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■操る喜びを追求しVGSを採用したS2000タイプV
2000(平成12)年7月7日、ホンダは前年4月にホンダ創立50周年を記念して発売されたオープンスポーツ「S2000」に、世界初のVGSを搭載した「S2000 タイプV」を追加することを発表(発売は7月14日)。VGSは、ほとんどハンドルを持ち替える必要がなく取り回しが楽なのが特徴である。
●28年振りのSシリーズ復活を果たしたオープンスポーツS2000誕生
ホンダは、1999年に会社創立50周年を記念した新世代のオープンスポーツS2000を発売。1964年の「S500」から始まったホンダ伝統のSシリーズの実に28年ぶりの復活を果たしたのだ。
S2000は、エンジンを前輪車軸後方に配置するフロントミッドシップで、車体前後重量配分を理想的な50:50に設定し、オープンボディについてはX字型の新構造“ハイXボーンフレーム”により高い剛性を確保。スタイリングは、空力を重視したウェッジシェイプを基本に、抑揚のあるフェンダー、スピード感のあるキャラクターラインでリアルスポーツらしさをアピールした。
パワートレインは、最高出力250ps/最大トルク22.2kgmの2.0L直4 DOHCエンジンと新開発の6速MTの組み合わせ。ホンダらしい8300rpmで最高出力を発揮する高回転高出力エンジンは、特に高速で鋭い加速性能を発揮した。
軽快な走りと優れた操縦安定性を実現したホンダが放った久々のオープンスポーツS2000は、338万円に設定されて多くのスポーツモデルファンから好評をもって迎えられた。
●S2000にVGSを採用したタイプVを追加
S2000は、さらなる進化のためにいくつかの先進的な改良を続けた。その第1弾が、翌2000年のこの日に追加された世界初となるVGSを採用したS2000タイプVだった。
通常のクルマでは、ステアリングの切れ角と前輪の切れ角は、常に一定の速度で連動する。VGS(Variable Gear ratio Steering)は、車速と舵角の変化に応じてステアリングのギヤ比を変化させる車速応動可変ギヤ比ステアリング機構である。
VGSは、低中速域では小さい舵角で大きく前輪が切れるようにレスポンス良くクイックに反応させ、高速では過敏すぎないようにスローに反応させて走行安定性を向上させる。交差点での左右折や車庫入れでは、少ないステアリング操作で前輪を動かすことができるので、ドライバーの負担を減らすことが可能なのだ。
トヨタは、VGRSという名称でランクルやクラウン、レクサスの一部モデルで採用し、現在は他メーカーの高級車でも採用されている。
●S2000タイプVでは異形(D型)ステアリングホイールを採用
S2000タイプVでは、VGSの採用とともにステアリングホイールの形状が正円でなく、D型に変更されたことも注目された。正円の下端部がフラットになっているD型ステアリングホイールは、ドライバーの大腿部とのクリアランスが確保され、乗降性が楽になるメリットがある。
最近は、D型だけでなく、さらに楕円形や飛行機の操縦桿のようなヨーク型のステアリングホイールも登場している。これらに共通するのは、見た目のスマートさに加え、乗降時に邪魔にならない、メーターが見やすいといったメリットがある一方で、ステアリングホイールを大きく切る際に異形だと手の持ち替えが難しいという問題がある。特にヨーク型の場合は、グルグル回すのが難しいので、少ないステアリング操作でも大きく前輪を動かせるVGS機構が必須だと考えられる。
今後、さらに異形ハンドルの採用が進めば、VGSも増えることになるだろう。
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S2000のVGSに対しては、使いやすいという意見もあるが、一方でコーナリング時に怖い思いをしたという意見もあり、評価が分かれたようだ。何よりも慣れが必要だと思われるが、普及のためには運転条件によってさらにきめ細かくギヤ比を制御するなどの改良が必要ではないだろうか。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。