トライトンでオフロードを走れば気分はアジアクロスカントリーラリー!三菱のアクティブAWDで全長5mの車体がクルクル回る!?

2024年11月11日(日)〜17日(土)にタイで開催されるアジアクロスカントリーラリー(AXCR)2024がいよいよスタート。2023年に続き新型トライトンで出場するチーム三菱ラリーアートは、それに先立つ2024年7月16日(火)、千葉県のオートランド千葉ダートトライアルコースで体制発表会を実施。トライトンAXCR仕様の同乗試乗と、市販車の試乗が合わせて行われた。ダートコースでのトライトンの走りはどのようなものだったのだろうか?
PHOTO:神村 聖(KAMIMURA Satoshi)

2024年アジアクロスカントリーラリーはチーム三菱ラリーアートのトライトンが勝つ!レジェンド・増岡浩が必勝体制のマシンとチームを語る!

2022年に復活を果たし、同年のアジアクロスカントリーラリー(以下、AXCR)で先代トライトンの勝利で復活に花を添えたチーム三菱ラリーアート。さらに、2023年には新型トライトンを投入。発売されたばかりの新型車で3位入賞を飾った。そして2024年のアジアクロスカントリーラリーでは、より開発と熟成が進んだトライトンを投入し必勝を期す。ラリーアート復活以来、チームの指揮を執るのはパリ・ダカールウィナーのレジェンド、増岡浩氏だ。同氏に今年のマシンと意気込みについて訊いた。 PHOTO:神村 聖(KAMIMURA Satoshi)/三菱自動車

田口勝彦選手がテストカーをドライブ

トライトンAXCR2024仕様テストカー

トライトンのテストカーはタイヤは横浜ゴムGEOLANDAR M/T G003ではなくG005を装着するなど、本番車と異なる仕様ではあるが、リヤサスペンションはAXCR2024仕様のための4リンクリジッド+ツインショックアブソーバーになっているし、トランスミッションも6速シーケンシャルシフトが搭載されている。

テストカーに装着されるGEOLANDAR M/T G005。
4リンクリジッド化されたリヤサスペンション。

オートランド千葉のコースは概ね道幅がやや狭い林間の外周路と、開けたインフィールドという構成。試乗コースは外周路の組み合わせを変えて2周ほど走り、最後にインフィールドを回ってゴールというものだった。

オートランド千葉は関東地方では唯一のJAF公認ダートトライアルコース。奥の木が茂っている(写真の範囲外だが、写真右手も)ところが林間の外周路と島のような盛り土と木立に囲まれたインフィールドという構成。

田口選手のドライブでスタートすると、まず感じるのがシーケンシャルシフトのダイレクト感。ソフトチェンジのたびにガンッガンッとギヤが繋がる様子は如何にも競技車両だ。
タイトかつそれほど長くないストレートでは最高速こそそこまで出ていないが、ピックアップや加速はディーゼルターボならではのトルク感に溢れるものだった。

フロントにノーマルと同じくダブルウィッシュボーン、リヤに競技用の4リンクリジッドを採用したサスペンションはストロークも大きく、洗濯板のようなボコボコの路面も、トライトンが何度も走行して掘り返した深い轍も、難なくオンザレール感覚で駆け抜ける。

2022年の試乗会のような急傾斜やジャンプこそないものの、タイトなコースで想像以上にクイックに動くトライトンはさすが。インフィールドで長時間ドリフトしながらの旋回も驚くほど安定していた。
そこには田口選手の確かなドライビングテクニックがあったのは確かだが、競技仕様のトライトンの意外な乗りやすさとポテンシャルを感じた。

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しかも試乗車はあくまでテスト車両。本番車両はさらにポテンシャルを高めていることだろう。とはいえ、競技は相手があってこそ。増岡総監督はこの時のインタビューでも、トヨタといすゞの排気量がもたらすパワーアドバンテージと、2023年からさらに開発が進んだと見られるトヨタ・フォーチュナーの戦闘力を警戒していた。

トライトンの市販車をダートトライアルコースで走らせる

続いて、自らステアリングを握ってのトライトン市販車のドライブだ。先ほど田口選手が走ったコースを、助手席の田口選手に助手席に指示してもらいながら走る。
車両はGSRで6速AT。スーパーセレクト4WD-IIはセンターデフをロックしない通常のフルタイム4WDで走行した。

