アルファードG」のリアビュー。低床によって乗降性と居住性を向上

アルファードは、初代エルグランドから遅れること5年、2002年の2代目エルグランドの発売翌日に「アルファードV(ネッツ店)」、およびフロントグリルをわずかに変えた「アルファードG(トヨペット店)」として発売された。
エルグランドを意識し開発されたアルファードは、落ち着いた気品あるデザインと木目やメッキパーツなどを採用したゴージャスなインテリア、さらに豊富なシートアレンジの3列シートにより、最上級の快適性と高級感を実現。パワートレインは、2.4L直4DOHCと4速AT、および3.0L V6 DOHCエンジンと5速ATの組み合わせが用意され、翌年にはハイブリッドモデルも追加された。

トヨタ・アルファード
トヨタ・アルファードの豪華なコクピット

アルファードの最大の特徴は、FRベースのエルグランドにはなかったFFプラットフォームを利用した圧倒的な室内空間と豪華な装備だった。
車両価格は、標準的な3.0L V6モデルは、336万円~449万円で販売。当時の大卒初任給は19.7万円(現在は約23万円)なので、単純計算では336万円は現在の価値で約392万の高額になるが、アルファードは発売直後から大ヒット。翌2003年には6000~7000台/月を販売し、あっという間に高級ミニバントップの座をエルグランドから奪取したのだ。

●アルファードがエルグランドを圧倒した理由

トヨタ・アルファード
トヨタ・アルファードのシート

アルファードがエルグランドを圧倒できた理由は、アルファードがFFベースであること。床下にプロペラシャフトを通す必要がなく、低床が実現でき低重心となることで走行安定性が高まった。さらに居住性と乗降性を向上させ、内装の質もエルグランド以上に豪華とし、まさにファーストクラスのように仕立て上げた。

アルファードの兄弟車「ヴェルファイア」
2008年に誕生したアルファードの兄弟車「ヴェルファイア」

一方、アルファードの前日に登場した2代目エルグランドは、従来型と同じFRプラットフォームのままで進化の程度もそれほど大きくなかった。当時の日産は経営再建中で、十分な開発リソースが投入できなったことが予想され、その結果2003年の販売台数は2000~3000台/月にとどまった。
この後、アルファードは2003年にハイブリッドを加え、2008年には兄弟車のヴェルファイアが登場することで、ユーザー層をさらに広げ、エルグランドを圧倒したのだ。

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その後も進化したアルファードは、2024年現在もコンスタントに月販5000台以上が売れる高級ミニバントップの座に君臨している。余裕のあるファミリー層や会社のVIPが、高級セダンの代りにファーストクラスのような室内空間を持つ高級ミニバンに移行しているのだ。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。

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著者プロフィール

竹村 純 近影

竹村 純

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までを…