よく見りゃ似ているこの2台! 昭和の名車から現行車種まで、激似・ちょい似のクルマたち【MFクルマなんでもラウンジ】No.3

今回の「ラウンジ」は「似ているクルマ」がテーマだ。
外に出ても暑いだけだし、まあ、クーラーの効いた部屋でのひまつぶしに読んでみてくださいな。
TEXT:山口尚志(YAMAGUCHI Hisashi)
PHOTO:本田技研工業/マツダ/トヨタ自動車/日産自動車/モーターファン・アーカイブ/山口尚志

ん? ん? ん?

3年前の2021年4月に現行2代目ホンダヴェゼルが発売されたとき、マツダのクルマに似ているという声が一部に聞かれたことがあった。

ホンダヴェゼル(2021年)。
マツダCX-5。

似たサイズのマツダCX-5を引き合いに出すと、ボディサイドのウインドウグラフィックはともかく、フロントに目をやれば切れ長のライト、バンパーに食い込んだグリル・・・この2台に限らず、これらのデザイン手法は最近多くのクルマに採り入れられているが、こと現行ヴェゼルのフロントフェイスは確かに最新マツダCX一群を思わせるものであり、「似ている」という声が出てくるのもうなずけるというものだ。

オプションをつけたヴェゼルとCX-5を同じ赤同士で比べると・・・もっと似る!

このような、「このクルマ、あのクルマに似ている」という例が過去にもあるので、そのいくつかをご紹介しよう。

なお、ここに掲げた「似ている・似ていない」は、すべて筆者の独断である。似ていないと思っても、似ていると思わなくても、文句は言わないように。

初代ストリーム vs 初代ウィッシュ

初代ストリームの登場は2000年10月。1.7Lと2.0 Lエンジンを搭載し、すべてにFFと4WDをラインアップしていた。対する初代ウィッシュは2003年1月の発売で、当初1.8L1本のFF & 4WDでスタートし、3カ月後の4月に2.0L直噴エンジン車を追加(こちらはFFのみ)。

ホンダストリーム(初代・2000年)。
トヨタウィッシュ(初代・2003年)。

似ているのは横から見たスタイリング。写真をごらんあれ。

サイドウインドウの輪郭は別ものだが、ボディシルエットはそっくりだ。

全長・全幅・全高のすべてが両車同一なのだ。

【初代ストリームボディ寸法(FFモデル・2000年10月)】
全長×全幅×全高:4550×1695×1590mm

【初代ウィッシュボディ寸法(FFモデル・2003年1月)】
全長×全幅×全高:4550×1695×1590mm

両車ホイールベースが少し違う、4WD車同士の比較となると全高が異なるなどがあるのだが、標準FFモデル同士での比較となると、この2車の寸法はまったく同じなのだ。
ウィッシュの開発スタートは1997年。ということは、ウィッシュ開発中盤にストリームが登場したことになるわけだが、おおかたのデザインは決まっていたであろうその時点で寸法を決め直したのではないかと思うほどの寸法でウィッシュは登場したのだった。
この2台の相似っぷりは、クルマ好きなら誰でも記憶し、同じ認識をしていることだろう。実際、当時の自動車雑誌でも話題になっていたものだ。

2代目コロナ・マークII vs 2代目サニー・エクセレント

筆者が幼少の頃、「何だか同じ雰囲気だなあ」と思っていた2台。
片やコロナの上級版として現れた、コロナ・マークIIの2代目、他方、日本のモータリゼーションを牽引した大衆車、サニーの3代目シリーズの上級版、サニー・エクセレント(サニー・エクセレントとしては2代目となる)。それぞれが世に出る頃には日本人もクルマの購買力をつけていたと同時に、マークIIもサニーも両メーカーの看板車種にまで成長していた。

トヨタコロナマークII(1972年)。
ダットサンサニーエクセレント(1973年)。

似ていると思うのはその後ろ姿。同じアングルではないのだが、おわかりいただけるだろうか?
ズルリと下がったトランクと、その下の、両脇が垂れ目風の赤(ストップ&テール)とオレンジ(ウインカー)が、ぐるりと囲んだ化粧枠の中で交互に並んでいるところが似ている。サニーのほうが上下2段構成という違いはあるにせよ、高めに位置したバンパーの中央にナンバープレートがレイアウトされている点、下がったトランクリッドと相まって、似ているように見えてならない。