試乗車はトライトンの上級グレード「GSR」。

同乗走行から林間ルートはかなり狭く感じる。田口選手は難なく走行していたが、それが自分にできるか一抹の不安がある。何せ、トライトン自体をドライブするのも始めてた。逆にオートランド千葉自体は走行経験はあったが、全長約5.3m(5360m)、最小回転半径6.2mの巨大なマシンを走らせた経験はない。

スタート位置から林間の外周路へ向かう。スタート位置は十分に幅広いが、林の中に入ると木々によりかなり狭く感じられる。

いざ、スタートしてみるとスクエアなボディと切り立ったボンネット、高い視点のためか意外と見切りが良く、フロントまわりの車両感覚に不安はなかったし、3130mmというホイールベースによる内輪差も少なくともコース内の曲率では特に意識せずにステアリングを切ることができた。

ボディサイズの数字より小回りが効く印象。スクエアなデザインとフラットなボンネットでボディの見切りも良い。

オートランド千葉は基本的にはあまり傾斜は無いのだが、林間コースに緩やかな傾斜がある。特に下ってからタイトに回り込むヘアピンがあり、飛び込むのは勇気が要る。とはいえ、車高のあるトライトンは、以前経験したフロントダイブし過ぎてノーズで土を噛むというような心配はない。

明るいところから暗いところに入っていくため、明暗で視界が変わるのも難しいコンディション。

しかし、飛び込んでからステアリングを切ってアクセルを開けてコーナーを脱出する……というのを繰り返されたコーナーは掘り返されて深い轍になっている。田口選手の「轍の外側にタイヤを当てるようにすると走りやすい」とのアドバイスに従うと、確かにオンザレールでコーナーをクリアできた。

5360mの全長と3130mmのホイールベースにしては6.2mの最小回転半径は良い方。ちなみに、トヨタ・ハイラックスは全長5320mm、ホイールベース3085mmで最小回転半径は6.4m。

上りコーナーに大きな凹凸があるところでかなりサスペンションがストロークして車体底面を打った音もしたが、始終安定した走りを見せてくれ、当初危惧してた不安はほとんど感じられなかった。

2.4Lディーゼルターボはトルクフルで扱いやすい。

フラットなインフィールドで8の字を繰り返したのだが、これまた驚くほどクルクルと回ってくれた。インフィールドの周囲には島状の盛り土や土壁、場所によっては小型車がハマりかねない穴が空いており、アンダーを出してヒヤっとすることもあったが、ブレーキ(ABSの助けを借りつつ)とステアリングで回避は容易。

4WDのおかげでトラクション性能や安定性は抜群。それでいて、ボディサイズの印象よりは小回りの効く回頭性も兼ね備える。

田口選手曰く「旋回時はアクセルを戻さないでむしろステアリングを切った状態で全開にしていけばリヤが流れて小さく回れる」ということだった。アドバイスに従ってみると確かにその通り、それでいてスピンもしないのだから三菱の最新4WD制御技術をまざまざと体感することになった。

ステアリングの切れ角が小回りの良さに効いているようだ。

この体制発表会と試乗会当日は好天に恵まれ気温はかなり高めながら、テスト車両も市場車両もきちんとエアコンが効いていたのは幸いだった(試乗車は当たり前だが)。

元々ホイールハウスに余裕はあるが、サスペンションのストロークの大きさがわかる。

田口選手に訊いてみたところ、2023年仕様も含めて競技車両もエアコン付きだそうだ。確かに、WRCのようなステージ距離の短いラリーと違い、クロスカントリーラリーはステージ距離も競技日程も長い。しかも熱帯のタイを舞台に戦われるのだから、エアコンレスではクルマより先に人間が参ってしまうだろう。漠然と競技車両=エアコンレスという思い込みがあったので意外に感じた。

電子制御の設定を変えると走りも変わるのだが、デフロックや2WD状態なども比較してみたかった。

ダートトライアルはGRヤリスやランサーエボリューションといった4WDターボを頂点に、GR86/BRZといったFR車、スイフトといったFF車が多く使われているが、競技としてタイムを競うのでなければトライトンでダートトライアルコースを走るのはかなり楽しそうだ。

トライトンのダートトライアルコース走行はかなり楽しい。

トライトンの日本仕様は6速ATのみの設定で、今回の試乗でもステアリングとアクセルに集中できたために初めて乗る大柄なピックアップトラックをダートトライアルコースで難なく走らせることができた。一方で、自分で回転を合わせてクラッチを踏んでシフトチェンジしたり、サイドブレーキでタイトターンを回ってみたりしたらもっと面白いのではないか?とも感じられた。時流では無いのはわかっているが、トライトンの6速MTでダートトライアルコースを走ってみたいと思うのである。

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