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■乗用車並みの快適性を追求した4WDオフローダーの60系
1980(昭和55)年8月29日、トヨタの4WDオフローダー「ランクルーザー60系」がデビュー。ランクルは、1951年の「トヨタジープBJ」に始まり、1954年から「ランドクルーザー」を名乗り、20系、30系、40系、55系と進化し、その後継として登場したのが60系である。60系は、本格オフローダーからの脱皮を目指して、乗用車テイストのオフローダーへと変身を図った。
トヨタジープBJから始まったランクル
ランクルのルーツは、1951年に自衛隊の前身である警察予備隊が使う制式車両の入札のために試作した小型4輪駆動車まで遡る。採用されたのは、米国カイザー・ウィリス社と技術提携していた中日本重工業(現在の三菱重工のルーツのひとつ)の「三菱ジープ」だった。
そのとき競合に参加したのが、日産「4W60ジープ」とトヨタ「トヨタジープBJ」だったが、その後“ジープ”の名がウィリスオーバーランド社の商標であることから、日産は「パトロール」、トヨタは「ランドクルーザー」と名乗ることになった。ここから、ランドクルーザーの歴史が始まった。
ちなみに 、当時世界市場で頭角を現していた英国ローバー社の「ランドローバー(陸の海賊船)」に対抗し、それを駆逐するという意気込みを込めて、ランドクルーザー(陸の巡洋艦)」とされたとされている。
初代のランドクルーザー(BJ/FJ型)は、小型トラックSB型用のシャシーを4WD用に改め、これに6気筒3.4Lのガソリンエンジンを搭載して、1953年から生産を開始した。
ランクルの進化と世界市場で人気を不動にした40系
ランクルは、その後北米を中心とした本格的な海外進出を見据え、1955年にランクル20系に進化。20系は信頼性と性能が高く評価され、トヨタの北米進出の基盤づくりに大いに貢献した。その後、30系がパワフルな3.9L直6エンジンを追加し、警察用、消防用、診療用など多彩な用途に展開された。
さらに1960年に登場した40系は、信頼性の高さが世界中で認められ、本格オフローダーとしての地位を確立。その後、24年間にわたり生産されたロングセラーモデルとなり、1974年にはランクル初のディーゼルエンジンを搭載し、ランクルの中核モデルとして長く人気を獲得した。
1967年には、海外で4WD車がRVとして人気を獲得するようになったため、40系と棲み分けするかたちで55系が登場。4ドアの本格ワゴン(商用車扱い)としての個性を明確にして、快適性と実用性を向上したのがアピールポイントだった。
●乗用車テイストのラジュアリー路線を目指した60系
55系の後継として1980年のこの日デビューしたのが60系であり、ラグジュアリーな乗用車テイストの4WDとなって登場した。当初は商用車カテゴリーだったが、モデル末期には正真正銘、乗用車カテゴリーのモデルも登場した。
エンジンは、55系から引き継いだ4.2L直4 OHVガソリン(140ps)に、新たに3.4L直4 OHVディーゼル(96ps)を追加。さらに、1982年には4.0L直6 OHVディーゼル(115ps)と、後期モデルにはディーゼルターボ(135ps)やEFI(電子制御噴射弁)エンジン、本格オフローダーとして初のATが追加されるなどバリエーション展開を図った。
60系は、従来のベンチシートからファブリックのセパレートシートに変更し、その他にもエアコン、パワーステアリング、電動シートやサンルーフといった豪華かつ快適装備を一部モデルに採用し、幅広いユーザーの獲得に成功した。
車両価格は、215.5万~367.5万円。当時の大卒初任給は11.5万円程度(現在は約23万円)なので、単純計算では現在の価値で約431万~735万円に相当する。
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最新のランクル300系は相変わらずの人気だが、需要が供給を大きく上回り、2024年8月現在は注文停止状態、いつ入手できるか全く不透明だ。この現行300系の流れを作ったのは、40系から分岐した55系、そしてその後継で高級化を進めたワゴン系の60系なのだ。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。