う、羨ましくなんかないぞ!? 旧型オーナーが新型フォルクスワーゲン・ゴルフをチェック!

実用ハッチバックのメートル原器、フォルクスワーゲン・ゴルフがマイナーチェンジを受けて新型となった。そのニュースを聞いて、ジェラシーを感じたのはマイチェン前のゴルフのオーナーである私。新型はどこが変わったのか? オーナー目線で、あれこれとチェックしてみたい!

予約注文が9月から開始予定の新型フォルクスワーゲン・ゴルフ。顔がシャープになって、インパネの使い勝手もアップ!

私の愛車は、2年前に購入した8代目フォルクスワーゲン・ゴルフ。初めての新車であり、「最新モデルだぜ〜」と喜んでいたのだが、この度、そのゴルフがマイナーチェンジを実施。日本では予約注文が9月から始まり、2025年1月から出荷が開始される予定となっている。つまり、私のゴルフも最新型ではなくなってしまったというわけだ。どんな新車にもその日が必ずやってくるわけだが、実際、自分の愛車がそうなると、ちょっと悲しい気分になってしまう。

が、果たして、最新のゴルフは最良なのか!? マイナーチェンジ前のモデルのオーナーが、悔しい気持ちを押し殺しながら、厳しい(!?)目でチェックしたいと思う。

9月から日本でも予約注文が開始される予定の新型フォルクスワーゲン・ゴルフ。8代目のマイナーチェンジモデルなので、本記事では「8.5」と呼ぶこととする。なお、新型ゴルフの写真は海外仕様のもの。上の写真は海外のみで販売されているPHEVモデルなので、フロントフェンダー上に充電口が設けられている(もちろん、新型でも純ICEモデルなら充電口は未装備)。
こちらは筆者の愛車である、マイナーチェンジ前のゴルフ。本記事では「8」と呼ぶこととする。グレードは「eTSI Active」で、オプションでマトリックスLEDライトなどが含まれる「テクノロジーパッケージ」と、ナビなどが含まれる「”Discover Pro”パッケージ」を追加した。

エクステリア「新型は顔つきがシャープに。でも、そんなに変わってないかも」

ここからは、マイチェン前のモデルを「8」、マイチェン後のモデルを「8.5」と呼ぶこととする。まず、外観からチェックしてみよう。「8.5」のトピックは、VWのエンブレムが光るようになったこと。これは日本のフォルクスワーゲンモデルで初採用となる。また、ヘッドライトの形状も内側がより絞り込まれた新デザインになったほか、ロワーグリルの形状も変更され、顔つきがシャープになった印象だ。リヤビューはあまり変化なし。テールランプ内部の構成が変わっているようだが、ランプ自体の形状は同じだし、あとはバンパー下部のデザインが変わっている程度だ。ということで、「8.5」になっても外観の変更は控えめだったので、「8」オーナーはひと安心(?)だ。VWエンブレムが光っているかどうかは、どうせ車内からはわからないしね…。
→「8.5」が羨ましい度:★★☆☆☆

「8.5」のフロントマスク。新型ティグアンや新型パサートなどと共通の、最新VWデザイン言語に則った顔になった。
「8」のフロントマスク。「7」よりもラジエーターグリルが薄くなって、Cd値は0.3から0.275に低減。
「8.5」のヘッドライト。内側がスリムになった。
「8」のヘッドライト。
「8.5」のリヤビュー。テールライトの内部構造が変わったが、形状自体は同じ。「8」との変化は少なめだ。
「8」のリヤビュー。
新たに光るようになった「8.5」のVWエンブレム。

インテリア「センターディスプレが12.9インチに大型化! でも、インパネの一体感は旧型の方が上!?」

続いてインテリアをチェック。「8.5」のインパネでまず目につくのは、12.9インチに大型化されたセンターディスプレイだ。「8」のセンターディスプレイは10インチなので、2回りは大きくなった印象。演算処理も向上していて地図スクロールのレスポンスなども向上しているというから、このインフォテインメント系の機能向上は素直に羨ましいところ。ギギギ(ハンカチを噛む音)。が、「8」は画面が小さいけれど、そのぶん、メーターパネルとセンターディスプレイの一体感がある。デザインのまとまりという点では「8」の方が上…と思うのは筆者だけではないはず!?
→「8.5」が羨ましい度:★★★★

