SUV仕立ての専用装備とデザインで人気を確立「ダイハツ・タント ファンクロス」【最新軽自動車 車種別解説 DAIHATSU TANTO FUNCROSS】

スーパーハイトワゴン系軽自動車のパイオニアとして登場した「ダイハツ タント」。SUVテイストのモデル「ファンクロス」はブラックのグリルやルーフレールなどを装備し、アウトドアを感じるデザインでラインナップされた。インテリアも撥水加工が施されたシートなど、どんな使い方をしても気兼ねない。自然な操作感と実用性に富んだ機能も大きなポイント。
REPORT:渡辺陽一郎(本文)/山本晋也(写真解説) PHOTO:平野 陽 MODEL:菅原樹里亜

広い車内は快適装備が満載 乗り心地や走行性能も秀逸

今の軽乗用車では、販売総数の約半分をスーパーハイトワゴンが占める。全高が1700㎜を超える背の高いボディにスライドドアを装備して、広い室内と優れた乗降性を両立させた。このスーパーハイトワゴンの先駆けがダイハツ・タントだ。初代モデルは2003年に発売されてヒット作になり、07年登場の2代目からスライドドアも装備している。

エクステリア

ボディ自体はタントシリーズで共通だが、ルーフレールやドアガーニッシュ、専用のバンパーのデザインによってSUVテイストを演出する。タイヤも同じ銘柄で、実は走破性もさほど変わらない。最小回転半径は4.4m〜4.7m。

現行タントは19年に発売された。一番の特徴は、左側のピラーがスライドドアに内蔵されていることだ。左側のドアを前後ともに開くと、開口幅は1490㎜に拡大する。子育て世代のユーザーなら、ベビーカーを抱えながら左側のドアから乗車して、子どもをチャイルドシートに座らせ、降車せずに右側の運転席まで移動できる。タントは乗降性が優れ車内の移動もしやすい。そしてタントには、以前から標準ボディとエアロパーツを装着するカスタムがあったが、22年にはSUV風のファンクロスを加えた。タントファンクロスのフロントマスクには、ブラックのグリルと、ガードバー風の装飾が備わる。天井には、キャリアやラックをセットできるルーフレールも標準装着される。そのために全高は1785㎜で、標準ボディやカスタムを30㎜上回っている。

乗降性

ファンクロスは、ほかのタントと比べて、内装も変更されている。シート生地には撥水加工が施され、荷室にも汚れを落としやすい素材を使う。タイヤの汚れた自転車やアウトドアグッズを積んだ後でも清掃がしやすく、気兼ねなく使える。インパネには、ほかのタントと同様、収納設備が豊富に装着されている。メーターパネルを高い位置に置したから、ステアリングホイールの奥側にも収納ボックスが備わる。

インストルメントパネル

ファンクロス専用となるエアコン吹き出し口のオレンジ加飾が、SUVらしいムードを高めている。デジタル表示+液晶ディスプレイのメーターは走行中でも見やすいのが美点。

シートアレンジには注意したい。現行タントが発売されたときは、後席の背もたれを前側に倒すと座面も連動して下がり、N-BOXやスペーシアのように床の低い荷室に変更できた。この機能が今のタントでは、ファンクロスを含めて省かれている。後席の背もたれを倒しても座面は下がらず、広げた荷室の床が高くなった。そのために荷室高は、以前に比べて100㎜ほど減っている。その代わり後席を倒して後部のデッキボードを持ち上げると、スッキリと平らな荷室に変更できる。これらのタントファンクロスの基本的な機能は、標準ボディやカスタムと同じだ。シートも快適で、特に後席の腰の支え方は先代型に比べると改善され、4名乗車時の居住性も向上した。

居住性

車両重量が900㎏を超えるから、自然吸気エンジンでは動力性能が不足気味だが、最大トルクの6.1㎏mを実用域の3600rpmで発生させる。そのためにエンジンの性格は扱いやすい。ステアリング操作に対する反応は、スーパーハイトワゴンながらも鈍さを感じさせず自然な印象だ。

うれしい装備

運転席が540㎜もロングスライドする機能はタントシリーズ共通。座ったまま後席に手が届くなど、その活用方法は幅広い。
月間販売台数    13218台 タントカスタム/タントを含む(23年7月~12月平均値)
現行型発表     22年10月
WLTCモード燃費   21.9 ㎞/ℓ※自然吸気のFF車

ラゲッジルーム

乗り心地は硬めだが粗さは抑えた。設計が比較的新しいため、走行性能や乗り心地も満足できる。以上のようにタントファンクロスは車内が広く、SUVの外観と汚れを落としやすい実用的な荷室も備わり、走行性能も上々という具合に、選ぶ価値の高い軽自動車になっている。

※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.157「2024 軽自動車のすべて」の再構成です。

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