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■三菱が本格的に開発を始めたコルトシリーズ第3弾
1965（昭和40）年10月18日、三菱自動車の前身である新三菱重工から小型車「コルト800」が発表（発売は11月）された。1960年にデビューした「三菱500」で本格的な乗用車市場に参入した三菱重工は、1962年に「コルト600」と「コルト1000」を発売、その中間を狙ったのがコルト800だ。
三菱初となる小型乗用車「三菱500」
三菱自動車の前身である新三菱重工（三菱重工の前身のひとつ）が、乗用車市場に参入するために初めて1960年に投入したのが、小型乗用車の三菱500である。三菱500は、1955年に政府が国産乗用車の開発を促進するために提唱した“国民車構想”に呼応して開発されたモデルだ。
国民車構想とは、“定員4人、排気量350～500ccで最高時速100km/h以上、車速60km/hの燃費30km/Lを達成した上で、販売価格25万円以下”という条件を満たした自動車の開発に成功すれば、国がその製造と販売を支援するという内容である。
三菱500は、2ドアの先進的なモノコックボディのシンプルな3ボックススタイル。パワートレインは、500cc空冷直2 OHVエンジンと3速MTの組み合わせで、エンジンをリアに搭載したRR（リアエンジン・リア駆動）レイアウトが採用された。
開発メンバーの多くは、航空機技術者をルーツとするエンジニアであったため、技術的には優れたクルマだったが、販売は振るわなかった。多くのライバルメーカーが、税金や車検制度（軽には車検がなかった）の点で有利な軽自動車から参入したのに対して、排気量の大きい三菱500は維持費面が不利だったのだ。
ファストバックスタイルが注目されるも短命で終わったコルト800
コルト800は、1962年にデビューしたコルト600とコルト1000の間を埋めるモデルとして登場した。
注目されたのは、当時欧州で流行っていた2ドアファストバックを採用したスタイリングだった。また室内は、後部座席のサイドウインドウに曲面ガラスを採用して、大人5人でも十分なスペースが確保された。
パワートレインは、最高出力45ps/最大トルク8.3kgmを発揮するフロント縦置きの843cc 直3 OHVの2ストロークエンジンと4MTの組み合わせ、駆動方式はFRレイアウト。当時は、まだ排ガスや燃費が重視されない時代だったので、軽量コンパクトで高トルクを発揮する2ストロークエンジンは、軽自動車では一般的に使われていたのだ。
車両価格は、廉価仕様で44.8万円、スポーティ仕様で51万円、同クラスのトヨタ「パブリカ」の38.1万円よりも割高感は否めなかった。ちなみに、当時の大卒初任給は3.7万円（現在は約23万円）程度なので、単純計算では現在の価値で廉価仕様が約278万円、スポーティ仕様は約317万円に相当する。
コルト800は、スタイリングや技術面で注目されたが、価格が高めで軽自動車では一般的な2ストロークエンジンも、やや時代遅れだった。そのため、コルト800はわずか10ヶ月の短命に終わり、代わって1966年9月からは4ストロークエンジンに換装した改良型「コルト1000F」に切り替えた。
三菱のフルラインナップ攻勢と三菱自動車誕生
1960年代に三菱重工は、自動車事業に参入すると、すぐに総合自動車メーカーとしての地位を確固たるものとするため、フルラインナップ攻勢をかけた。
上記の通り1960年にデビューした「三菱500」を皮切りに、1961年軽自動車「三菱360」、1962年軽「ミニカ」と「コルト600」、1963年中型車の4ドアセダン「コルト1000」、1964年には最高級車「デボネア」、1965年に「コルト800」と「コルト1500」、1966年「コルト1100」と「コルト1000F」、1968年「ニューコルト1200/1500」、1969年にギャランを初めて冠した「コルトギャラン」と、1960年代に驚くほどの新車を販売した。
そして、1970年に三菱重工から分離独立して三菱自動車が誕生、三菱車のイメージを変えるスペシャリティカー「ギャランGTO」 がデビュー。これで本当の意味で総合自動車メーカーとなったのだ。
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三菱800は、わずか10ヶ月間の短命だったが、排気量800ccが中途半端な位置づけであることや2ストロークエンジンの限界などを明らかにするなど、その後の三菱のクルマづくりに大きな影響があったと思われる。
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