ミニマリズムに徹したボルボEX30。「その考え方はスマートでカッコイイ」と共鳴できれば買い!だ

ボルボEX30ウルトラ シングル モーター エクステンデッド レンジ 車両本体価格:559万円
ボルボの最新電気自動車(BEV)、EX30をドライブした。3月に初対面&短時間の試乗を済ませているので、2度目の対面&試乗ということになる。今回は都内の幹線道路と首都高速および東北自動車道を走った。デザインと使い勝手を含めてレポートしたい。
TEXT:世良耕太(SERA Kota)PHOTO:長野達郎(NAGANO Tatsuo/ニューモデル速報)

コンパクトなサイズがいい

ボルボEX30ウルトラ シングル モーター エクステンデッド レンジ 車両本体価格:559万円 ボディカラーはモスイエロー

3月の試乗後に何度か路上で見かけてはいるが、持ち主に遠慮せずまじまじと観察するのは5ヵ月ぶりということになる。改めて観察してもボルボの新世代BEVであるEX30、スタイリッシュだ。好みは人それぞれだろうが、個人的には刺さりまくりである。

ワイヤレスイヤホンを買うにしても、モバイルバッテリーを選ぶにしても、機能を重視するのはもちろんだが、それと同程度に、あるいは準じたレベルで、デザインのことを気にするはずだ。機能が同じなら、カッコイイほうがいいし、オシャレな製品を持ち歩きたいという気持ちを持つに違いない。

デジタルガジェットを選ぶときの判断基準をBEVにあてはめると、ボルボEX30は充分に高い性能をオシャレでコンパクトな筐体に凝縮しており、非常に魅力的な製品ということになる。

ボディサイズ:全長×全幅×全高:4235mm×1835mm×1550mm ホイールベース:2650mm 最小回転半径 5.4m
トレッド:F1590mm R1595mm 最低地上高:175mm
車両重量:1790kg 前軸軸重840kg 後軸軸重950kg

EX30の魅力の第一点は、そのコンパクトなサイズだ。全長×全幅×全高は4235×1835×1550mmで、BセグメントとCセグメントの間くらいである。国産SUVでは、マツダCX-3が4275×1765×1550mm、レクサスLBXが4190×1825×1545mm。インポート系ではDS3が4120×1790×1575mm、フォルクスワーゲンTクロスが4115×1760×1580mmである。インポートのBEVでは、ヒョンデ・コナが4355×1825×1590mm、BYDドルフィンが4290×1770×1550mmだ。

EX30は機械式立体駐車場が利用できる1550mm以下に全高を抑えているのがポイント。BEV専用のプラットフォームを採用することで、20インチの大径タイヤ&ホイール(オプション設定で、標準は19インチ)を四隅に配置し、安定感のあるスタンスを実現しているのも特徴である。細かなところでは、競合他社にはあって当たり前のシャークフィンアンテナやロッドアンテナがなく、非常にすっきりしたフォルムとしている。

ミニマリズムに徹したインテリアがいい(と受け入れられる人には)

ドライバーの前にはメーターはない。あるのは、ドライバーモニタリングシステムのカメラだけ。速度はセンターディスプレイの上部に表示される。ハーマンカードンオーディオを装備。スピーカーは前方、サウンドバー方式
2ゾーンエアコンを標準装備。PM2.5センサー付き コルク、松脂、再生PETから生成されたノルディコの採用。フロアマットは、廃棄された漁網から再生された素材を使う。

インテリアはミニマリズム(必要なものを最小限までそぎ落とす考え方)が徹底している。この考え方の根元にあるのはカーボンフットプリント低減のための合理性で、例えばドアにパワーウインドウのスイッチを設けなければ、配線を通す必要がなくなって軽量化につながるし、コスト低減につながる。また、製造時に必要なエネルギーを抑えることにつながり、CO₂排出量の低減につながるというわけだ。

ミニマリズム的なデザインはユーザーに多少の不便を強いるが、CO₂排出量を最小限に抑える狙いが背景にあるので、「その考え方はスマートでカッコイイ」と共鳴できる場合は、EX30のミニマリズムなデザインを好意的に受け止めるに違いない。多少の不便とは例えば、パワーウインドウのスイッチがセンターアームレストの前端に配置されていること。スイッチはふたつしかなく、リヤのウインドウを開閉する場合は「REAR」のボタンを押して機能を切り替える必要があることである。

