世界中のファンを魅了する本格オフローダー「スズキ・ジムニー」【最新軽自動車 車種別解説 SUZUKI JIMNY】

言わずと知れた日本を代表する本格小型オフローダー「スズキ・ジムニー」。常に納車待ちの人気は追随のない唯一無二の存在だ。18年のモデルチェンジではオフロード走行性能をさらに進化させ、ワイドでクールなフォルムで時代のトレンドを取り入れ、その価値はさらに上昇している。オフロードに軸を持つ筋の通った秀逸なクルマと言える。
REPORT:石井昌道(本文)/山本晋也(写真解説) PHOTO:神村 聖 MODEL:新 唯

唯一無二のオフロード性能 燃費や静粛性も大きく向上

スズキが世界に誇る本格オフローダーのジムニー。初代は1970年に発売され、現行モデルは2018年に登場した4代目となる。その人気は異常とも言えるほどで、半導体不足などの問題が起きる前から納車1年待ち程度はあたりまえ。ジムニーシエラも含めれば欧州などでも引く手あまたで十分にユーザーへ行き渡っていないのが現状だ。

エクステリア

ジムニー伝統の175幅の16インチタイヤが独特のプロポーションを生んでいる。背面のスペアタイヤのホイールはスチールだが、タイヤサイズは標準装着と同じため、交換しても走破性への影響は最小限だ。最小回転半径は4.8m。

人気の理由は〝本物〞であることでたとえ日常使いでの快適・便利を多少犠牲にしても、オフロード走行に適した特性を追求していることが共感を呼ぶのだろう。また、スタイリッシュになったデザインも人気を乗せした。本格オフローダーらしい四角いフォルムは相変わらずだが、ガラスエリアの天地が狭くなり、ボディ外板が広いスタイルがクールだ。一般的な乗用車はモノコック構造だが、ジムニーはラダーフレーム構造を採用。オフロード走行に適したサスペンションと相性が良くて強度も高い。3代目のものを引き継いでいながらクロスメンバーやXメンバーを追加するなどして、捩り剛性は5割もの向上を果たしている。

乗降性

その恩恵はオンロードでもオフロードでも実感できる。ラダーフレーム構造のモデルはオンロード走行向きではなく、現行ジムニーでもステアリング操作に対する反応の遅れ、セルフアライニングトルクの薄さによって曲がった後にはドライバー自らが意図的に直進状態に戻す必要があるなど、癖のある操作感となるが、先代モデルに比べるとだいぶ抑えられている。乗り心地も向上していて、普通に走らせる程度ならば煩わしさを感じることはなくなった。

インストルメントパネル

直感的に見やすい指針式メーターや車両感覚のつかみやすいボンネットなど、運転に集中できるコクピットとなっている。チルトステアリングは全グレードに標準装備される。

オフロードを試乗すると、確かな接地感が得られるようになっていることに気付く。さらに、ブレーキLSDが採用されたことで、どこかのタイヤの接地性が薄くなっていっても高い走破性をみせる。オフロード走行の性能が上がっただけでなく、スキルがそれほど高くなくても楽に走破できるのが美点だろう。エンジンは660㏄ターボだが、2年にわたって使われてきたK64A型からR06A型へと換装された。ピークトルクは僅かに落ちたものの、ロングストロークとなって低回転域のトルクが充実したことで、扱いやさや燃費性能が向上。さらに、車体側の進化もあって静粛性が大幅に向上した。先代では100㎞/h巡航を続けると騒がしくて疲れも早く訪れたが、現行型ならば快適だ。

居住性

トランスミッションは5速MTと4速ATを用意。走りの良さや楽さでは5速MTが上回るが、4速ATも悪くない。一般的な軽自動車が採用するCVTとは異なり、ダイレクト感があってそれなりに楽しめる。先代モデルと比較すれば、パワートレインもシャシー性能も進化して、オンロード性能もだいぶ向上したが、それでも見た目のかわいさだけで選んでいいものとは言い難い。

うれしい装備

助手席前のインパネには立派なアシストグリップを標準装備。乗降をアシストするだけでなく、デコボコ道で身体を支えるのにも役立つ。
月間販売台数     3300台(23年7月~12月平均値)
現行型発表      18年7月(一部仕様変更 24年2月)
WLTCモード燃費   16.6 ㎞/ℓ※5速MT車 

ラゲッジルーム

快適性や扱いやすさでは、モノコック構造のモデルが上回るのは当然。さらにいえば、ハイスピードで無茶なハンドルの切り方をすれば、ロールオーバーの危険性もある。その辺を踏まえつつ一定の覚悟をもって乗るべきなのが、ジムニーなのだ。

※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.157「2024 軽自動車のすべて」の再構成です。

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