「8.5」のインパネ(海外モデルの写真なので、左ハンドル)。12.9インチのセンターディスプレイが目を引く。
「8」のインパネ。上級グレードではステアリングスイッチが静電タッチ式だったが操作性が今ひとつだったようで、「8.5」では全グレードが写真のような通常のボタン式になった。

素直に羨ましいのは、センターディスプレイの画面の大型化を活かすよう、メニュー構造も改良されたこと。画面の上下には使用頻度の高い機能へのショートカットがエアコンの設定状況が常時表示されるようになった。「8」でもエアコンの設定温度は画面右下に常時表示されるが、そのぶん、メインの表示画面が割を食ってしまっている。また、「8.5」では車両を真上から俯瞰したような画面を表示できる「エリアビュー」がついに設定されたのも新しい。「8」でもバックカメラは付いているし、そもそも取り回しやすいサイズだから絶対必要!というわけではないのだけれど、狭い場所で駐車するような場面では俯瞰映像があった方がやっぱり便利だ。
→「8.5」が羨ましい度:★★★★★

「8.5」のセンターディスプレイ。ただ画面が大きくなったのではなく、きちんと画面構成もリニューアルされているのはさすが。
「8」のセンターディスプレイ。普段、使っていて10インチを小さいと思うことはなかったが、新しいのを見ると、やっぱり羨ましくなる!

また、「8.5」ではIDA(アイダ)ボイスアシスタントと呼ばれる音声操作が採用された。は「Hello, IDA」もしくは「Hello, Volkswagen」で起動して、エアコンをはじめとする車両の機能をコントロールできるという。音声認識は車載コンピューター上で行なわれるため、クラウドアップロードが必要な方式よりも反応速度が速い、というのもウリだ。こうした機能に関しては、実際に使ってみないと便利かどうかは判定不能。ホンダ・アコードが採用しているGoogleアシスタントはとてもレスポンスが良く、「近くのラーメン屋を教えて」といった質問に対しても、素早く候補をリストアップしてくるなど”使える機能”という印象だったが、果たして「8.5」ではどうだろうか。
→「8.5」が羨ましい度:判定不能

インテリアに関して、もう一点、「8.5」が羨ましい点がある。それはレザーシートを選択できるようになったこと。「8」ではGTI(オプション)とR(標準)以外には設定がなかった。「8.5」では「Style」と「R-Line」にレザーシートパッケージが設定されたのだ。個人的にはレザーシートよりファブリックシートの方が好みなのだが、レザーシートにすると運転席が電動調整機構付きとなるのは羨ましい。ゴルフの前席のリクライニング調整はダイヤル式で、ちょっと仮眠をとる際に全倒ししようとすると、ダイヤルをグルグル回す必要があるのが地味に面倒臭いのだ。また、レザーシートはメモリー付きとなるので、元のポジションに戻すのもワンタッチでOKというのもいい。
→「8.5」が羨ましい度:★★★★☆

「8」の「eTSI Active」のファブリックシート。何の変哲もない…というと愛車に失礼だが、座り心地も良く、長距離運転で身体が痛くなることもないので、気に入っている。

「8.5」で進化していることを期待したいのが、純正ナビゲーション機能だ。「8」のそれは、正直言って使いやすいものではない。操作ロジックが独特で、目的地検索がやりづらいのだ。スマートフォンのアプリから目的地を検索して、車両に送信することも可能だ。しかし、このアプリの使い勝手も今ひとつで、お出かけに備えて目的地を送信しておいたのに車両には届いておらず、仕方なく車両で設定し直すことがしばしば。で、翌日にまた出かけようとしたら、ようやく目的地が届いていた…なんてこともある。だから最近は、純正ナビゲーションは使わずに、スマホのアプリをもっぱら利用している。私が購入した「8」のeTSI Activeは、純正ナビゲーション(Discover Proパッケージ)はオプションで19万8000円だった。約20万円という価格を考えると、もうちょっと頑張ってほしい…というのがオーナーの本音だ。果たして「8.5」のナビが進化しているのかどうか、実車がチェックできる日を待ちたい。

