伝説の船橋サーキットバトル!浮谷東次郎「トヨタS800」 VS. 生沢徹「ホンダS600」第1回全日本自動車クラブ選手権が開催【今日は何の日?7月18日】

第1回全日本クラブ選手権
第1回全日本クラブ選手権
一年365日。毎日が何かの記念日である。本日7月18日は、船橋サーキット(千葉県)のオープニングレースとして「第1回全日本自動車クラブ選手権」が開催された日だ。注目された2人の天才ドライバー浮谷東次郎選手「トヨタスポーツ800」と生沢徹選手「ホンダS600」の壮絶な戦いは、トヨタS800を駆けた浮谷選手の最下位からの大逆転という、劇的なレースで幕を閉じた(GT-Iクラス)。
TEXT:竹村 純(Jun TAKEMURA)/PHOTO:三栄・日本の名レース100戦 Vol.003

■伝説となった第1回自動車クラブ選手権

1965年(昭和40)年7月18日、新設された船橋サーキットのオープンニングレースとして第1回全日本自動車クラブ選手権が開催された。ライバル車の「トヨタS800」と「ホンダS600」の戦いであり、またそれを操る2人のライバルドライバーの浮谷東次郎選手と生沢徹選手の戦いでもあった。結果は、トヨタS800を駆けた浮谷選手の最下位からの大逆転という、今も語り継がれる伝説のレースとなった(GT-Iクラス)。

第1回全日本クラブ選手権
第1回全日本自動車クラブ選手権のスタート風景

●スポーツモデルを象徴するホンダのSシリーズ

ホンダ初の乗用車は、スポーツモデルを象徴するSシリーズの第1弾にもなった1963年にデビューしたオープンスポーツ「ホンダS500」である。

ホンダS500
ホンダ初の乗用車である1963年にデビューしたSシリーズの第1弾「ホンダS500」

S500は、最高出力44psの531cc直4 DOHCエンジンを搭載して優れた走りを発揮したが、海外進出を意識してさらに高出力化が必要という判断から、翌1964年には排気量を600ccに拡大した「S600」が登場。最高出力が57psに向上、最高速度は145km/hと、海外でも通用する走りに進化した。

ホンダ「S600」
1964年にデビューしたホンダ「S600」。S500の排気量を拡大

2年後の1966年には、さらに排気量を拡大した「S800(エスハチ)」が登場。排気量が800ccとなったS800は、最高出力が70ps/8000rpmまで向上し、最高速は160km/hに達した。

ホンダ「S800(エスハチ)」
1966年にデビューしたホンダ「S800(エスハチ)」。パワーアップした俊敏な走りで人気を集める

●ホンダSシリーズに対抗して登場したトヨタスポーツ(S)800

「トヨタS800(ヨタハチ)」は、ホンダのSシリーズに対抗して1965年に登場した。空力を考慮した流麗なスタイリングを採用して、そのCd値は驚異の0.30を達成し、また軽自動車並みの580kgの軽量化を実現。この優れた空力性能と軽量化こそが、トヨタS800のアピールポイントだった。

トヨタスポーツ800(ヨタハチ
1965年にホンダSシリーズに対抗してデビューした「トヨタスポーツ800(ヨタハチ)」

パワートレインは、790cc 2気筒空冷水平対向OHVエンジン、最高出力45ps/5400rpmはスポーツモデルとしては決して高くないが、優れた空力性能と軽量化によって俊敏な走りを実現した。

●トヨタS800とホンダS600の対照的なアプローチ

トヨタS800とホンダS600の主要スペックは、以下の通りである。

・トヨタS800(ヨタハチ):優れた空力性能と軽量ボディがストロングポイント
ボディサイズ:全長3585mm/全幅1465mm/全高1175mmエンジン:790cc 2気筒空冷水平対向OHVエンジン
最高出力:45ps/5400rpm、最大トルク:6.8kgm/3800rpm、最高速度:155km/h車体重量:580kg

