水上と陸上を走れる装甲車、AAV7のすごい実力:地上72km/h、水上で13km/hで走れる! 公開日 2021/11/28 更新日 2021/11/28 コラム・連載記事 著者 貝方士英樹 水陸機動団に配備されたAAV7 日本を守る陸・海・空自衛隊には、テクノロジーの粋を集めた最新兵器が配備されている。普段はなかなかじっくりみる機会がない最新兵器たち。ここでは、そのなかからいくつかを紹介しよう。まずは、水陸両用車AAV7である。 PHOTO◎米海軍 合計枚数3枚 すべての画像を見る AAVとは「Amphibious Assault Vehicle」の略で、水陸両用戦闘装甲車両を意味する。水上航行と陸上走行を連続して行える戦闘装甲車両として、米海兵隊で1971年から運用され続けている。現役の実用車両という意味では唯一無二の存在といえるはずだ。AAV7は最大25名、小銃小隊なら2個分隊程度の人員を輸送可能だ。完全武装した兵士を約20名、車内へ収容できる。本車を何台も連ねることで全体では数百名の兵士を一度に上陸させることができるものだ。米海兵隊など、勢力の先駆けとなって目標地へ接近・上陸し、そのまま内陸部へ進行し作戦行動を行う部隊にとって不可欠の上陸装備ということだ。本車の重量は約25.6tだが、軽合金製の車体に装甲を加えることで、浮上航行と防御性能を両立している。水上では、取り込んだ水を後方へ噴出させて進むウォータージェット推進方式。浮上航行時の最大速度は時速約13㎞。これで水上を進む。そして、装軌式(キャタピラ式)の脚周りを備えることで走破性も高く、泥濘地と同じような低μ路である波打ち際でもスタックすることなく駆け上がることができる。水上から陸上まで連続して進行可能なメカニズムだ。陸上自衛隊は本車を主に水陸機動団へ配備している。人員輸送型や指揮通信型、回収型の3タイプの合計52両を導入する。水陸機動団は島嶼防衛のため編成された部隊だ。島嶼防衛とは文字どおり我が国を構成する多数の島々を守ること。その防衛行動はAAV7を使った「上陸作戦」だけを意味しないが、本質は島や領域の奪回にある。たとえば、本車を使った作戦行動の基本は次のようになる。まず、沖合いに停泊した輸送艦から発進、敵の射程圏外の安全な海域で待機し、十数両程度のグループを作る。全車は横一列になって目標海岸へ前進を開始。隊形を保持して被弾性を分散するとともに一気呵成に海岸線を目指す。発煙機で煙を発生させ隠蔽効果を上げながら前進し、上陸直前には発煙弾を投射してさらに身を隠し敵からの射撃被害を抑え上陸する。上陸と同時に、乗車した隊員たちは速やかに下車・展開し、戦闘を開始するといった塩梅だ。実際は、目標地域へ事前に空爆や艦砲射撃などを行ない、敵勢力の減衰を図ってからAAV7による上陸が行なわれる。 あわせて読みたい 護衛艦「はたかぜ」型、艦隊防空を担うミサイル護衛艦として長く現役を続け、現在は練習艦に 艦対空ミサイルを積み艦隊の防空を担当する海上自衛隊ミサイル護衛艦「はたかぜ」型。前甲板に対空ミサイルランチャーを置いて射界を確保、後甲板はヘリコプターの発着甲板とし対潜戦などでヘリの活用性を上げた。古兵となったが護衛艦の機能性や実用性を具現化した姿は頼もしい。現在は護衛艦籍を離れ練習艦となっている。 TEXT&PHOTO◎貝方士英樹(KAIHOSHI Hideki) キーワードで検索する検索 シェア 投稿 ブックマーク # 自衛隊新戦力図鑑 (134) 著者プロフィール 貝方士英樹 名字は「かいほし」と読む。やや難読名字で、世帯数もごく少数の1964年東京都生まれ。三栄書房(現・三栄… 続きを見る