1967年型アルファロメオ・ジュリアクーペが路上で立ち往生!? 原因はブレーキマスターバック……部品代と修理費はいくらかかる?

【旧車アルファロメオ・オーナーの現実 vol.3】
アルファロメオ・ジュリアシリーズ(110/115系)限定ミーティング『CAFE DE GIULIA』に訪れた翌日の早朝、筆者のアルファロメオ・ジュリアクーペ(1300GTジュニア)が突然ブレーキがロックして路上で立ち往生してしまった。原因はブレーキマスターバック。8年前に新品パーツに交換したが、整備工場の診断によると再び壊れてしまったらしい。もちろん、旧車のパーツはディーラーでの入手はできない。そこで頼ったのが滋賀にあるアルファロメオパーツ専門店「キヨラパーツセンター」だった。

突然ブレーキがロックして身動きが取れなくなる……はたして原因は?

趣味車の1967年型アルファロメオが出先で故障した。埼玉県行田市にある「古代蓮の里」で開催されたジュリアシリーズ(110/115系)限定ミーティング『CAFE DE GIULIA』に意気揚々と愛車で取材に訪れた翌日、走り出して間もなくブレーキの様子がおかしいことに気づいた。昨日まではまったく問題がなかったのに、今朝クルマを出したところ後輪ブレーキを引きずる感じがするのだ。

アルファロメオ・ジュリアが集まる『CAFE DE GIULIA』に行ってみた! 会場には様々なジュリアはもちろん希少なクルマが目白押し!

2024年4月14日(日)、埼玉県行田市にある「古代蓮の里」北側駐車場脇バーベキュー広場にてアルファロメオ・ジュリアシリーズ(110/115系)限定のミーティング『CAFE DE GIULIA』が開催された。主催は110/115系を中心にしたオーナーズクラブの「クラブ・ビッシオーネ」で、2003年より毎年春にこのミーティングを開催している。オリジナリティを重視したジュリアシリーズの集まりに、筆者の愛車である1967年1300GTジュニア(ボディに錆が浮かんだポンコツ)を伴って訪れた。今回はミーティングにエントリーした素晴らしいコンディションの105/115系アルファロメオを紹介する。 REPORT&PHOTO:山崎 龍(YAMAZAKI Ryu)

最初はサイドブレーキのワイヤーが伸びたか引っかかって解除されなくなったのかと思い、数百メートル走ったところで路肩に停めて、下回りを覗いてみたりサイドブレーキを数回いじってみたが一向に良くなる兆しがない。これはマズイことになるのではと思い、引き返そうとしたところでブレーキが完全にロックしてしまう。こうなるとクルマはテコでも動かない。不幸中の幸いだったのは、トラブルが発生したのが交通量が少なく道幅の広い道路だったことだ。とりあえず安全が確保されていることを確認してからJAFに電話を入れる。幸運にもJAFの救援車は30分ほどで来てくれた。

JAFのスタッフは運転席に座ってハンドブレーキをガチャガチャと操作したり、ブレーキペダルを何度か踏んでから車体の下側を覗き込んだりしてザックリと点検してくれた。疑わしき箇所をチェックしてから彼は「これはサイドブレーキが故障原因じゃないですね。この場では修理はできません」と無常にも宣告した。

牽引されるジュリアクーペ。ブレーキがロックされたことから後輪にドリーを挟んでレッカーする。

じつはアルファを動かしたのは3ヶ月ぶりのことだったが(エンジンは時々掛けていた)、昨日までは正常に動いていたのだからブレーキパッドの固着ということはありえない。車体の下側を覗いてもブレーキフルードが漏れた痕跡はない。そもそもフルード漏れやマスターシリンダーが故障したらペダルがスカスカになって戻らなくなるハズだからこれも原因から除外する。とすると、ブレーキのマスターバックが原因だろうか? 

今から8年ほど前、購入してから最初の車検時に「不具合の兆候が見られる」ということでマスターバックは新品に交換している。交換後それほど距離も走っていないが、考えられる原因はそれしかない。

「どうしましょう? このまま放置もできませんし、どちらかにレッカーで運ぶことになりますが……」とJAFのスタッフ。わが家は人通りの多い狭い路地の奥にある。とてもじゃないがブレーキが固着して動かないクルマを自宅車庫に入れることなどできるはずもない。となれば、運び先はひとつ。主治医の自動車工場しかない。

JAFのレッカーで整備工場へ向かう

というわけで、JAFのスタッフに運び先をを伝えたると、慣れた手つきでアルファの後輪にドリーを差し込み出発。トラックに揺られること20分で、早朝でまだ開いていない整備工場に到着した。りあえず「故障車」と書いたメモを残して整備場のシャッター前に停めさえてもらうしかなく、断りなく故障車を敷地に置くのは申し訳ない気持ちになるが、営業時間の少し前に電話を入れて事情を説明すればきっと許してくれることだろう。

