商品力を強化し続けるハイトワゴンの先駆車「スズキ・ワゴンRスティングレー/ワゴンR」【最新軽自動車 車種別解説 SUZUKI WAGON R STINGRAY /WAGON R】

ハイトワゴン軽自動車というスタイルを世に送り出してから30数年。「スズキ・ワゴンRスティングレー/ワゴンR」は弛まずに進歩を続け累計販売台数は500万台を越えた。現在では3パターンのモデルを用意し、多彩な用途に応える柔軟性は常に進化してきた。現モデルのデビューから8年近くが経ち、新モデルの登場も気になるところだが、だからこそ現モデルの秀逸さも確認したい。
REPORT:安藤 眞(本文)/小林秀雄(写真解説) PHOTO:平野 陽 MODEL:日南まみ

フェイスと乗り味は3タイプ 使い勝手や燃費の良さも特筆

軽自動車なんだから、室内が狭いのは当たり前、という常識を覆した最初のクルマがワゴンR。乗員を高めの位置に座らせることで、前に伸びていた脚を下に向けさせ、限られた前後長を有効に使う〝ハイトワゴン〞というスタイルを生み出した。

エクステリア

外観が異なる「ワゴンR」、「ワゴンRカスタムZ」、「ワゴンRスティングレー」の3タイプを設定。撮影車の「ワゴンRカスタムZ」は専用デザインのバンパーなどによるスポーティな雰囲気がもち味。最小回転半径は4.4m〜4.6m。

1993年9月にデビューした初代からヒット作となり、昨年11月には累計販売台数500万台を達成。アルトでさえ37年8ヵ月かかった記録を30年3ヵ月に塗り替えた。ライバル他車にはない特徴は、まずフロントマスクを3種類用意していること。他車は標準車とカスタム系の2フェイスだが、ワゴンRは標準車と〝カスタムZ〞に加え、最上位機種でアメリカンテイストの〝スティングレー〞を用意している。

乗降性

パワーユニットも差別化されており、標準車は自然吸気エンジンのみの設定(「FX-S」は発電機をアシストモーターにも使用するマイルドハイブリッドシステム)。カスタムZには、自然吸気エンジンとターボの両方が用意され、いずれもマイルドハイブリッド仕様となる。スティングレーはターボエンジン+マイルドハイブリッドのみの設定として、特別感を強調している。特筆しておきたいのが、実用燃費の良さ。ユーザー参加型燃費比較サイトの〝e燃費〞によれば、ワゴンRの実燃費は軽ハイトワゴン第2位の20.48㎞/ℓ(2024年1月時点)。ちなみに第1位はワゴンRスマイルの20.74㎞/ℓだが、これはエンジンが最新のR06D型以降のモデル。ワゴンRも現行型の自然吸気エンジンは20年モデルからR06D型に換装されており、それだけに絞れば逆転する可能性もある。

インストルメントパネル

薄型のセンターメーターを備える水平基調のインパネ。「FX」以外にメーカーオプションとして設定される7インチディスプレイオーディオは通信機能のスズキコネクトに対応。

使い勝手の多彩さもライバル他車をリードするポイント。後席は全グレードが5対5の分割可倒&160㎜のスライド付きで、折り畳んだ際にはシートクッションごと下降するダイブダウン式だから、荷室との段差が付かない。助手席背もたれは前側に約90度まで倒せて、2mくらいの長い物まで積載できる。加えて助手席のクッションを前側に引き起こすと、樹脂製の四角いボックスが入っている。取り外しできるのでバケツとして使えるだけでなく、運転専用の靴や折り畳み傘、子どもの砂遊び用おもちゃなどを入れておくなど、結構便利に使えるのだ。

居住性

乗り味は大きく3種類。前後サスペンションにスタビライザーが付かない標準車は、マイルドな挙動で乗り心地は良好。カスタムZ以上のグレードはスタビライザーが付くため、操縦性能がシャキッとしてくる。さらにターボ車はタイヤが55扁平になり、操舵応答がより軽快になる。加えて、スティングレーは他グレードより車内が静か。車体に使用している防音材の量が他グレードより多いため、外部の音が車内に入りにくいのだ。トルクの大きいターボエンジンを搭載しているため、エンジン回転数を高めなくても力強く走る。

うれしい装備

助手席の座面下にはシートアンダーボックスを装備。普段は手荷物の置き場所として使えるほか、ボックス自体を取り外して外に持ち出すことも可能。汚れたら丸洗いもできる。
後席ドアには傘を立てて収納するアンブレラホルダーを装備。不意の雨に備えて傘を常備できる。溜まった雨水は然と車外に排出されるので安心。
月間販売台数      5704台 ワゴンRスマイルを含む(23年7月~12月平均値)       
現行型発表        17年2月(一部仕様変更 23年11月)
WLTCモード燃費     25.2 ㎞/ℓ※「ハイブリッド FX-S」「ハイブリッド ZX」のFF車

ラゲッジルーム

現行型のデビューは17年2月。今年でまる7年となるため、そろそろフルモデルチェンジの噂も聞こえてきているが、三度のマイナーチェンジで商品力を強化しており、熟成しきった今が買い時とも言える。

※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.157「2024 軽自動車のすべて」の再構成です。

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