エンジン「ベーシックグレードも1.0L直3から1.5L直4に! 嬉しいような寂しいような!?」

ここからは、エンジンを見てみる。なんと、1.0L直列3気筒ターボがラインナップから外れてしまった! 「8」ではスタンダードな「Active」系が1.0L直列3気筒ターボ、上級の「eTSI Style」と「R-Line」は1.5ℓ直列4気筒ターボといった具合にグレードによってエンジンが差別化されていたのだが、「8.5」ではガソリンエンジン(除くGTI)は1.5ℓ直列4気筒ターボに統一。「eTSI Active」系は116ps/220Nm、「Style」と「R-Line」は150ps/250Nmといった具合に出力を差別化している。

私が「8」 を購入する決め手となったのは、「eTSI Active」に搭載されている1.0L直列3気筒ターボの存在が大きかっただけにショック…。フォルクスワーゲン初の48Vマイルドハイブリッドとの組み合わせによって、999ccという排気量の小ささを感じさせないスムーズな走りは、愛車(「8」)のお気に入りのポイント。110ps/200Nmというスペックだから、高速道路の追い越しでアクセルを全開にしたときには、それなりの加速…という印象ではあるが、そんな場面は実際の利用状況の数%。軽自動車の自然吸気エンジンに匹敵する、最大トルク62Nmのモーターの助けもあって、日常の走行シーンで力不足を感じさせることはほとんどない。なおかつ、WLTCモード燃費は19.1km/Lという低燃費もナイス。実際、2年間使用してのトータル燃費は約18km/Lと良好だ。さらに、排気量が999ccだから自動車税も2万5000円(1000cc超は3万500円)と割安なのもいいところ。

1.0L直列3気筒ターボには「足るを知る」の精神が感じられるというか、ミニマリズムを体現しているというか、とにかく自分の身の丈にあったエンジンで満足している。が、1.5L直列4気筒ターボの方がスペックは上だし、4気筒だから吹け上がりもスムーズだろう。車両重量も10kgしか増えていないから、フットワークの良さも損なわれていないはず。うーん、悲しいやら羨ましいやら、複雑な心境というのが本音である。
→「8.5」が羨ましい度:★★★★☆(ちょっと寂しい度:★★★★

そのほか、「8」の「eTSI Active」系では設定のなかったシートヒーターが「8.5」では全車標準になったほか、ステアリングヒーターも新設定(しかも、こちらも全車標準!)。この辺は、「8」の「eTSI Active」のオーナーとしては素直に羨ましいところだ。

なお、「8.5」のエンジンはほかに2.0L直列4気筒ディーゼルターボ(150ps/360Nm)、GTI用の2.0L直列4気筒ガソリンターボ(265ps/370Nm)が揃う。このうち、GTIだけが「8」に対して+20psとなっており、そのほかのエンジンのスペックは「8」と同一となっている。

…というわけで、新型ゴルフ「8.5」の気になるポイントをチェックしてみたわけだが、もっと気になるのは、まだ未発表の価格かもしれない。最近の円安のせいで、輸入車の価格は上昇傾向がますます加速しているからだ。私が購入した「8」の「eTSI Active」も、購入した2年前は新車価格が312万5000円だったのだが、現在は365万9000円と、約15%も値上がりしている。果たして「8.5」の価格はどうなるのだろう!? 自分は安くゴルフが買えたからラッキーだった…と思うようにすれば、新型が出たって悔しくないぞ!(と自分に言い聞かせる私であった…)

日本では予約注文が9月から始まり、2025年1月から出荷が開始される新型フォルクスワーゲン・ゴルフ。

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著者プロフィール

長野 達郎 近影

長野 達郎

1975年生まれ。小学生の頃、兄が購入していた『カーグラフィック』誌の影響により、クルマへの興味が芽生…