・ホンダS600:バイク譲りの高回転・高出力のDOHCエンジンがストロングポイント
ボディサイズ:全長3300mm/全幅1430mm/全高1200mm
エンジン:606cc直4 DOHCエンジン
最高出力:57ps/8500rpm、最大トルク5.2kgm/5500rpm、最高速度:140km/h以上
車体車重:720kg(クーペは734kg)

ホンダ「S600」
バイク譲りの高速・高性能DOHCエンジンを搭載したホンダ「S600」

●伝説となった第1回全日本自動車クラブ選手権

船橋サーキットのコース図
船橋サーキットのコース図

今は無き船橋サーキット。1965年のこの日、T-I、T-II、GT-I、GT-IIクラスの4レースが開催され、若き天才ドライバーの浮谷東次郎選手(トヨタS800)と生沢徹選手(ホンダS600)がGT-Iクラスで激突。午前の予選は生沢選手がトップをとり、午後4時から30周の決勝レースがスタートした。

レース前のドライバーたち
レース前のドライバーたち
レーシングメイト
VANでキメるレーシングメイト。下右が浮谷東次郎、後方中央のサングラス姿が式場壮吉、その右が後の徳大寺有恒の杉江博愛

5周目では、生沢選手2位、浮谷選手3位だったが、ここでアクシデントが発生した。両車がカーブで接触、生沢選手はそのまま走行できたが、浮谷選手はフェンダーが潰れて24秒のピットインを余儀なくされ、最下位に転落してしまった。

GT-Iレース
GT-Iレース

しかし、ここから浮谷選手の伝説となったごぼう抜きの快進撃が始まり、徐々に順位を上げてなんと20周目には1位の生沢選手を追い上げる2位まで順位を上げ、そして23周目でついに生沢選手を捉えてトップに立つと、その後は独走してフィニッシュした。

GT-Iレース
浮谷は猛追による猛追でついに生沢に追いついた。S字からソックスカーブへの攻防をマーシャルたちも注目、そして大逆転へ!
GT-Iクラス
GT-Iクラス、浮谷が緊急ピットインでフェンダーを叩き出す

この奇跡ともいえる逆転劇によって、トヨタS800と浮谷選手の名は世に轟いたが、何と無念なことに若き天才ドライバー浮谷選手は翌月、練習中の事故でこの世を去ってしまった。

GT-Iクラス
GT-Iクラス
GT-Iクラス
GT-Iクラス
GT-Iクラス
GT-Iクラス
GT-Iクラス
GT-Iクラス
GT-IIクラス
GT-IIクラス
GT-IIクラス
GT-IIクラス
GT-IIクラス
GT-IIクラス
GT-IIクラス
GT-IIクラス
T-Iクラス
T-Iクラス
T-Iクラス
T-Iクラス
T-IIクラス
T-IIクラス
T-IIレース
T-IIレース
T-IIレース、#12大坪善男ワークス・スカG
T-IIレース、#12大坪善男ワークス・スカG
T-Iレース、#27津々見友彦ブルーバードVS.#34寺西孝利ホンダS600
T-Iレース、#27津々見友彦ブルーバードVS.#34寺西孝利ホンダS600
T-Iレース
T-Iレースではスバル 360の意外な好走が観客を魅了した
T-Iクラス リザルト
T-Iクラス リザルト
T-IIクラス リザルト
T-IIクラス リザルト
GT-Iクラス リザルト
GT-Iクラス リザルト
GT-IIクラス リザルト
GT-IIクラス リザルト

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クルマの速さが、エンジンパワーだけでないことを証明した第1回全日本自動車クラブ選手権。高性能や低燃費というとエンジンが注目されやすいが、ボディの軽量化と空力性能の影響も大きい。そのため、最近は高剛性で軽いハイテン(高張力鋼板)やCFRP(カーボンファイバー強化樹脂)などの新素材がクルマのボディに積極的に使われている。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。

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著者プロフィール

竹村 純 近影

竹村 純

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までを…