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ランクル250は「原点回帰」がコンセプトと謳っているが…。
2024年4月の「ランドクルーザー250」のデビューによって、ついにランクルシリーズは300系、70系、そして250系というフルラインナップに戻った。来年あたり、「ランドクルーザーFJ」というコンパクトモデルがもし発売されれば、ますますランクル人気が高まりそうだ。
250系は「原点回帰」をコンセプトに謳っているが、一体どこが原点なのか分からない…という人もいるのではないだろうか。もちろん、それはデザインということではなく、“SUVに引き寄せられないクロスカントリー4WD”という意味ではあるのだが、外観的にもランクルらしさを追求したことは間違いない。
ランクル250は過去のモデルの影響を受けてる?
昨年行われた発表会において、開発主査に「デザイン的にはどのモデルの影響を一番受けているのか?」という質問をぶつけたら、「過去のすべてのランクル」という答えが返ってきた。優等生的な回答だが、40系や20系のデザインはそれほど受け継いでいない気がする。やはり実質的な先代モデルとなるプラド系であり、中でも70系プラドのDNAは強く出ている気がする。さらに言えば、その先祖である55/56型のオマージュである気がしてならない。
特に丸目の方の250系を斜め前から見ると、フェンダーの膨らみからバンパーにかけての造形が55/56型のそれに似ていることが分かる。少し窪んだヘッドライトのカタチや直線的に伸びたサイドパネルの雰囲気なども似ている。もちろん、60系のバランス感も吸収されているのだが、実は原点は55/56型だと個人的に考えている。
日本で55/56型は、あまりメジャーではない。このモデルは北米や海外を主眼としたモデルで、日本では官公庁用や実用車としてわずかな数だけ売られただけだったからだ。たまに道で見かけることがあるが、40系ほど現存はしていないだろう。
55/56型は当時のラグジュアリー4WDに対抗するために開発
そもそも55/56型は、「ジープ・ワゴニア」を筆頭とするラグジュアリー4WDに対抗するために開発された。40系の実用性や堅牢性は北米でも高く評価されていたが、いかにも“ジープ”臭く、ダッシュボートや床は剥き出しであった。この頃は、アメリカで安全基準が強化されている時期でもあり、ステーションワゴンスタイルで乗用車的なモデルを…ということで生まれたわけである。
それ故、ダッシュボードは樹脂パネルで覆われ、フロアにはカーペットかビニール、シートもレザー調ビニールトリムのものが装着されていた。リアゲートはジープ・ワゴニアのような下方開きで、なんと窓ガラスを電動で下げてから開けるという機構が採用されている。しかし、これは実用的には面倒という想いが開発者にもあったのか、観音開きタイプも用意された。
改めて今見てみると、とにかく各部がシンプルで、素っ気ないほどだ。だが、このシンプルさがたまらないのである。いまで言う高級SUVを標榜したのだが、ジープ・ワゴニアやその後出たチェロキーと比較すると、まるで雰囲気が異なっている。そこがウケたのか、北米でも愛好者が多く、彼の地では「ムース(ヘラジカ)」の愛称で今も親しまれている。
ちなみになぜ「50系」と言わないのかというと、これはロングボディしかないからだ。企画ではショートボディも考えられていたようだが、結果的に中止された。また、56型は1975年に2F型エンジンを載せた際に与えられた型式で、日本国内のみの呼び方となる。
映画「ミスト」に55/56型ランドクルーザーの80年代「四駆ブーム」のカスタムが登場
そんな55/56型が、重要なアイコンとして登場するのが、映画「ミスト」だ。スティーブン・キングの「霧」という小説を映画化したもので、よく理不尽なエンディングの作品として挙げられることが多い。
登場するのは北米仕様のFJ55LGで、これにクラシカルなグリルガードが付けられている。また、映画のストーリー上、ルーフに4灯、フロントに2灯のフォグランプが付けられ、左側Aピラーにもサーチライトを装着するなど、80年代「四駆ブーム」の頃のカスタムを彷彿させる車両だ。
登場する車両は非常にコンディションが良く、日本なら喜んで買う人が多いと思う。走っている姿はやはりエレガントで、今もって色褪せていないところが先見性の高さを感じさせる。やはり、このクルマがなかったら、その後の60系を源流とする300系への系譜は生まれなかっただろう。
映画は賛否両論あるが、個人的にはおもしろいと思う作品だ。低予算の割りに、シチュエーションがいいため飽きない。特に最後のオチは、「ええっ!」と思わせる切ないものだ。他にも55/56型が出てくる映像作品はあるが、これがもっともディティールが分かりやすいと思う。ランクルファンの人は、ぜひご鑑賞あれ。