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スカイラインNISMOと同スペックのAWD 加速が凄い
今回用意されたモデルはリヤ駆動(RWD)の『BYDシール』とフロントにもモーターを備える『BYDシールAWD』の2タイプ。パワースペックは、RWDが310ps/360Nm。AWDが420ps/550Nmとガソリン車で言えば、ベースモデルでもV6・3.0Lターボレベル。AWDモデルにいたっては日産のレースエンジニアがチューニングを施したスカイラインNISMOとパワー、トルクともにまったく同じ。それだけに走りへの期待は大きく膨らむ。
実際にAWDモデルの走りはインパクトがある。街乗りレベルなら、当然のように滑らかで静か。ズシリとくる乗り味はスポーツライクなものの、BEVならではの快適性は最大限享受でき、サルーンとしての味わいも失ってはいない。しかし、ひとたびフルパワーを掛けると即座にリヤが沈み込むと同時に路面を蹴り上げ、わずかにノーズをもたげたと思うと一気にマックスGが押し寄せる。シートバックに身体が押しつけられ、頭はヘッドレストを打ち、ノーズをもたげた姿勢のまま一気に3桁の速度域に達する。カタログデータ上では0-100km/h加速3.8秒とあるが、その瞬発力はガソリンモデルではスーパースポーツモデル以外経験はない。BEVスポーツヨンクにのみ与えられる体験を久しぶりにした。
もっとも全開領域においてはパワーを最大限引き出し、加速方向に効果的な走りを見せてくれるものの、日常走行においてはアクセルのレスポンスが敏感な領域があったり、反応が鈍く感じられたりするところがあるなど、やや大味な面もある。ブレーキやステアリングも同様で、操作系に関しては総じてスイッチ的。高速でのレーンキープアシストもステアリング中立付近の敏感な反応が挙動に出てしまい、姿勢変化も大きめ。BEVとしての走りの機能は良くできていると思うが、人間が操作する領域に関しては自動車メーカーとしての歴史の短さを感じずにはいられない。
さらなる磨き込みに期待
サスペンションに関してはRWDモデルではフロントの上下動が大きく、高速の継ぎ目などではカドが感じられ、振動が残りやすかったのに対し、AWDモデルでは収まりが良くて、カドも丸く感じられた。AWDモデル専用の可変ダンピングダンパーの効果に加えて、前後50:50の重量バランスの良さによって、ボディがフラット方向へと転じた。
ワインディングではRWDに対して、AWDはフロントの重さを感じるものの、接地感は向上し旋回速度に合わせてアクセル踏んでいくとソッと前輪が進路を定めて、安定感ある走りをキープ。旋回車速を落とすことなく旋回方向に向きを変えていってくれることから無駄な動きがなくて、大きなボディがひと回り小さく感じさせる。ただ、旋回中にもラインキープアシストは敏感に反応し、挙動を乱してしまうのは要改善ポイントだ。
加速力、旋回姿勢ともにBEVヨンクとしての走りの良さは満喫できるし、街乗りでは静々とサルーンとしての快適性を実現したAWDモデルが605万円で手に入るなら実にお値打ちである。しかも、導入記念キャンペーンの特別価格では1000台限定で、RWDモデルが500万円を切る495万円。AWDモデルも575万円と共に500万円台で購入できる。
操作系やドライビングアシスト系に関してはさらなる磨き込みを期待したいが、パワーフィールやAWDモデルの走りのパフォーマンスを味わってしまうと、小さなことには目をつむっても『いいかもBYD!』。そんな大らかな気持ちにさせてくれるのが、中国発のハイスペックサルーンの初試乗だった。
BYD SEAL AWD 全長×全幅×全高:4800mm×1875mm×1460mm ホイールベース:2920mm 車両重量:2230kg サスペンション:Fダブルウィッシュボーン式/Rマルチリンク式 リヤモーター TZ200XYC型交流同期モーター 最高出力:230kW(312ps) 最大トルク:360Nm フロントモーター YS210XYA型かご形三相誘導モーター 最高出力:160kW(217ps) 最大トルク:310Nm バッテリー リン酸鉄リチウムイオン電池 総電圧:550V 総電力量:82.56kWh WLTC交流電力量消費率:165Wh/km 一充電走行距離575km 車両価格:605万円