早朝、突然のブレーキロックによりジュリアクーペが路上で立ち往生してしまった。JAFに日頃メンテを頼んでいる工場にレッカーしてもらう。

工場が開くちょっと前、お詫びと事情説明のため工場に電話を入れる。先方は何が起きたか察しってくれたようで、すでにリフトに上げてブレーキ廻りのチェックをしているという。「十中八九マスターバックが原因だね。一応様子を見るためにブレーキ関係をひと通り点検してみるよ。それでダメなら修理か交換かな?」と電話口の主治医は語る。とりあえず、そのまま修理を依頼してクルマを預けることにした。

整備工場に入庫したアルファ。主治医は町のモーター屋さんで、国産車のメンテナンスを主に請け負っているが、旧車や輸入車などの整備や修理も受け付けてくれる。筆者が所有するすべてのクルマの面倒を診てもらっている。専門店ではないのでときには対応が難しいケースもあるが、その場合はスペシャルショップに修理を依頼している。ポジション的には掛かり付けの町医者のようなもので、症状によっては専門医や大学病院に行くという感じに近い。

原因はマスターバックの不調と判明……部品は自分で探すことに

それから2日後、工場から電話が掛かってきた。「いろいろ試してみたがブレーキがロックしたまま解除されないよ。やっぱりマスターバックの故障原因だね。これはオーバーホールして直すか、新品のマスターバックに交換しないと直らないな。ウチではパーツの入手ができないから山崎さんの方で手配してもらっていいかな?」と電話口の主治医。

前回交換から8年ほどで再び不調になったマスターバック。105/110系のアルファロメオはパーツ供給に比較的恵まれているが、製品の品質はいまひとつのものが多いようだ。

最近の車種ならともかく、ジュリアクーペのような旧車は専門店でもない限りパーツの手配は難しい。そこで筆者は車検や修理の際には他店で必要な部品を購入し、パーツ持ち込みで整備をお願いしている。もちろん、こちらで持ち込んだパーツの初期不良や適合・不適合のリスクは承知の上だ。

ときには手に入れたパーツが最初からダメでパーツを取り直すこともあるが、その場合は工場に二度手間をかけさせることになるわけで、その分の工賃は値切ることなく耳を揃えてキッチリ支払っている。これがパーツ持ち込みで整備を依頼する上でのリスクとなるが、生じたリスクはオーナー自らが被るしかない。好きで古いクルマに乗っているのだから、こればかりは仕方がないことだと受け入れるしかないのだ。

110/115系アルファロメオのパーツで困ったらココ!
岐阜のキヨラパーツセンターに頼ることに……

肝心のパーツの入手だがこれにはアテがある。旧車で頭を悩ませるのが部品入手の問題だが、こと105/115系のアルファロメオに関しては状況はかなり恵まれている。全国各地にパーツ販売を手掛ける専門店があるし、機能部品に関して言えば、ほとんどのパーツが正規パーツもしくはリプロダクション品として入手が可能なのだ。

気になるパーツの価格だが、正直なところこれはピンキリだ。同じパーツでも店によってプライスはまちまちで、ときには倍ほど金額に開きが出ることも珍しくない。しかし、複数の店でいちいち相見積もりを取るのも現実的ではないし(ショップはそうした面倒な客を嫌うし、店に嫌われては愛車を維持する上で支障が出ないとも限らない)、店の言い値で支払っても懐事情を気にする必要がないお大尽ならともかく、筆者のような万年金欠病の底辺アルフィスタにとっては、同じ製品なら少しでも安く買えることに越したことがない。そんな筆者のような人間にとって力強い味方になってくれるのが、岐阜県岐阜市にある「キヨラパーツセンター」だ。

車検時にキヨラパーツセンターから購入したジュリアクーペ用のパーツ。劣化してボロボロになっていたドアトリムを新調したほか、ここには写っていないがブレーキマスターシリンダーも交換した。

この店は105/115系を中心にアルファロメオなら純正パーツからチューニングパーツまで膨大なストックを揃えている。おまけに店主の人柄の良さもあって、在庫パーツは仕入れ時のまま在庫が捌けるまで価格を据え置いてくれるので、必要なパーツがリーズナブルに買えることが多いのだ。しかも、キヨラの店主はアルファのパーツに関しては日本一の知識を持っているので、パーツの適合や取り付けにまつわるノウハウも購入時に教えてくれる……というプライスレスなおまけ付き。

しかもキヨラパーツセンターのアフターサービスは万全だ。前回車検時にボナルディタイプの中華製ブレーキマスターシリンダーがフルード漏れを起こしているのを発見した際には、キヨラパーツセンターに同じ製品を購入したのだが、運悪く初期不良に当たってしまったようで、3ヶ月後再びフルード漏れが再発してしまった。購入から少々時間が経過していたこともあり、どうしたものかと店主に相談すると「それは偉ろうスンマヘンでした。不良品を送って頂ければ新品に交換します」と言って交換に応じてくれるという。

