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■11代目ブルーバードはシルフィのサブネームを付けた大人向けセダン
2000(平成12)年7月28日、日産自動車は「ブルーバード」の11代目として「ブルーバード・シルフィ」を発表(発売は8月30日)。新たにシルフィというサブネームを付けて新鮮さをアピールしたが、見た目がややおとなし過ぎたためか日本では存在感を示せなかったが、一方中国では大人気モデルとなった。
●日本のマイカーブームをけん引した名車ブルーバード
日産のブルーバードと言えば、トヨタの「コロナ」とともに1960年代に日本のモータリゼーション、マイカーブームをけん引したミドルサイズのセダンである。1957年にデビューした初代コロナ「トヨペットコロナ」に対抗するかたちで、1959年に初代ブルーバードは「ダットサン・ブルーバード(310型)」の車名で誕生。1960年代から1970年代にかけて、ライバルのコロナと“BC戦争”と呼ばれた熾烈な販売競争を繰り広げた。
モータースポーツでの活躍も目覚ましいものがあり、世界で最も過酷と言われたサファリ・ラリーでクラス優勝した初の日本車はブルーバードだった。当時のブルーバードは、日産の優れた技術の象徴であり、看板モデルとして不動の人気を誇っていた。
ところが、ユーザーニーズの多様化により、10代目ブルーバード(U14型)が登場する頃には、市場のニーズはセダンからワゴンやミニバンに移行し、ブルーバードの人気も低迷し、かつての輝きは失せてしまったのだ。
●団塊の世代をターゲットにした11代目ブルーバード・シルフィ
11代目ブルーバード(G10型)に相当するブルーバード・シルフィは、人気が低迷していたブルーバードの人気挽回のため、シルフィというサブネームを付けることで新鮮さをアピールした。ちなみに、シルフィは風の妖精(Shilph)の造語である。
当時の50代、いわゆる”団塊の世代”をターゲットに、奇をてらわずオーソドックスな5ナンバーの4ドアセダン、言い換えると大人しい万人受けするスタイリングだった。パワートレインは、1.5L/1.8L/2.0L直4 DOHCの3種エンジンと、CVTおよび4速AT、5速MTの組み合わせ。
注目されたのは、日本車として初めて米国カリフォルニア州U-LEV(超低排出ガス車)の認定を受けたことだった。これは、当時のハイブリッド車よりも排ガス性能が優れていたことの証だった。
販売価格は、154.9万円(1.5L/2WD)~206.2万円(2.0L/4WD)と比較的リーズナブルだったが、大人しい地味なスタイリング、さらに日本はセダン冬の時代に突入していたため販売は低迷。2012年の3代目(ブルバードとして13代目)でブルーバードの冠がとれ、シルフィの単独ネームとなったが、結局2020年に国内での販売は終了した。
●ブルーバードの名は途絶えるも、シルフィは中国で大人気
国内販売は低迷して販売を終えたが、海外では4代目シルフィがデビューし、相変わらぬ人気を博している。特に、セダンの需要が高い中国では大ヒット、中国は日本と異なりセダンはまだ根強い人気があり、シルフィは性能、経済性、信頼性の3拍子が揃ったクルマとして、ブランドが確立されているのだ。
シルフィは、2021年、2022年と中国の新車販売でトップに君臨し、年間40万台~50万台売れており、改めて日本市場と中国市場の大きな違いに驚かされる。ところ変われば、好みも変わるものだ。
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昭和の名車がどんどん消えていく中、ブルーバードの名前も消えて寂しい思いをした昭和世代も多いと思われるが、ブルーバードの後を継いだシルフィが中国で頑張っていることを耳にすると、何となくうれしい気持ちになってしまう。名前は消えても、その血統は受け継がれているのだろう。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。