クルマが賢くなると運転のストレスは最小限に?「ホンダ ゼロ シリーズ」が目指す自動化の未来

ホンダは、2026年からグローバル市場への投入を予定している新たなEV 「Honda 0 (ゼロ) シリーズ」について、メディア向けの技術説明会「Honda 0 Tech Meeting 2024」を開催し、Honda 0シリーズへの搭載を予定している次世代技術を公開した。

ホンダの目指す”Wise” (賢く)なクルマとは?

Honda 0 シリーズは、“Thin, Light, and Wise.(薄く、軽く、賢く) “という新たな EV開発アプローチにより、ゼロからの発想で創り出す、全く新しいEVシリーズだ。

今年1月に米国ネバダ州ラスベガス市で開催されたCES 2024にてコンセプトモデルが初お披露目され、2025年1月に開催予定のCES 2025では、今回紹介する技術を搭載したHonda 0シリーズの新たなモデル公開予定だという。フラッグシップモデルのサルーンを2026年にアメリカで発売予定している。

また、2030年までにはHonda 0シリーズとして、小型から中大型モデルまで、グローバルで7モデルを投入する計画を発表している。

Honda 0シリーズの最大の魅力は、知能化技術によりクルマそのものが賢くなる、ホンダ独自のソフトウェアデファインドビークル (SDV)の実現だろう。具体的には、独自のビークルOSを搭載し、進化したコネクテッド技術と知能化技術により、各ユーザーに最適化された新しい移動体験を提供するということだ。 車両の購入後も、クルマの機能は OTA (Over The Air) により、インターネット経由でソフトウエアを更新し継続的にアップデートが行われる。

“Wise”で目指す重点4項目

Honda 0 シリーズが、”Wise”で目指す4つの重要項目「安全・安心のAD/ADAS」「人車一体の操る喜び」「高い電費性能」「共鳴を呼ぶUXデザイン」とはどのようなものなのだろうか?

安全・安心のAD(自動運転)/ ADAS (先進運転支援システム)

ホンダのAD/ADASは、運転中だけでなく、自宅から目的地までシームレスな人の移動を支援し、思わず出かけたくなるような体験を提供することを目指している。 2021年には、自動運転レベル3「Honda SENSING Elite (ホンダ センシング エリート)」を搭載した「レジェンド」を発売し、自動運転レベル3を実用化している。

Honda 0 シリーズでは、この技術を活用したAD/ADAS技術を採用し、より多くのユーザーに自動運転車を提供するほか、高速道路での渋滞時アイズオフ技術を皮切りに、OTAによる機能アップデートを通じて、さらに自動運転レベル3適用 (アイズオフ) 範囲の拡大を可能とするシステムを搭載する予定だ。LiDARによる高精度で信頼性の高いセンシングや、全周囲の高精細カメラセンシング、独自のAIやセンサーフュージョンに対応可能なハイパフォーマンスECUの装備など、さらなる進化が期待される。

また、米国 Helm.ai社の「教師なし学習」と、熟練ドライバーの行動モデルを組み合わせた独自のAI技術により、少ないデータ量でAIが学習し、精度の高い運転支援を実現。初めて走る道においても、的確なリスク予測とスムーズな回避が可能となり、より早く自動運転・ 運転支援範囲の拡大を実現することができる。 この技術を進化させることで、世界に先駆けて全域アイズオフを実現するAD/ADASの提供を目指している。

AD/ADASは専用のECUで情報を処理する。下がADAS用ECUで、右がAD用ECU、中央がセントラルECU。
クルマの各所に配置されたセンサーやカメラからの情報の流れをイメージしやすく可視化した模型。

クルマとの一体感、操る喜び

自動運転技術を進化させる一方で、さまざまな制御をシームレスに連動させるホンダ独自のダイナミクス統合制御により、クルマと一体になる高揚感を得られる次世代の操る喜びの提供を目指している。

ステア・バイ・ワイヤを採用し、ステアリング、サスペンション、ブレーキなどのバイワイヤデバイスを統合制御することで、意のままのハンドリングを実現する。また、ホンダ独自のロボティクス技術で培った、3次元ジャイロセンサーを用いた高精度の3次元ジャイロ姿勢推定と安定化制御により、挙動が乱れる前に車体を安定化し旋回を滑らかにするという。 加速時には、電動モーターとブレーキが連動し、高速・高精度にタイヤのグリップを制御。 さまざまな路面環境において安定した気持ちの良い加速を実現する。

3次元ジャイロ姿勢推定と安定化制御が実装された試験車両。これみよがしに派手な制御ではなく、何だか気持ちよく走れる。運転がしやすかも? と感じる程度の自然な制御だった。
ASIMOで培った技術が3次元ジャイロ姿勢推定と安定化制御に活かされている。

高い電費性能のエネルギーマネジメント

ハイブリッド車(HEV) で培ったバッテリーマネジメント技術と、熱を制御するサーマルマネジメント技術を組み合わせ、実用性の高い航続距離を実現する。具体的には、パワーユニットの高効率化により、EPAモードで300マイルクラスの航続距離を実現するほか、特に、暖房などの使用により航続距離の低下が懸念される冬季への対応として、人中心の「温感」を指標とする、快適性と省電力の両立を追求。輻射熱により車内を温める輻射ヒーターとヒートポンプの高効率運転により、 暖房消費電力を約13%削減し、エネルギー消費を最小化する。

広い室内空間を全体的に温めると電力量が増えるため、人中心の「温感」に効果的な暖房方式を採用。

共鳴を呼ぶUXデザイン

知能化とデジタル技術の活用により、ユーザーのストレスを最小限に抑え、楽しさを最大限に引き出すためのデジタル技術を活用。クルマでの移動中に新たな感動体験の提供を目指している。

ストレスのない車内体験の提供に向けては、IVI (In-Vehicle Infotainment: 車載インフォ テイメント)における操作のシンプル化を徹底し、パーソナライズや音声アシスタントによるサポートを進化させていいくという。加えて、画像認識による状況理解や、行動予測アルゴリズムの活用により、クルマがユーザーの状況や意図を理解し、先回りした提案やサポートを行う。

また、運転や車内空間での楽しさ向上に向けては、エンタメサービスの充実はもちろん、XR(拡張現実)技術でクルマに乗っていない人ともつながる仮想同乗体験、運転好きのユーザーも楽しめる仕掛けなど、「運転して・使って・繋がって楽しい」を実現していくといいう。

ユーザーがクルマに近づくと、顔認証や姿勢の判断により、乗車しようとしているのかを予測判断してドアを自動で開ける。ただ素通りするだけだと、乗車の意思がないと判断されてドアは開かない。
EVのアクセル開度に連動して、歴代のホンダ車のエンジン音を鳴らすエフェクトも開発している。写真では初代NSXを選択しているため、メーターもレトロなデザインになっている。このような遊び心もホンダらしい。(Honda eの実感車両のメーターパネル)

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