新品購入したボナルディタイプのリプロダクション・マスターシリンダーはハズレだったらしく、2ヶ月ほどで再びフルード漏れを起こしてしまう。写真はフルード漏れにより汚れきった下回り(ブレーキマスターシリンダー本体は写真を取るのを忘れた)。当時のアルファロメオのマスターシリンダーにはボナルディとAte(アテ)が存在するが、現在正規品として供給されるのはAteのみ。ボナルディタイプは製造国が中国らしく品質が低く、当たり外れが大きいようだ。初期不良ということでボナルディタイプではなくAteのマスターシリンダーに交換してもらった(価格は一緒)。ただし、こちらも内部にバリが結構残っていたので研磨してから装着。今度は大きなトラブルは発生していない。

そこでせっかく交換してもらうのなら、交換時にブレーキラインの加工が必要になるものの、中華製よりは品質に期待できる純正部品のAte(アテ)への交換をお願いしてみると、店主はふたつ返事で了承してくれた。それから2日後、キヨラパーツセンターから届いたダンボールを開けてみるとAte製のブレーキマスターシリンダー一式のほか、“お詫びの印”として作業に必要なブレーキフルードまでサービスで同梱してくれていた。この心遣いに心底嬉しくなったものだ。

その上、キヨラパーツセンターは荷が届くまでの時間が早い。注文は電話1本で受け付けてくれ、在庫のあるパーツなら即日発送してくれる。離島を除き、日本全国どこでも遅くとも3日で手元に来る。在庫切れの製品でもだいたい10日前後で届くので、整備や修理で至急パーツが欲しいときには本当に助かる。

オーバーホールキットか? アッセンブリー交換か?専門家の意見は……

困ったときのキヨラパーツセンター頼みということで、今回も相談してみることにした。
「あ~、それは見立通りマスターバックが原因の故障だわね。修理に必要なパーツはもちろん在庫してます。オーバーホールキットが3万円、新品マスターバック一式が8.5万円でやらせて頂いてます。ただね、最近のジュリア用のマスターバックは昔に比べて品質がだいぶ落ちてましてなぁ。オーバーホールしてもキッチリ直るかはなんとも言えまへん。走行距離を問わず、前回交換してから8年が経つというのならそりゃ寿命でっせ。充分保ったほうだと思います。パーツの当たり外れが大きいんで、下手すると2年と経たずにお釈迦になることも珍しくないんですわ。そんなわけでウチとしては新品への交換をおすすめしてます」
とのこと。

今回、交換したマスターバック。

差額の5万円はたしかに大きいが、店主の言う通りならオーバーホールで直りきらない可能性もあり、その場合はかけた費用は無駄金になってしまう。それなら新品のマスターバックに交換するのが安心確実というもの。万が一、ハズレを引いたとしても、初期不良なら交換に応じてくれるハズだ。それなら取り得る選択肢はひとつしかない。

「新品のマスターバックのご注文でっか? そのほうが良いと思いますよ。じゃあ、明日代金着払いで工場の方に発送しますので明後日には届くと思います」とのこと。自動車税の支払いに加えて、所有する大型バイク・カワサキZX-9Rの車検も迫るタイミングでの出費はたしかに痛いが、マスターバックを交換しない限りジュリアクーペに乗れないわけで、ここは断腸の思いでアッセンブリー交換することにしたのだ。

ジュリアクーペ無事復活!頼りになるのは主治医とスペシャルショップ

トラブルから1週間後、筆者のアルファは無事に修理が完了した。ブレーキは問題なく機能するようになり、再びジュリアクーペをドライブできるようになったのだ。
今回、掛かった修理費はパーツ代8.5万円+工賃4万円合計12.5万円(送料・代引き手数料込み)。もともと乏しい預金通帳の数字はますます惨めなものになったが、これも旧車を維持するには必要な支払いだ。

旧車を維持する上で突然の出費は覚悟すべきこと。フィアット500のリポート記事「50万のクルマにローンだと」というものがあったが、筆者はリスク管理を考えて1円でも多くキャッシュフローを残しておくために、クルマやバイクの購入はローンを積極的に使っている。「クルマをキャッシュで買うヤツはバカだ!」というホリエモンほど極端なことを言うつもりはないが(そもそも残した現金は投資ではなく、メンテ代などの予備費に残すわけだし)、筆者のような個人事業主の場合、現金でクルマを買うのはメリットがほとんどないと考えている。わずかな金利で手元に資金を残した上でローン実績を積み上げることから、これを使わないのはもったいない話だ。

旧車を維持する上で何よりも重要なのは主治医となる整備工場、そしてパーツを供給してくれるスペシャルショップの存在だ。技術と専門知識を持った彼らの協力がなければ旧車のアルファロメオなど維持できるはずもない。彼らに感謝しつつ、好調を取り戻したジュリアクーペのステアリングを再び握る。さあ、今度の休日はどこへ行こうか?

●キヨラパーツセンター
住所:岐阜県岐阜市柳森町1-41
営業時間:13:00~20:00
定休日:日曜・祝日
TEL:058-276-6559

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著者プロフィール

山崎 龍 近影

山崎 龍

フリーライター。1973年東京生まれ。自動車雑誌編集者を経てフリーに。クルマやバイクが一応の専門だが、…