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国際自動車連盟(FIA)は6月6日、2026年のフォーミュラ1世界選手権(F1)で施行される見通しのテクニカルレギュレーションの概要を発表。あわせてマシンのイメージ画像を公開した。
2026年のF1マシンは“機敏なクルマ”とされ、レース性の向上と接近戦の増加が期待されている。車体は現行マシンよりも30kg軽くなり、アクティブなエアロパーツを採用。また、パワーユニットは熱エネルギーを回生するMGU-Hが廃止される一方でモーターのパワーは現状の約3倍となるほか、100%持続可能な燃料を使用することになる。
アクティブエアロでふたつの空力モードを実現
新たな技術規則では、シャシーは軽量・コンパクトに再設計される。
ホイールベースは現行の最大3600mmから3400mmとされ200mm短縮。全幅は2000mmから1900mmへと100mm縮小した。また、最大フロア幅は150mm狭くされる。最低重量は現行の798kgから30kg軽い768kgとなる。
加えて、ボディワークには新たに「アクティブ・エアロダイナミクス・システム」が採用される。
これは可動式のフロントウィングとリヤウィングを備えたもので、コーナリングでは標準の「Zモード」を、ストレートではドラッグを抑えた「Xモード」に切り替えることができる。
フロントウィングは現行よりも100mm狭くされる一方で、2エレメントのアクティブフラップを採用。
リヤウィングは3エレメントで構成。シンプルな翼端板を備え、ウィング下部のビームウィングは廃止される。
フロアは一部がフラット化されるとともに、ディフューザーのパワーが低下。グラウンドエフェクトが減少し、低車高で硬いセットアップへの依存度が下がる。
また、タイヤが生み出す乱流を抑える目的で現行車両に装着されているフロントホイールアーチは廃止されるが、ホイールボディワークの一部を義務化。加えて、サイドポッド前方にはフロントタイヤの乱流の制御に寄与するボードが装備される。
ホイールは18インチホイールを継続。タイヤ幅はフロントで25mm、リヤで30mm縮小されるが、グリップの低下は最小限に抑えられる見込みだ。
MGU-H廃止&エンジン出力削減もトータルパフォーマンスは維持
2026年には新世代パワーユニットも導入される。
エンジンが生み出すパワーは現状の550~560kW≒748~761PSから、400kW≒544PSまで削減される。また、熱エネルギーを回生するMGU-Hが廃止されるが、モーターの出力は現状の120kW≒163PSから300kW≒476PSと約3倍と大幅に強化。この結果、パワーユニット全体での性能は維持される。
また、燃料も100%持続可能なものへスイッチするほか、ブレーキング時に回生できるエネルギー量は、1周あたり8.5MJへと増加される。
新たな要素としては「マニュアル・オーバーライド・モード」が搭載される。これは、先行車が290km/hを超えるとデプロイメントが減少しはじめ、355km/hではゼロになる一方、後続車は337km/hまで「MGU-Kオーバーライド」の350kWと0.5MJの追加パワーが得られるというシステムで、オーバーテイクの機会を増加させるものだ。
2026年からのパワーユニットマニュファクチャラーは、F1復帰を果たすホンダをはじめ、フェラーリ、メルセデス、ルノー、アウディ、レッドブル・パワートレインズの6社となる。
2026年はコース上のバトルが激化へ
FIAのシングルシーター・テクニカルディレクターを務めるニコラス・トンバジスは2026年の技術規定について「小型化と30kgの軽量化に成功し、よりダイナミックなマシンになった」とコメント。
「さらに、レースをよりエキサイティングにするふたつの新要素を導入する。ストレートでドラッグを大幅に低減するアクティブ・エアロダイナミクスと、先行車との距離が近づいた際にオンデマンドでバッテリーパワーを供給するマニュアル・オーバーライド・システムだ。2026年のF1マシンはより軽く、よりパワフルで、より乗り手の技量を重視したものとなり、ドライバーたちのバトルは接近したものになるとともに、チームの競争もより激化し、ショーとしても改善するだろう」
「さらに、持続可能なスポーツの未来に向けた取り組みの一環として、パワーユニットにおける電動コンポーネントの高出力化、マシン全体の高効率化、完全な持続可能燃料を選択したのだ」
2026年のテクニカルレギュレーションは、6月28日に行われる世界モータースポーツ評議会を経て正式に承認される。