自動車をよく知らない人が見たら、どっちがどっちなのかわからないに違いない。

サイドビュー同士を比較しても、水平のフード、後ろに向かうにつれてせり上がったウエストラインの延長線が、リヤピラーをはさんで高めのリヤガラス下端と結びつくところなどもそっくりだ。この、リヤガラス下端が高めなのは、後方視界の確保にはあまりありがたくないものだった。

サイドから見ても全体のシルエットがよく似ている。このあたり、さきのストリームとウィッシュの関係によく似ている。

ウエストラインのカーブは、当時の国産車の多くが、おそらくはアメリカからの流れで採り入れていた手法で、何もこの2台に限ったことではない。この頃のセドリック/グロリアなんて、カーブさせるどころかうねりをも与え、「コークボトルライン」と称していたものだ。

初代レジェンド vs 7代目カローラ

またもホンダ・トヨタ対決。

ホンダ初のフラッグシップ・初代レジェンドと、歴代中、最高の品質で、カローラを極めたカローラである7代目AE100カローラ。どこが似ているのかというと、またも後ろ姿。

ホンダレジェンド(初代・1985年)。
トヨタカローラ(7代め・1991年)。

何とか似たアングルの写真がほしかったのだが、当時のカローラカタログには好都合のものが見当たらなかったので細工した。
カローラSE-Lの写真を反転させ、初代レジェンドの写真とアングルを揃える。

カタログの、このアングルのカローラを反転させて・・・
ラーロカタヨトにする。

そしてレジェンドと反転カローラを比べてみると・・・

ほぼ同一のアングルのレジェンドと反転カローラを比べると、後ろの形がよく似とる!
拡大してしつこくもういちど。2段のリヤランプの配分比率およびコーナー部の形状、ナンバープレートが収まる控えめな突き出し量のバンパーが共通している。

どうもクルマのデザイナーや開発陣は、車両のフロント側は他車と似ないように気をつけるのに、こと、後ろ姿についてはその意識が希薄になってしまうのではないか。考えてみれば、ひとは新型車を後ろ姿よりはまずフロント~全体を眺めまわして(たぶん)、良し悪しを判断し、後ろ姿は後まわしにするから、後ろ姿が何かに似ていたところで、クルマを造るほうも見るほうも、意外に問題にしないのかも知れない。

ここまでは過去のクルマ。最後は昔のクルマと現行モデルの比較だ。

初代チェリーバン vs マツダ3

これまでの日本名「アクセラ」が、世界統一車名に向けた改称とともにモデルチェンジしたマツダ3を見たとき、筆者は初代チェリーバンを思い出した。

日産チェリー版(初代・1970年。写真は1972年型)。
マツダ3(2019年)。

チェリーバンについては、当時の雰囲気を楽しんでいただくため、カタログページ写真をそのまま載せることにする。

この2台、どこが似ているかというと、どちらもバックドアガラスが寝かせ気味で、かつ、斜め後方視界を遮るのが目的であるかのようにリヤピラーが太いところだ。時代もボディサイズも段違い、ドア数が違えばフードとキャビンの比率も相違しているので、サイドから見たときの輪郭全体が似ているとはいえないが、ボディ後半部は似ているように感じられる。

・・・・・・。無理があるのは重々承知。ボディの後ろだけを見るように。

スタイリングも去ることながら、アングルまで酷似した写真を揃えることができた。もしかしたらマツダ3のカメラマンは、どこかで見たこれらチェリーバンの写真を憶えていて、マツダ3を意識的に同じアングルで撮ったのではないかと思うほどだ。

どちらも見るからに斜め後方の視界が悪そうだ。両車約50年の時を隔てていながら、よくもまあ都合よく似た形、似たアングルの写真があったものよ。

チェリーバンのリヤピラーの形状は、本家セダンのモチーフをそのまま採り入れたようだ。確か富士山をモチーフにしたと何かで読んだ気がする。

日産チェリーX-1 4ドアセダン(写真は1971年型)。
チェリーのリヤスタイル。

これら5組のクルマたち、筆者には似て見えるが、みなさんはどう感じますか?

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山口 尚志 近影

山口 尚志