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真面目な作りが肌に伝わってくる硬派なバンコン|TACOS ハイエース2B
キャンピングカーというのは、ベース車両は工業製品だが、中の装備は多くがマニファクチャーだ。だから作り手のセンスやスキルが、モロに表に出る。「いいな」と思えるキャンピングカーは、ビルダーの感性を購入するようなものだと個人的には思っている。
仕事柄、年間に何台ものキャンピングカーに触れて、何社もののビルダーの仕事を見る機会が多いのだが、東京にあるTACOS(タコス)のキャンパーは、どれを見ても真面目だなと思える。誤解を恐れずに言うが、これだけ多くのビルダーがいると、中には“笑いを取りに行ってる?”と思える製品も存在するのだ。
今回紹介する「ハイエース2B」は、同社の真面目な仕事を象徴するようなバンコンだと思う。ちなみに、2Bはハイエースのナローボディ、4Bはワイドボディをベースにしている。2B、4Bってどんな意味なんだろうと思いきや、鉛筆の濃さから取っているのだという。濃い鉛筆のように男らしく濃密なキャンパー、ということらしい。
トリビアはそこそこにして、中を見てみよう。サイドドアを開けると、目に飛び込んでくるのは、しっかりとしたウッド材で作られた家具。まず入ってすぐの所に、「The家具」と言わんばかりのギャレーが鎮座する。
この家具だけで真面目さを感じるのだが、なぜかというとまず塗装。ギラギラしたニスの質感ではなくて、ブラウンなのにきちんとつや消しになっている。さらにエッジはきちんと面取りされているため、色合いと併せて、とても柔らかな印象を与えているのである。少々古いが、“う〜ん、触ってみたい“というCMの台詞を思い出す。
シンクの上の収納は、ボックスとラックに分けてあり、こういう所も使い手の姿をよく考えていることがわかる。収納の一部には車名がエッチングされており、オーナーの所有欲を満たしている。
ギャレーの横にはすぐにセカンドシートがあるのだが、スライドできるので、調理などの時に立つスペースはきちんと確保できる。その分、セカンドシートはきっちり2名分の幅しかないが、そこは標準シート幅と同じだと思えば、それほど気にならないだろう。
後部シートは横座りタイプの対面式。乗車定員は最大7名で、まずフロントシートに3名、セカンドシートに2名、そして後部シート左側に2名分のシートベルトが付いている。ただし、あくまでも7名は最大乗車なので、頻度的にはセカンドシートまでしか使わないのではないだろうか。
車両後部はゴロンと寝転がれるダイネットになっており、中央のテーブルは脚から脱着が可能だ。ベッドにする時は外して、さらに天板と脚を分離させて、ベッド下に収納しておく。後部にシートバックになっているマットを並べて、同時にセカンドシートを展開すれば、最大値で2720×1520mmの就寝スペースに。ただし、一部は家具があるために1820mmの長さとなる。
さらに車両の右側上には、上段ベッドが収納されている。ロックを外してマットを下ろすだけの手順だが、この構造は近々見直す予定だという。使い勝手が中途半端だという理由らしいが、こうした仕様の見直しを行うのもTACOSらしい真面目さの表れと言えよう。
この2段ベッドがあることで、大人3名+子供2名の就寝が可能になる。ファミリーにはうってつけだ。それに加えて、2段ベッドがあると子供やペットには嬉しいはず。ダイネットにしていても、ちょっとした昼寝スペースになるからだ。
頭上やシート下など、ちょっとしたスペースに収納を確保しつつ、できるだけ圧迫感のない空間作りを心がけていることが理解できる。またマットの固定位置を確保して、トランスポーターとしての活用もしっかりと考えているところが、男心を分かってらっしゃると言いたくなる。
電気系統はディープサイクルのサブバッテリー、走行充電、100V電源×2口、12V×2口としっかり確保。駐車時使用のエアコンやFFヒーターはオプションだが、435万6000円〜というプライスならかなりリーズナブルなモデルと言えるだろう。
昨今はシンプルモダンなインテリアなど様々なバンコンが存在するが、そんな中では2Bはいかにもキャンピングカーらしい雰囲気と、作りに真面目さが出ている優等生的なモデルと言えるのではないだろうか。
TACOS ハイエース2B
■車両本体価格:446万1600円/展示車価格:447万9200円
■ベース車両:トヨタ・ハイエース バン
■乗車定員/就寝定員:7(5)人/大人3人+子供2人
■展示車のオプション装備:ステップカバー 1万7600円