ステアリングホイールは若干扁平している。ロックtoロック2.8 ステアリングホイールにもヒーターを装備
左側はワイパーとライトのスイッチ
ステアリングホイール右側にあるレバーがシフト
ミラーもウィンドウもライトもワイパーも、設定はこの画面から行なう。
サイドミラーの調整方法。

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また、ドアミラーの角度調整はセンターのディスプレイを操作してメニューを呼び出し、画面をタッチして行なう。パワーウインドウのスイッチと同様、ドア側にはない。しかも、画面をワンタッチした際のストロークが大きすぎて、好みに位置にピタリと調整するのが難しい。メーターはドライバーの目の前にはなく、ヘッドアップディスプレイもない。走行中に車速を確認する場合は、首を振ってセンターのディスプレイに視線を移動させる必要がある。EX30に初めて触れる場合は戸惑いを感じるかもしれないが、どれも慣れが解決するように感じた。

軽さを感じられる走りがいい(車重は1.8トンだけど)

東北道を走るEX30。高速道路ではパイロットアシストをオンにした。

高速道路ではパイロットアシスト(ACC+車線維持支援)を試した。交通量が多かったこともあり、レーンチェンジアシストは試せなかった。この点については、次の機会に試してみたい。また、設計上は150kWの性能があり、実際には100kW弱の能力があると伝わる急速充電の性能についても、試してみたい項目のひとつだ。

高速道路ではパイロットアシストをオンにし、車速の制御をクルマ任せにしてしまうのが便利で快適だ。先行車に追い付いた際の減速のふるまいや、先行車がいなくなったときの設定車速への復帰のふるまいは穏やかで好感が持てる。ただし、他の機種のようにステアリングホイール上に車間距離の長短を調節するボタンがなく、調節したいと感じた瞬間に切り換えられないのはもどかしく感じた。

EX30にはレーンオフセットアシスト(トラック)が適用されており、高速道路でトラックなどの大型車両を追い越す際は、同一車線内でトラックから離れる側に約20cmオフセットさせる。追い越し後は車線の中央に戻る。オフセットへの移行も中央への復帰もスムースなので違和感はないし、タイヤ1本分だけでも威圧感のある大型車両から離れると安心感が違う。

シート地はウール30%とリサイクルポリエステル70%を使用したテイラード・ウールブレンド

今回の試乗は車重2.4t超の国産本格オフローダーと乗り換えながら行なったためか、EX30に乗り換えた途端、未来の乗り物で移動しているような新鮮な感動を覚えた。地面を這うように音もなく移動する様子は、魔法の絨毯にでも乗っているようである。EX30の車重は1790kgなので絶対値としては決して軽くはないのだが、後輪を駆動する最高出力200kW、最大トルク343Nmのモーターが応答良く反応し、ステアリング操作に対してキビキビと動くこともあり、身体で感じる動きの「軽さ」が印象に残った。

ミニマリズムに徹したボルボEX30は高いデザイン性を備えており、BEVとしてだけでなく、クルマとしての基本性能も充分に満足のいくレベルにある。取り回し性に優れたコンパクトなBEVとして高い魅力を備えていることを、改めて認識した。

グッドイヤーのEFFICIENT GRIP PERFORMANCE SUVを履く。サイズは245/40R20
0-100km/h加速 5.3秒 充電 DC:150kW AC 9kW バッテリー容量69kWh
ボルボEX30ウルトラ シングル モーター エクステンデッド レンジ
ボディサイズ:全長×全幅×全高:4235mm×1835mm×1550mm
ホイールベース:2650mm
サスペンション形式:前マクファーソン式ストラット 後マルチリンク
車両重量:2065kg
モーター:交流同期モーター
モーター型式:TZ220XSA02
モーター最高出力:200kW(272ps)/6500-8000rpm
モーター最大トルク:343Nm(35.0kgm)/0-4500rpm
駆動方式:RWD
0-100km/h加速:5.3秒
最高速度:180km/h
バッテリー容量:69kWh
WLTC航続距離:560km以上
交流電力量消費率:143Wh/km
市街地モード141Wh/km
郊外モード131Wh/km
高速道路155Wh/km
ブレーキ:前後ディスク
タイヤサイズ:前後245/45R19
車両本体価格:559万円

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著者プロフィール

世良耕太 近影

世良耕太

1967年東京生まれ。早稲田大学卒業後、出版社に勤務。編集者・ライターとして自動車、技術、F1をはじめと…